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彼への復讐。

それは球技大会であった。


年に2度ほど、開催される学校内の行事であり、その時に僕は復讐しようと思った。

彼が得意とする野球でギャフンと言わせてやれば、なかなかに効果があると考えた。

いつもピッチャーをしているので、僕はホームランを打ってやろう、そう考えた。


僕はスポーツは得意ではないが、そういういざという時はだいたい力を発揮出来る。

なので、謎の自信は持っていた。

きっと、彼女は彼が球を投げる姿を見に来るであろう。その時に僕がホームランを放ってやれば、いいダメージとなる。これは又と無いいい機会だ。

別にそんなことをしたって彼女と付き合えるわけでもなく、たいした復讐でもないのだが、それで満足であった。


そして球技大会の日は訪れた。

予想通り、彼はピッチャーマウンドに立っている。

よし、いいぞ、打ってやる。


僕の心境を知っている、仲間たちは頑張れよとエールを送ってくれている。

普段僕なんかにそんなエールが送られている姿を目にすることがないため、ピッチャーマウンドの彼は不思議そうな顔をしていた。


ふん、君はいつも通り、ただ球を投げるだけだろうが。こっちは違う。いつもと違うのだ。これほど大切な瞬間は、またとないのだ


そして、予想通り、彼女は来ていた。日差しが強いため、木陰で彼女は友達と二人、少し離れたところから見ていた。

いつも通りの彼女。笑顔で今日も可愛い。


ようし、打ってやろう。覚悟しろ。僕は彼を睨んだ。


彼が球を真っ直ぐ放り投げてきた。スピードは乗っている。

ゆっくりに見える。よく球が見えた。これは打てる。僕はそう直感した。


その通りとなった。僕は大きく球をはじき返した。

残念ながらホームランとまではいかなかったが、遠くまで放った為に、3塁までは進めた。そして、既に出塁していたものが2名いたため、2点入った。

彼は、僕がまさかそんなヒットを打てようとは思っていなかった為、大口を開け、ポカンとしていた。

ああ、やってやったぞ。僕は叫んだ。うおおおと叫んだ。

見ていた奴らが褒めてくれた。よくやった、よくやったと叫んでいるのが聞こえる。最高に気持ちが良かった。

走りながら、僕は彼女を見た。彼女の表情を見たかった。

彼女は僕をしっかり見つめてくれていた。

優しい笑みを浮かべ、僕をしっかり捉えてくれていた。


こうして僕の夏は終わった。

もちろん彼女とは何も無かった。

だけど、それでいいと思った。


僕の中で彼女の笑みが少しでも残っているだけで満足だ。

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