『三題噺』 その四
お題『ボタン/眼鏡/のど飴』
「こほこほっ」
「おや? 風邪かい?」
お婆ちゃんに心配そうに訊かれて、私は首を振った。
「ううん、少し乾燥してるだけ」
「そうかい。もう冷えるからねぇ。そろそろ学校のコートを出したらどうかね」
「そうする」
自室のクローゼットを開いて、端にビニールに包まれたコートがある。
ビニールを外してみてみると──
「あっ」
「お婆ちゃーん。コートのボタン解れてるから、付け直してくれる?」
「いいよ。貸してごらん」
コートを渡すと、お婆ちゃんは裁縫箱から糸と針を出した。
しかし、なかなか針の穴に糸が通らない。
「おやおや。悪いけど、引き出しから眼鏡を取ってきてくれるかい?」
「はーい」
引き出しから眼鏡を取ってくる。
「持ってきたよ」
「ありがとう」
お婆ちゃんが眼鏡を受け取って掛けると、糸はあっという間に通った。
「すぐに付けるからねぇ」
「うん。あ、引き出しにのど飴あった。舐めてもいい?」
「ああ、いいよ」
甘い飴を舐めながら、お婆ちゃんがボタンを繕うのを見ている。
とある冬の日。