嘘つき天使の書いた本
「嘘つき」と君が僕に言った
その時 僕は魔法が解けた気がして
閉ざされた部屋は 恋人というルールで
二人をしばりつけた 一つの牢屋だった
涼しい風が吹き込む その場所は
二人の傷と嘘を暴く 教会でもあった
神様はきっと裁かない 虚ろな瞳で見守るだけ
僕らの偽る声は 世界中に響き渡っていく
巡り会うべき人が もし一人だけなのならば
僕らは少しずつ嘘をついて 距離を保っていた
上手く行かない この二人の恋物語で
ほつれた糸は もう決して戻らない
だから僕らは 部屋をあとにした
名残惜しさでさえも疑って
もう自由さ 少しばかりの涙を拭って
乾いた砂漠にも似た アパートの一室で
繰り返される間違い
違う気持ちを抱いてた その窓際にある
花瓶を眺めて ふっと二人はため息をついた
「愛してる」なんて か細い言葉に乗せた
少しばかりの真実は 今は風に乗り
誰も知らない 知ることも出来ない
そんな場所へ運ばれていったのだろう
出逢うべき人が もし一人だけなのならば
僕らは辻褄を合わせた 一種のペテン師でもあったね
出口の見えない この二人の恋物語
抜け出すには やめることさ キリのいい幕引きを
だから僕らは 合鍵を捨てたのさ
言葉も通じない 異国の人となるように
もう 自由さ 少しばかりの本当を握りしめ
眩い風に吹かれて 好きなように息をして
生きているって実感を得る だけど
舌を出した君が 少し懐かしくもあるんだ
「嘘つき」 まだ君は眉をしかめて そう言っている
巡り会うべき人が もし一人だけなのならば
悲しいかな 僕らは結ばれない決まりだったんだよ
強い光が瞬いて 終わりのない恋物語
そのページの一枚一枚に 読了をつけていく
笑った天使が筆を置いた その時に
僕も君も それで良かったと 頷いた
本当の恋を見つける 光の場所へ
嘘つき天使が 書いた その本を閉じて