失恋の涙 1
○○○○年□月△日
今日の天気は晴れ。
そして、久しぶりにお客様が来た。
そのお客様は人間界から来た女の子だった。
ちょっと心を開くまでが大変だったけど、
とってもピュアな悩みを持っている子だった。
「リアさ〜ん、これってどの棚ですかぁ?」
この異世界図書館の仕事を手伝ってくれているエルナが私にそう言った。
ここは異世界図書館。
「Ⅸの棚だよ〜」
「あぁありました!これでOK」
エルナはそう言うと本棚の間から出てきた。
カウンターでデータ入力をしている私は最近の解決数を見た。
ここ最近、お客様が少ないから解決数もすごく少ない。
『カランカラーン』
「エルナ、鐘が鳴ったわ。早く!」
この鐘はお客様がもうすぐ来ると言う知らせだ。
私とエルナは走って大きな鏡の前へ行った。
「きゃっ」
鏡の中から出て来たのは人間界の女の人だった。
「ようこそ。異世界図書館へ」
私はお決まりのセリフを言った。
「そうですよね。急に言われても困りますよね。では、最初から説明いたします。ここは異世界図書館と言ってお客様の悩みを解決する所です。そして、私は案内人のラリアットと言います。リアと呼んでください」
「はじめまして。私は仲里風莉、16歳です…」
この子の第一印象はやけに冷静だなぁだった。
普通異世界図書館に来た人は何が何だか分からなくっておどおどする人が多い。まぁそりゃあ、どこかも訳が分からないところに来たんだから当たり前だろうけど。
「ここに来たってことは風莉さんになにか1人では解決できない悩みがあるってことなんですが、何か心当たりはありますか?」
「えぇ」
心当たりあるってことは進みやすい。たまに本当に何が悩みかわからない人もいるし。
「でも、言いたくないです…」
「え?」
「ちょっと言いずらくって…」
恥ずかしがり屋なのかな?てかそうじゃなきゃ一生聞き出せない!
「わかりました。言えるようになったら言ってくれればいいですし、ここにいる間は時間は進みませんから」
「え?」
「あぁ、言ってませんでしたね。すみません。ここで何日時間が進んでも人間界では1秒たりとも進まないんです」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いえいえ。それが私の仕事ですから」
「エルナ、紅茶を入れてきて」
「は~い」
私はエルナに紅茶をお願いした。
風莉さんが話すまで私はちょっとしたどうでもいい話をすることにした。
「リアさん、風莉さん、どうぞ」
ちょっとするとエルナが紅茶を持ってきてくれた。
「こっちにも紅茶ってあるんですね」
「いえ。こっちには紅茶はないんです。この紅茶は前に来たお客様が丁度紅茶を持っていてお礼にと貰ったんです。私も紅茶を飲んだのはこれが初めてです」
「そうなんですか。私はよく飲みますよ。大好きなんです」
「それはよかったです!」
「そろそろリアさんの話、聞かせてもらってもいいですか?」
「あぁそうでした。私が一番心に残っているのは風莉さんと同い年の男の子のことです。その男の子は部活の後輩のマネージャーに恋してたんです。その子は大人しくて清楚な子で、よくモテたそうなんです。それでその男の子は勇気が出せず告白が出来ずにいたんです。それでここに来たんですけど、その男の子、すごい悩んでたんです。『俺は先輩なのに振られたら辛いから告白すら出来ない』って。それで私は1冊の本を貸しました。それを読んだ男の子は目に涙を溜めながら言ったんです。『俺は告白できるのにしないなんてバカだよな』って。私が貸した本は隣の国のお姫様に恋をした王子様のお話でした。王子様の国とお姫様の国は敵同士だったんです。だから王子様はお姫様に告白することができなかったんです。ラストは王子様がこの国にいるくらいなら死ぬと言って死んでしまう、そんな悲しい結末でした。男の子は後輩のマネージャーに告白することを決めて人間界に帰りました。あの後どうなったかは知りませんが、私は幸せになっていることを願うばかりです」
私は気づいたら長話をしてしまっていた。
「その男の子はきっと幸せになってますよ。だって、リアさんといういい人と出会えたんですもん」
ちょっとビックリした。風莉さんがこんなことを言うなんて。
「そうだといいんですけどね」
「…私、リアさんに話して見ます。それで何が変わるかはわからないけど、リアさんになら話してもいいかもしれません」
「話してみれば心が軽くなるかもしれませんしね」
「えぇ。…始まりは1年前です」
次回は風莉目線になります!