彼女は小さな冬の恋人
今年も彼女がやってきた
とても小さな可愛い恋人
彼女は喉にとり憑いて
僕の喉にとり憑いて
なけなしの言葉さえ奪っていくんだ
彼女はとても嫉妬深くて
僕の関節 打ち砕き
人気のない部屋に閉じ込める
そうして動けなくなった僕を
きつくきつく抱きしめるんだ
その熱っぽい抱擁で
僕の脳髄は茹で上がり
怖気の汗が噴き出しては
たちまち冷えて熱を奪う
指の先から食われていく
彼女の愛に蝕まれていく
麻痺した思考は
静かな夜闇に 終わりを予感するけれど
予感はいつも 予感に終わる
彼女は残念そうに微笑みながら
僕から離れてしまうんだ
「また会いましょう 愛しい貴方
次の冬には装い変えて
新たな衣で着飾って
貴方の寝屋を訪ねます
次の冬こそ私の愛で
貴方を奪ってみせますわ」
小さな恋人は囁いて
他所の寝屋へと旅立った
残されたのは僕一人
死に損ないの肉塊一つ