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名無し君の不始末番外編【きみがいとしいよ】瑠璃&クロム★出演希望1:1(最大4:6可能)

作者: 七菜 かずは

~掛け持ちたくさんであそぼうプロジェクト~

瑠璃&クロム

名無し君の不始末番外編

【きみがいとしいよ】

出演希望1:1(最大4:6可能)






■キャスト


黒凪くろなぎ ゆめ

・女。ヒロイン。黒髪長髪。黒目。心優しいお姉さん。二十~二十五歳。素直で真面目。優等生。

瑠璃のことが好き?

地球の地底メイド喫茶で働いている。着やせするタイプ。特技は着付けと歌。

色白で胸がでかいのがコンプレックス。


★カズマ・瑠璃るり

・男。関西弁。二十~二十五歳。茶色の短髪。面倒臭がりだが、基本的には真面目。

ぼーっとしていることが多いが、考え事をしているだけ。

夢のことが凄く好き。夢には素が出る。家族になりたいと思っている。

ほとんど笑わない。素っ気ない。ぶっきらぼう。愛想が無い。ポーカーフェイス。

細身。目鼻立ちは整っている。

地球の海底都市、日本国東京都市にて、飲食業を経営する店長の手伝いをしている。


★店長 ♂

・オカマ。

メイド服や、可愛い衣装をいつも着ている。色白。三十代後半~四十代後半。

本名、頼存らいぞん 裕翔ゆうと。顔面は濃い。

地球の海底都市、日本国東京都市にて、飲食業を経営している。

コスプレが趣味。テンションがいつも高い。ぶりっこ。


★猫さんたち ♀ ♂ :全員

・瑠璃の家の中や外をうろついているぶさいくな猫たち。


★客 ♂ :

・来店二回目の、お客さん。夢のことが気に入っている。おじさん。


★常連さん ♀ :

・常連のおねえちゃん。メイドさんが好き。


★常連さんB ♂ :


★常連さんC ♀ :


★常連さんD ♂ :


★居酒屋のママさん ♂ or ♀ :






■役表

夢 ♀ :

瑠璃 ♂ :


店長 ♂ :

猫さんたち ♀ ♂ :全員

客 ♂ :

常連さん ♀ :

常連さんB ♂ or ♀:

常連さんC ♀ :

常連さんD ♂ :

居酒屋のママさん♀ or ♀ :


※1:1でやる場合、♂マークがついているキャラを瑠璃役が。♀マークがついているキャラを夢役がやって下さい。






 未来の地球の地下世界。


猫さんたち ♂♀ 「にゃあ~にゃあ~」


夢「瑠璃。瑠璃? 起きて下さい」


 ベッドですやすやと眠っている瑠璃の身体を揺らし、起こそうとする夢。


瑠璃「ん……?」


夢「朝ですよ」


瑠璃「ん……」


夢「遅れちゃいますよ」


 部屋の中にあるちゃぶ台の上に転がっている幾つものビールの缶を、ゴミ袋の中に入れていく夢。


瑠璃「ゆめ……?」


夢「はい?」


 瑠璃、布団から顔を出して。自分の顔の横をぽふぽふ叩く。


瑠璃「隣座り」


夢「? はい」


瑠璃「ん……ぎゅ」


 夢のお腹に抱きつく。


夢「あっ」


瑠璃「もうあと三十分だけ……」


夢「出勤時間過ぎちゃいますよ」


瑠璃「……もう今日は休みや」


夢「えーっ」


瑠璃「店長に頑張ってもろて……」


夢「だーめ。今日はランチもディナーも、瑠璃と店長しか居ないシフトになってるんですよ?」


 メイドカフェの営業時間はランチ11~15時と、ランチ17~21時。


瑠璃「……夢」


夢「うん?」


瑠璃「……ペンギン、見たない?」


夢「ペンギン、ですか?」


瑠璃「うん」


夢「うーん」


瑠璃「や?」


夢「ペンギンよりは……ウミズキチョウチョウオが見たいかな」


瑠璃「うみずき……なんそれ?」


夢「蝶々です」


瑠璃「虫か」


夢「蝶々ですっ!」


瑠璃「ふ。はいはい。(起き上がる)……着替えるわ」


夢「食事、出来てますよ」


瑠璃「え、うそ」


夢「え。いりませんでした?」


瑠璃「なんで先に言わんのや!」

夢「えっ」

瑠璃「ちょ、顔洗って着替えるわっ!」


夢「?」


瑠璃「だらだらしとったら折角の飯食う時間無くなるやろ!」


夢「いいですよ別に……残ってもお昼に私が食べますから」


瑠璃「あー今日非番やったっけ」


夢「はい」


店長♂役『ツーツーツー』(通信音)


瑠璃「んっ。なんや、店長? はい、もしもし」


店長♂『あっ。瑠璃ちゃ~ん……?』(声がらがら)


瑠璃「どうしたん?」

夢(凄い声……)


店長♂『ちょっとアタシ風邪ひいちゃったみたいでえ……。ゴホごほっ! さっき夢ちゃんに通信かけたら、電源切れてるみたいで繋がらなかったのよお……』(風邪をひいたふりをしているので、かなり大袈裟に)


瑠璃「あっ。今居ますけど……」


店長♂『はあ? 何よ、夢ちゃん、もしかしてお泊まり? やあだあ! うっごほごほっ!』


夢「えっ!」


瑠璃「せやな」


夢「ちょっと。瑠璃っ!」


瑠璃「ええやろ」


夢「駄目ですよっそんなっ」


店長♂『あらあらあら。まあそれなら話が早いわ。夢ちゃん、今日代わってくれないかしら……』


夢「いいですよ。お大事に!」


店長♂『ありがとう。ごめんなさいね』


夢「いえ! こないだ私が風邪ひいた時、代わって下さいましたし」


店長♂『あ、そうだ……。ごほっ。更衣室の中に、今度の舞踏会フェスの衣装かけておいたから。サイズとか大丈夫か確認しておいてくれると嬉しいわ』


夢「え、あ、はい」


店長♂『白いドレスよ』


夢「わかりました」


店長♂『じゃあね、夢ちゃん、瑠璃ちゃん、お願いね』


夢「はぁい」


 通信が切れる。


猫さんたち ♂♀ 「にゃあ~お」


夢「私、お風呂入って来ますね」


瑠璃「うん。じゃ、……一緒に入ろか」


夢「はいっ。……って、えっ!?」


瑠璃「嫌なん?」


夢「い、いやじゃ……ないけど……」


瑠璃「昨日も少ししかキスしてへんし」


夢「そうですか……? そんなことないと思うけど……」


瑠璃「足りひん」(夢の耳にキスをする)


夢「ちょっ、もうっ! 仕事遅れちゃいますっ! ダメ!」


瑠璃「……はぁ……」


夢「お風呂いってきますねっ! 先にご飯食べててくださいっ!」


瑠璃「はいはい」






 30分後。瑠璃と夢が働いている、メイドカフェ。事務所。

 瑠璃はコックコートに。夢は、白いドレスに着替えている。


瑠璃「夢、それ……」


夢「どうですか?」


瑠璃「裾短過ぎるやろ」


夢「あー……」


瑠璃「もも……」


夢「目障りですか?」


瑠璃「え、いや、違」


夢「私最近太っちゃって……」


瑠璃「そか? も少し太っても別に平気やないか?」


夢「そんなことないですよ。ぎりぎり標準体重なんですよ」


瑠璃「そうなん?」


夢「はい……」


瑠璃「夢……その服」


夢「ん?」


瑠璃「胸も見え過ぎやろ。屈んだらあかんで」


夢「あー……」


瑠璃「ったく……」


夢「た、タートルネックとか……」


瑠璃「腕も肩も全開やんか」


夢「確かに……」


瑠璃「っ! 背中もがら開きやで」


夢「すうすうします……」


瑠璃「その上からレインコートとか着て前ちゃんとしめたらええんちゃう」


夢「それ、この衣装の意味なくしてません?」


瑠璃「こういう衣装は反対や、って。何度言えばわかるんかな……店長」


夢「でも、すっごい可愛いですよ」


瑠璃「これは無しやな」


夢「えっ。折角店長が作ってくれたのに」


瑠璃「……っ」


 瑠璃、夢を抱き止める。


夢「っ!? る瑠璃? なんですか? いきなり……」


瑠璃「いつも……。ここで、一緒に働いてる時が一番……」


夢「?」


瑠璃「抱き締めたくなんねん」


夢「……衣装が可愛いからですか?」


瑠璃「まあそれもやけど」


夢「?」


瑠璃(……俺以外の男に笑いかけてんのが、腹立つんやろな……)


 他にも色々と、理由はある。


夢「はいっ? 何、今……」


瑠璃「夢が働いとる姿が、一生懸命やし。なんや、ころころしとって」


夢「コロコロ?」


瑠璃「たまにあほやし」


夢「あほ!?」


瑠璃「一昨日の発注。間違っとったで」


夢「えっ!」


瑠璃「キュウリ」


夢「2パック発注しました!」


瑠璃「22パックになっとったよ」


夢「え!! つつつつまり明日キュウリが88本くるということですか!?」


瑠璃「いやちゃんと直しといたって。……でも、ちゃんと打ち込んだ後にも確認せな」


夢「す、すみません……」


瑠璃「んや。人間がやっとることやからな。まあしゃあなし」


夢「永遠に味噌キュウリと冷やし中華を売ることになるところでしたね……」


瑠璃「せやなあ。まあとりあえず漬物でもええんちゃう」


夢「和定食ですか」


瑠璃「キュウリが22パック来とったらなの話」


夢「うう……すみません……」


瑠璃「気にせんと」


夢「はい……」


瑠璃「普通のメイド服に、着替えてき」


夢「はいっ」


瑠璃「仕込みと機器関係、やっとくわ」


夢「はい! 着替えたら、表のセッティングとお掃除しますね」


瑠璃「うん」






 営業中。


客♂「ふっざけんなっ!!」


夢「っ!」


 皿が割れる音。

 夢が接客中にお客を、怒らせてしまう。客が立ち上がったと同時に、テーブルの上の皿が地面に落ち、割れてしまう。


瑠璃「?」(カウンターの裏で洗い物をしていたが、客の叫び声を聞いてすぐにホール(表)に出る)


夢「ごめんなさい、そういうお店じゃないんです……」


客♂「金は幾らでも払うっつってんじゃんか! ちょっと散歩に付き合ってくれるだけでもいいんだよ!」


 夢の腕を掴む客。


夢「っ。すみません、他のお客様が驚いてしまいますから……」


客♂「やらせろって言ってる訳じゃねんだよ! 夢ちゃんっ!! なぁっ!」


夢「っ!」 瑠璃「夢!! ――ッ!!」


 瑠璃、夢の腕を引き。手の平で客を突っ撥ねる。その客の後頭部が壁に当たり、奴は意識を失う。

 (瑠璃役、テーブルをなぐるSEを鳴らす)


瑠璃「……っ……」


夢「る、瑠璃……」


瑠璃「あほうが。暫く眠っとき……」


夢「あ、ありがとう。ごめんね……」


瑠璃「怖かったな」(夢を撫でる)


夢「っ……」


瑠璃「裏下がって片付けやってくれへんか。後は俺表見とくわ」


夢「あ、はい……」


 他のお客さんたちが、拍手と、瑠璃を激励する言葉を投げる。


瑠璃「すんません、騒がしくて。なんか皆さん新しく飲み物お持ちしますわ」


常連さん♂「えっ、いいのに~」 常連さんB♀「瑠璃くんかっこよかった! よくやったっ」 常連さんC♂「瑠璃くんも一緒にビール飲も!」 常連D♀「ナイス」


常連さん♂「今、宇宙警察クドゥルシェに通報しといたよ! すぐにそいつ回収して貰って」


瑠璃「助かります」


常連さんB♀「夢ちゃんはみんなのものなのにね」


瑠璃「あはは……。そうですよね」


夢「……」






 閉店時間。


瑠璃「ありがとうございました」


常連さん「また来ますー」


 BGMのスイッチを切る瑠璃。


瑠璃「お疲れ」


夢「お疲れ様でした……」


 二人、客席のテーブルとイスを拭きながら。


瑠璃「まだ引き摺っとる?」


夢「え?」


瑠璃「ああいうお客は、どうしたら見た目でわかるんやろなぁ」


夢「……ユキさんやミキさんには、ああいう過激な態度を取る人は居ないのに……」


瑠璃「男をそうさせるフェロモンかなんか、出とるんちゃう?」


夢「んもうっ! どうしてそういう意地悪言うんですかっ!!」


瑠璃「ははっ。じょうだん、や、って……」


夢「っ……っ、っ……、っ……」(泣き出す)


瑠璃「夢……」


夢「こわかった……」


瑠璃「っ!」


 瑠璃、夢を抱き締める。


夢「……っ」


瑠璃「……」


 黙って彼女を撫でる。


夢「……ごめんなさい。っ。片付けしなきゃ……」


瑠璃「今日は、家まで送るわ」


夢「と……っ!」


瑠璃「ん? と?」


夢「な、なんでもないです」去ろうとする。


瑠璃「なんやって」引き止める。


夢「なんでもないのっ」


瑠璃「なんか言いかけたやろ」


夢「言いかけてないっ」


瑠璃「嘘つくなや! 夢――」


 夢、背伸びをして。瑠璃の唇にキスをする。


夢「ちゅっ――……」

瑠璃「んっ……!」


夢「ちゅ……んっ……」


瑠璃「ん……っ。……ゆめ……?」


夢「きょうは……泊まって行って……」


瑠璃「えっ」


夢「聞えなかった?」


瑠璃「や、え、っと……」


夢「泊まって、行ってください」


瑠璃「……」


夢「いやなら、いいんですけど」


瑠璃「俺、同じ布団で、寝てもええ?」


夢「う、うんっ……」(目をそらす)


瑠璃「ほんま?」


夢「うん……。いいよ……?」


瑠璃「んなら、はよ帰ろ」


夢「うんっ……」






 帰り道。二人、手を繋ぎながら。


瑠璃「飯なんにしよか」


夢「お好み焼き!」


瑠璃「ははっ。おっけ」


夢「瑠璃は他に食べたいものありませんか?」(両手で瑠璃の右手をぎゅっと包む)


瑠璃「今日は夢が食べたいもんでええよ」


夢「あ。じゃあー。三番地にある居酒屋さん行きません? 店長に教えて貰ったんですけど。なんでも美味しいんですよ」


瑠璃「ええよ」


夢「♪」


瑠璃「あっ。テレポーター乗らな」


夢「お腹空いたっ」


瑠璃「ふ。……うん」


夢「いや、でも、ダイエットしなきゃ……!」


瑠璃「明日からでええやんか」


夢「もーっ」


瑠璃「……夢の手、いつもぬくい」


夢「瑠璃の手が冷え過ぎなんですよ」


瑠璃「そかな」


夢「二人で繋げば丁度良くなりますねっ」


瑠璃「っ……せやな」


夢「?」


瑠璃「……ずっと、こうやって。二人で居られるんやろか……」


夢「どうですかね」


瑠璃(……籍入れたいな)


 呟く。


夢「咳?」


瑠璃「……なんもない」


 二人。転移装置に乗り。三番地へ。






 居酒屋『きゅうべえ』前。

 瑠璃と夢、暖簾を潜る。入り口の呼び鈴の音。カランカランカラン……。


瑠璃&夢「!!!!」


 何故かそこに店長が居た。


店長♂「ッ!!?」


夢「ててててっ店長っ!!」


店長♂「やだもお二人ともっ! 何してるのよう!」


夢「それはこっちの台詞です!」


店長♂「瑠璃ちゃんまでえ……! もおーっ」


夢「店長、風邪は大丈夫なんですか!?」


店長♂「ああ、あれ嘘よ」


夢&瑠璃「うそ!?!?」


店長♂「ごめんなさいね。まあでも、あたしなりに気を遣ったつもりなのよ?」


夢「どういうことです?」


店長♂「だって今日は、夢ちゃんがうちで働き始めて、一周年記念日なのよ!」


夢「えっ」


瑠璃「っ!」


店長♂「そして……。瑠璃ちゃんが夢ちゃんに一目惚れした日でもあるじゃない」


夢「え!」


店長♂「二人にとっては、特別な記念日でしょお? ふふん♪ だからね。今日は、二人で過ごして欲しかったの♪」


夢「そうだったんですか……」


瑠璃「んなら、元からそういうシフトにしとけば良かったんに……」


店長♂「ばかっ。それじゃあサプライズにならないじゃないのよお!」


夢「サプライズ……?」


店長♂「そうよお~」


夢「店長、お酒飲み過ぎじゃないですか?」


店長♂「きょうは~二人の~特別な日い~なのよお~!!」


夢「て、てんちょうっ……! テーブルの上に乗っちゃだめですっ」


居酒屋のママさん♀「ふふふ。ごめんなさいね。らいちゃん、実は昨日派手にフラれちゃって。少し荒れてるのよ」


夢「えっ!」


瑠璃「店長、恋人居たんか」


店長♂「居るわよお! 居たわよお! スマップの、キムタク似のお! ダーリンがあ!」


夢「す、すまっぷ?」

瑠璃「きむたく??」


店長♂「むうう……」


居酒屋のママさん♀「ごめんなさいね。このまま絡み酒になっちゃうから。今夜はお二人とも、お家に帰って宅飲みしたらどう? ほら。これ、あげるわ」


瑠璃&夢「!!?」


 超高級ワインを手渡される。


夢「こっこれっ! 究極のDRCワイン……!?」わーっ!

瑠璃「百万ぐらいするんとちゃうか……!?」わーっ!


居酒屋のママさん♀「ふふふっ。らいちゃんのボトルキープよ」


夢「な、なんと……」


瑠璃「ええんですか?」


居酒屋のママさん♀「いいのいいの。何十個も色々キープしてるんだから」


夢「瑠璃……っ! 私これ……っ!」(目が輝く)

瑠璃「飲みたいんやな。わかったわかった」


居酒屋のママさん♀「また来てね。夢ちゃん、瑠璃ちゃん。おやすみなさい」


 夢と瑠璃、居酒屋さんを出る。

 入り口の呼び鈴の音。カランカランカラン……。

 少しの間、黙って歩く二人。

 海面を見上げて……。


夢「……失恋かぁ……」


瑠璃「男同士でも、あんなんなるんやな」


夢「ふふ。ちっとも理解出来ませんか?」


瑠璃「出来へんよ」


夢「瑠璃は完全にノーマルですもんね」


瑠璃「そりゃそうやろ。普通やろ」


夢「んー、でも、私は……店長の気持ち。少しだけわかるんだよなぁ」


瑠璃「は?」


夢「だって。……もし瑠璃が女性だったら……。いい友達や同僚になれるか、少し不安ですもん」


瑠璃「なんでや」


夢「……ふふっ」


瑠璃「?」


夢「……瑠璃にはわからなくって、いいんですよっ」


瑠璃「はぁ?」


夢「ふふ……」


瑠璃「……さて。んじゃ、なんかつまみとか買って帰ろか」


夢「はい! 私がお好み焼き作ります!」


瑠璃「どうしても食べたいんやな……」


夢「たこ酢も作ろうかな……」


瑠璃「お」


夢「……瑠璃のエビパが食べたい……」


瑠璃「ええええ……?」


夢「瑠璃のエビパが食べたーいっ」


瑠璃「明日の賄い、エビパにしよか?」


夢「今食べたいのっ」


瑠璃「今はお好み焼き食べるんやろ?」


夢「食べますけど?」


瑠璃「どっちかのほうがええんやないかな……」


夢「じゃあエビパ」


瑠璃「サラダとかは?」


夢「たこ酢とほうれん草あえ作ります」


瑠璃「おっけ」


夢「はー……。今日も、空からの光が綺麗ですね……」


瑠璃「あー……。せやな」


夢「……今度また、展望台行きません?」


瑠璃「ええよ」


夢「……瑠璃は、優しいですよね」


瑠璃「そか?」


夢「私……。あの……」


瑠璃「うん?」


夢「やっぱり。ちゃんと。お付き合いしましょうって、言ったほうがいいですか?」


瑠璃「え……」


夢「瑠璃が職場恋愛反対派なのはわかってるんですけど……」


瑠璃「……」


夢「でも、私たち……周りは付き合ってるって思ってますよね」


瑠璃「……うん」


夢「好き合っていると思っているのは、私だけですか?」


瑠璃「っ……」


夢「私……」


瑠璃「……付き合えへんのは……」


夢「っ?」


瑠璃「もう一つ、理由があるんや」


夢「りゆう……?」


瑠璃「……最近、サイバーニュース、観た?」


夢「え……。あ……。いえ。最近は、地球の記事ばかり見てるかな……」


瑠璃「君の偽物が、ケテラスで暴れとる」


夢「っ――……」


瑠璃「名無しの姫が生きとるっていう噂が、広まっとるんや」


 瑠璃、自分の手首のブレスレットから、モニターを出し。名無し姫を名乗る者たちの映像を映し出す。そこには、夢とは全くの別人が、インドランスや人間を楽しそうに嬲り殺していく姿が映っていた。


夢「ッ……!」


瑠璃「俺は……君と同じ星で産まれて。でも、俺の国と君の国の戦争は……。長く続いたあの戦は……君が死んだから、……終わったんや」


夢「……そんなこと、ありません……。平和を願う人たちが勝ち得た、和解は……。全て戦士たちの強い答えです。私の死なんて……何も影響は無かったはず」


 二人、思い出の公園に、なんとなく立ち寄る。

 ブランコに腰掛けて。


瑠璃「夢……」


夢「? ……」


瑠璃「そろそろアイゼルに帰りたいんちゃうんか……」(俯いて)


 夢の視線は彼をじっと見詰めているのに。彼は、顔を上げようとはしない。


夢「……それはどういう意味ですか……」


瑠璃「俺は夢のこと、あいし……っ。……俺やって、戦に出たことくらいある」


夢「……」


瑠璃「君の大切なダブレスたちを、傷付けたことだって……」


夢「瑠璃は、自分がリゼル出身であることを、恥じているんですか?」


瑠璃「……恥じる、か……」


夢「怖いんですか?」


瑠璃「怖いよ」


夢「っ! え……」


瑠璃「なん?」


夢「いえ……。私、瑠璃は最強で、百戦錬磨だと……思い込んでて……」


瑠璃「っ。なんやそれっ」


夢「怖いものなんてあるんですか?」


瑠璃「……夢が居なくなるんが怖い、と、思、う……」


夢「自信がなさげですね」


瑠璃「ちゃうんよ」


夢「ちゃう、ん、ですか?」


瑠璃「はじめはただの罪滅ぼしがしたかったんや」


夢「罪滅ぼし?」


瑠璃「リゼルの攻防は卑劣やったからな……」


夢「……あの頃はまだ、私たち小さかったじゃないですか……」


瑠璃「でも、君は国を救う為に自殺した」


夢「……るり……」


瑠璃「……そこをジョーカーに救われた」


夢「っ……なんでも知っているんですね……」


瑠璃「……ごめん」


夢「謝らないで下さい……」


瑠璃「親父たちの独裁的な支配政治のせいで、中央大陸の平民も、自然も……焼き払われたことがあったやろ……」


夢「……っ。……? 親父?」


瑠璃「リゼル王は、……父親や」


夢「えッ!?!?」


瑠璃「ふは。……俺、庶民ぽく見せるん、上手いやろ」


夢「……瑠璃……。じゃあ、瑠璃も、カズマ・瑠璃は日本名なんですね……」


瑠璃「ああ……。名無しの姫の自殺を聞いたとき。……どうしてか、それは信じらへんかった」


夢「どうして……」


瑠璃「なんでやろうな。……パレードで一度見ただけやのに。……一度だけやったけど。君の目は、凄く輝いとって。……自殺なんかするような子やないと思った」


夢「……」


瑠璃「もし見つかったら。友達でも、部下でも、どんな関係でもいい、名無しの姫を……守りたいって……思て。クドゥルシェの知人に頼み込んで、捜索して貰て」


夢「……知らなかった……」


瑠璃「だから。俺な、ほんまは夢を想う資格、ないんや。俺は……敵やったんやから」


夢「……っ」


 夢、立ち上がり。瑠璃の両手を強く、しっかりと握る。


瑠璃「……っ。夢?」


夢「私……。今だって、あの過去はとてもつらい……」


瑠璃「……」


夢「でも、あなたのあたたかい気持ちは……ずっと感じてた……」


瑠璃「夢……」


夢「私……瑠璃が居てくれて良かったです」


瑠璃「っ」


夢「ありがとう……。私を一人ぼっちにしないでくれて」


瑠璃「……寂しがりなん、知っとるから」


夢「……不思議ですよね」


瑠璃「ん」


夢「だって、同じ星で生まれても。こうやって、遠くの星でまた巡り合うこともある」


瑠璃「……」


夢「同じ血が流れていても、同じように育っても。すれ違ってしまうことがある」


夢「何千キロも離れた場所で、同じ星を見上げていることも……。何度だって。巡り合いは、あるから……」


瑠璃「……うん」


 夢のお腹が鳴る。


夢「……ッ!!」


瑠璃「ふは。帰ろか」


夢「はいっ」


瑠璃「……夢」


夢「うん?」


瑠璃「好きや……」


夢「……ありがとう」


瑠璃「……誰にも、渡しとぉない」


 この手を離さない。






【END】






■おまけ


 とぅるーえんど!

 夢のマンション。夢の寝室。夜。


夢「ふむっ」(お布団にダイブしてごろごろする)


瑠璃「?」


夢「ふむむっ」


瑠璃「夢、寝ぇへんの?」(着替えてる)


夢「寝ましゅ! お布団今日もふっかふか!」


瑠璃「少し酔ったか……」


夢「ろれつまわりんひゅ!」


瑠璃「呂律?」


夢「ちゅうしてくらさい」


瑠璃「……はい」


夢「ちゅーんーちゅーんーちゅーんちゅーん」(頭を振り回す)


瑠璃「ちょっ、動かず!」(彼女の頭を鷲掴み)


夢「はいっ」


瑠璃「……ちゅ」(おでこにキスをする)


夢「……くすかー」


瑠璃「寝た!?」


夢「すぅすぅ……」


 完全に寝入る。


瑠璃「ふ……。おやすみな」


夢「……」


 瑠璃、夢に布団を掛け。寝室を出て行く。

 リビングに行き、飲みかけの白ワインを手に取り、飲む。

 ふと、リビングの隅にあるピアノが気になって。


瑠璃「ピアノ……」


 蓋を開け、鳴らしてみる。


瑠璃「……」


 静かに、弾き始める。


瑠璃「……♪~」


 懐かしいメロディ。


瑠璃「……♪~」


夢「るり……?」

瑠璃「ッ!?」


 夢が、目を擦りながら。いつの間にか隣に立っていた。

 ピアノを弾くのに夢中になっていて。気付かなかった。


瑠璃「夢っ」


夢「続き、弾いてください」(ピアノに寄りかかって)


瑠璃「いや、ごめん、うるさかったな」


夢「うるさくないです。はやく」


瑠璃「え……」


夢「つづきー」


瑠璃「や。俺、歌うまないし……」


夢「じゃあ私が歌います」


瑠璃「!」


夢「……駄目ですか?」


瑠璃「いや。でも……歌は……」


夢「瑠璃が私に打ち明けてくれたこと……。凄く勇気がいりましたよね。……黙っていれば、私が、しがらみに気付くことがなければ、私が……」


瑠璃「もう寝よ」


夢「瑠璃……」


瑠璃「歌うのは辛いはずや」


夢「でも音楽の側に居たかったのは本当です!」


瑠璃「……だから、ピアノ、置いとるん?」


夢「……はい」


瑠璃「アイゼルの姫は、歌うんが、使命やんな」


夢「……私のお姉さまも、いつも、血を吐く程歌っていました……。自分の国を、守る為に。騎士たちに、エールを送る為に……」


瑠璃「……夢、歌うんはやめたほうがええ」


夢「どうして」


瑠璃「わかっとるやろ。アイゼルの王族には、キャギラやどんなインドランスも鎮められる。歌の能力チカラで……。そのちからを、絶対に誰かが狙って……」


夢「だから、偽物さんたちは、私を誘き出す為に……?」


瑠璃「名無しの姫にはえらい額の賞金もかかっとる。……君の血を飲めば、同じちからが得られると思うとるやつらもおるんや」


夢「……」


瑠璃「やから。人前で歌うんだけはあかん。誰かに気付かれたら、狙われてまう」


夢「……」


瑠璃「ピアノ、撤去したほうがええよ」


夢「音楽の側に居たいんです!!」


瑠璃「っ……!」


夢「これだけが。私を、【クロム・ロワーツ(わたし)】だと認めてくれる。私があそこで産まれて、アイゼルのみんなを……愛している証に……なると……信じてるんです……っ!」


 蹲って行く。


瑠璃「ゆめ……」


夢「ジョーカーとダークが……はじめて褒めてくれたことでもあるんです……」


瑠璃「……歌うのはあかん」


夢「……わかってる……」


 夢を撫でる。


瑠璃「わかっとらん……」


夢「……っ」


瑠璃「ふ。ははっ……」


夢「?」


瑠璃「ほらやっぱ」


夢「……」


瑠璃「帰りたい、思うとるんやろ?」


夢「……っ!」


瑠璃「故郷の人らとの繋がりを、取り戻したいんやろ」


夢「……でも……そんなこと出来ないから」


瑠璃「出来ないて思て、膝抱えとったら。そら出来んよ」


夢「私……自分のお墓を、見たの……」


瑠璃「うん……」


夢「こわかった……。わたしはもういらないんだとおもった……」


瑠璃「うん……」


夢「自分で撒いた種だけど……でもつらい」


瑠璃「……」


夢「……瑠璃……」


 瑠璃、もう一度ピアノの前に座り。音を奏でて。


瑠璃「……これ、知っとる? ……♪Twinkle,twinkle,little star.……♪」


 星に願いを。


夢「♪How I wonder what you are.……♪」


瑠璃「♪Up,above the world,so high,Like a diamond in the sky.……♪」


夢「♪Twinkle,twinkle,little star.How I wonder what you are♪」」


 静かに、転調して。

 瑠璃、他の曲を弾き始める。


瑠璃「今夜、だけやで」


夢「っ!」


 夢しか知らないはずのその曲を、瑠璃は弾いてみせた。


夢「っ……!

   ♪……好きだと気付いた時には

   戻れない距離まで来てた

   今はかなしく

   胸にひびくの


   わたしは ここに

   あなたの 帰りを待つから


   好きだから

   好きだから ねえ

   

   泣いてくれるの君は

   なんて やさしい人

   

   (瑠璃:好きだから)

   好きだから ねえ

   聞いてくれる

   このかなしい うた


   (瑠璃:君がくれた)

   この想い

   溢れて飛んでゆく……♪」


瑠璃「……」


 ピアノが、切なくフェードアウトしてゆく。


夢「……どうしてこの歌、知って……」


瑠璃「夢が書いた譜面、前この部屋来た時、見つけてしもて」


夢「……っ」


瑠璃「ごめん」


夢「……ううん」


瑠璃「夢」


夢「ありがとう……」


瑠璃「……」


 二人、抱き締め合う。






 真夜中。

 二人はベッドの中。


夢「……」(天井を見上げながら、軽く溜め息を吐く)


瑠璃「寝れん?」


夢「っ」


瑠璃「明日朝番やろ」


夢「(寝返りをうち、彼の方を向いて)……やっぱり歌が好きです」


瑠璃「……そか」


夢「瑠璃は、強いですね……」


瑠璃「夢が弱いんよ」


夢「……そんなことありません」


瑠璃「強いやつは、他人の強さを羨んだりせんて」


夢「……そうかも」


瑠璃「……よしよし」


 夢を撫でる。


夢「……」


瑠璃「眠いんやろ?」


夢「……ね」


瑠璃「うん?」


夢「キスしてもいいですか?」


瑠璃「っ。……ええよ」


夢「……ん」

瑠璃「……っ」


 二人、キスをする。


夢「瑠璃……」


瑠璃「泣きそうな顔せんで」


夢「もっと……歌いたい……」


瑠璃「……夢……」


夢「ごめんなさい。我儘を言って」


瑠璃「んや。もっと言って欲しい」


夢「……瑠璃、ありがとう」


瑠璃「……」


 一緒に星を見上げて。口付けをする。






つづく

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