人間とロボット
何となく思い付いたことを形にしてみました。なんか、SFとかでありそうな気がする。
この世界には人間という存在がいる。
肉の身体を持ち、物を食べて、自分で考える生き物だ。
人間は地球で一番発達した頭脳を持っていた。その頭脳を使い、人間は空を飛んだり、深海に潜ったり、宇宙に行ったりしていた。
人間は頭がよかったのだ。
しかし、人間の肉の身体は、とても弱かった。木の枝や石の欠片で傷つき、剣で斬られたり、銃で撃たれたりすればすぐに死んでしまう。
だから人間は、自分の身体を包み込む鎧を作った。でも、鎧はとても重く、それを着ていては人間は満足に動けなかった。
だから人間は、鎧に新しい筋肉を付けた。機械で造られたその筋肉は鎧を動かしやすくしたが、今度は人間の身体が機械の筋肉に耐えられなかった。
だから人間は、鎧に骨と頭脳を与えた。鎧は鎧から、ロボットになったのだ。
ロボットは人間のために戦った。ロボットの身体はとても強く、剣で斬られても、銃で撃たれても、大丈夫だった。
やがてロボットは、人間の生活を手伝うようになった。ロボットが買い物をして、ロボットがバスを運転して、ロボットが家を建てた。ロボットのお医者さんや、ロボットのお花屋さんもいた。
人間はやがて、ロボットを人間と同じように扱うようになった。ロボットが警察になったり、ロボットが裁判官になったり、ロボットが大統領になったりすることもあった。
ある人間は言った。私はこのロボットを愛してしまった。私はロボットと結婚したい。
しかし、周りの人間はそれを嫌がった。人間とロボットでは結婚はできないと。
ある人間は言った。なら、このロボットを人間と同じにすればいい。
そのロボットには、肉の身体が与えられた。ロボットは、その人間と結婚した。
やがて、ロボットと人間が結婚するのは珍しくなくなった。
あるロボットの妻は言った。私は子供が欲しい。愛の結晶が欲しい。
ロボットは人間と子供が作れるようになった。
やがて、ロボットはロボットから生まれるのが当たり前になった。
その内、あるロボットは考えた。妻は素晴らしい存在だ。だが、妻は何故かいつの間にか、皺くちゃの搾りカスみたいになっていた。そして、動かなくなっていた。
それが、ロボットは悲しかった。
ロボットは、自分も皺くちゃの搾りカスになるようにした。やがて皺くちゃの搾りカスになったロボットは、その内動かなくなってしまった。
皺くちゃになったロボットを見たロボットがいた。ロボットは、自分もそうなってしまうのかと考えた。
それが、ロボットには怖かった。
ロボットは自分の妻であるロボットと、その子供のロボットを大切にした。妻と子供に、溢れんばかりの愛を注いだ。
子供のロボットは考えた。この、教科書に載っている人間という生き物は、あとどれだけいるのか。この人間は、自分達が守らなければならないのではないか。
子供のロボットは大人になった。大人になったロボットは、人間を守ろうと、世界にいる人間を集めた。
集まった人間を、ロボットは施設に入れた。人間はロボットに愛を伝えたが、ロボットは人間のためと、人間とは愛し合わなかった。
だが、それでも人間はいなくなってしまった。
一億年が過ぎた。そこに暮らす生き物の子供が、父親に聞いた。
ねぇお父さん。ニンゲンってなに? 生き物なの?