嫉妬
わたしは彼女が羨ましくて仕方なかった。
だって彼女はなにもかも、わたしより優れているんだもの。
わたしよりずっと可愛くて、わたしよりずっと優しくて、わたしよりずっと頭がいい。勉強でも運動でも、わたし、なんにもかなわなかった。
わたしだって、なんの努力もしなかったわけじゃない。
でも頑張っても頑張っても、彼女はわたしより上にいる。わたしはいつも彼女のことを見上げていた。見上げるのが辛いから、いっそ無視してしまおうと思ったけど、できなかった。気がつくと彼女の姿を見つめている。
つらい、つらい、つらい。
一緒に生まれたっていうのに、どうしてこんなに差がつくのだろう。こんな気持ちで一生を過ごしていくのだろうか。そう考えると心が張り裂けそうになった。
――勝たなきゃ。
なんでもいい。なにか一つで。どんなくだらないことでもいいから、わたしは彼女に勝ちたかった。彼女よりも優れていたい。一つでいい。なんだって。なにか一つ、一つだけ。どんなことでも。どんな手段でも。
私は彼女が羨ましくて仕方がない。
今さら取り繕っても意味がないし、もう本当のことを言ってしまおう。
私は彼女を見下していた。表には決して出さなかったけれど、心の中では馬鹿にしていた。それもしょうがないことだと思う。実際、彼女よりも私のほうが優れていたのは間違いがない。
ああ、こうなってから、ずいぶん素直になった気がする。
私のほうが容姿がいい。
私のほうが性格がいい。
私のほうが頭がいい。
私のほうが運動神経がいい。
料理も手芸も絵も文章も手先の器用さも服のセンスも声も歌も将来性も計画性も努力の量も私は彼女に劣った点など一つもない。
彼女のことをうらやましいと思ったことなど一度もなかった。
なのに今、彼女のことがうらやましくて仕方がない。
彼女はまだ、生きている。
ただその一点だけで、私は彼女がうらやましくて仕方がないのだ。