失恋の涙 3
今回は前回予告した通りリア目線です。
「私には好きな人がいたんです」
風莉さんは話し始めた。
「でも、噂でしたけど、その人には彼女がいたんです。私の友達でした。私はサッカー部にマネージャーとして入っていたんですけど、私の好きな人はサッカー部のエースで、私の友達は一緒にマネージャーをしています。友達と言っても高校からですけど。でも、すごく仲が良かったんです。だからこそショックだったんです」
今のを聞いた限り、仮に風莉さんの好きな人をA君として、風莉さんの友達をBちゃんとするなら、風莉さんはA君のことが好きだけど、A君とBちゃんは付き合っていると言う噂が流れていて、ショックを受けたと言うことだろう。でも、A君とBちゃんが付き合っているのは噂で、真実かどうかはわからない。
「これは1年前の出来事です。なので、私は失恋の涙と共に吹っ切ったんです。でも、今日、その友達に言われたんです。『私は付き合ってない!』って。『私の好きな人は私のことが好きで、恋愛相談をされてただけだ』って。私は別になんも言ってないのに急にそんなこと言いだしたんです。でも、私1年前にサッカー部でカラオケに行ったんです。その友達は用があって来なかったんですけど、部長が私の好きな人に私の友達と付き合ってるのかって聞いたんです。そうしたら私の好きな人は『付き合ってない』って断言したんです。でも、すごくにやけてたんです。リア充みたいに」
Bちゃんはなぜ急にそんなことを言ったのか。噂を知るにしても1年も経っているのだから、いくらなんでもおかしい。それに、A君の行動も気になる。本当はBちゃんのことが好きだけど、風莉さんのことを好きと言って恋愛相談に乗ってもらう振りをしてBちゃんに近づいて、Bちゃんと付き合っていると言う噂が流れていたから、嬉しくってついにやけたのだろうか。
それにしても、リア充って何?
「あの…。リア充ってなんですか?」
「あぁ、リアル充実の略です。主には恋人がいる人のことを指すんです」
「そうなんですか。初めて知りました。…では、率直に申し上げます。これは風莉さんもわかっているとは思うのですが、風莉さんの好きな人と風莉さんの友達が付き合っているのはあくまでも噂です。私がずっと前に接待したお客様の中には噂に左右されて結局自滅してしまった人もいます。噂と言うのは誰が流したかも、真実かもわからないのにどんどんと広まって行ってしまうものです。なので噂なんかを信じず、本人に確かめた方がいいと思います」
「でも、私の好きな人はきっと私の友達が好きなんです。だから私が好きと嘘をついて私の友達に近づいたんです」
風莉さんも私と同じことを考えていたんだ。
「だから、自分と付き合ってると言う噂が流れて嬉しいから顔がにやけたと?」
「私はそう思います。だからずっと悩んでたんです」
「そうですよね。私もこれで悩みを解決しようなんて思ってません。…少し待っていて下さい」
私はそう言って席を立った。
本棚の方に行き、ある本を取り出した。そして、その本を持って席に戻った。
「これを読んでいただけませんか?時間はたくさんあります。こういう本が嫌いなら漫画などもありますけど?」
「いえ。私、いつも文庫本を読んでいるので大丈夫です」
「では、私は少し仕事に戻りますので何かあればカウンターの方に来て下さい。そうすればエルナがいるので。一応奥にはお風呂もあるので」
「ありがとうございます」
私はそう言い残すと席を立ってカウンターに戻った。
「エルナ、風莉さんのこと、見ておいてあげて」
「はい、わかりました」
あの本は『向日葵の奇跡』と言う本。
あの本が風莉さんを変えてくれると私は信じてる。
次回は風莉目線になります。
主に『向日葵の奇跡』のフィナーレの方を書かせていただきます。