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勇者様はスライムが好き  作者: 秋水舞依
第1章 少女と仕組まれた依頼
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07:希望を背負う黄金の意思

 ザッ、ザッ、ザッ……ッッ


「坊主、来るのを待っていたぞ!」


 ギルドへと到着した僕とリエルを待ち受けていたのは、戦斧を担いだオッサンと、その仲間らしき屈強な男たち……

 身長より長い大剣を持つ筋肉隆々とした男。

 漆黒のローブを纏い巨大なメイスを腰に備える男。

 紫色の全身鎧に深紅の槍を持つ男。


 その集団は禍々しい空気を出しており、ギルド内の空気は先日よりも尖っているように感じられた。

 あまりの恐怖に「ひっ」と声が漏れてしまった程だ。僕は小心者なんで。リエルのほうを見ると、目元が潤んで今にも泣き出しそうだ。


 彼女の頭に手を乗せ、ポンポンとしてやると。強張った表情で口元を引き締める。しかし、集団で何の用だろう。


 オッサンとの関わりなんてスライムで作ったアレぐらいしかないし、昨日の帰宅前の時点ではすこぶる好評だったのだが―――そう思った瞬間、僕に天啓が降りた。

 好評だったのは、あくまで昨日の時点で、なのだ。僕は奇麗なカラダなので、昨日のアレが本物より優れているのかどうかなんてわからないのだ。もしや、恥ずかしい目的で使用した際に、何か恥ずかしいトラブルが起きて恥ずかしいことになってしまったのではないでしょうか。


 殺気は感じられない、しかし殴られるぐらいはありそうだ。スライムを展開して防ぐことは余裕だが、遺恨を残さないためにも殴られておいたほうが良いだろう。


 僕は、1歩進み、両手を横に広げて目を瞑った。


 グァシィィーッ!


 身体を包み込むような感触、身体を包み込む……なん、だと!?

 目を開けると、そこにはオッサンの胸板があった。顔を上げると、頭をガシガシやられた。


「坊主……いや、ダンナ。昨日もらったアレは最高だった」


 そう言うと、オッサンは足下に置いてある袋から、おっぱい型のスライムを取り出した。


「なッ!」


 その巨大なスライムを見て、僕の顔は驚愕に染まる。なんということでしょう。渡した時の3倍ぐらいの大きさになっている。そこで、スライムが魔力を吸う性質があるということをスッカリ失念していたコトに気付く。


「コイツをな、昨日ギルドから帰って揉み続けていたんだ。ねっとり、可愛がるように……な。その感触は本物のおっぱ」

「ああああああああああああああああああい」



 声を上げ、オッサンの口元をふさぐ。おい、僕の後ろにいたいけな少女がいるんだ!


 おそるおそる、背後に振り返りリエルの表情を見ると、きらめく瞳でオッサンが取り出したスライムを凝視していた。どうやら、何かイベントが始まると期待しているようだ。このスライムが何か理解できてなさそうなので安心する、純情で良かった。

 汚れ宮廷魔術師のエフィルさんといえども、この分野では英才教育を施していないようだ。


 オッサンと僕が既知の知り合いで、親しげに話をしているのを見たから安心したのだろう。おびえた様子もなく「何かなー、説明して欲しいなー」といった瞳を僕にチラチラ向けてくる。


 それに安心して僕は


 ベチョォッ。


 右手に生成したスライムでリエルの意識を刈り取った。

 倒れ込む彼女をギルドの隅っこに寄せ、男衆4人で待合席に移動し、先程の会話を再開する。



「すいません、僕の落ち度です。それ、魔力を吸収するして巨大化するんですよね、少しぐらいなら問題ないハズなんですが……」

「おいおい、物騒なモンだな。俺には、自分の魔力が吸われた感覚はなかったぞ?」

「本人の中にあるものを吸う、ではなくて、捕食した対象の魔力を、ってことですね。しかし、捕食対象が指定してあるので、周囲の純粋魔力を吸い取るなんてことはないハズなんですが」


 その説明に、オッサンは納得した。という表情でうなずく。いや、なんで納得してるんですか。

 先日オッサンに渡したスライムからは、その機能をシャットアウトしてある。純粋な魔力を吸うこともない。僕がスライムを創造する時に敷く制約は、絶対に遵守されるハズだ。スライムに対する愛に誓って。


 このおっぱいスライムには自己洗浄の効果を持たせたており、捕食対象は液体、細かな汚れ。

 これらから魔力を吸い取って巨大化したとなれば話は別だが、そんなものにスライムの質量が増大するような過度な魔力は含まれていないハズだ。聖女様とか、エフィルさんの部屋の塵芥ならともかく、だが。


「ダンナ、ソイツは俺から吸ったのさ。俺の”心の中の汚れ”ってヤツをよ……」

「……はい、そうかもしれませんね」


 オッサンがそんな馬鹿なことを言ったが、これはあながち間違っていないかもしれない、そんな予感がした。

 昨日、話していた淫魔の話題の中に、<性魔術>というものがあったのだ。これは他人を侵食し汚すための魔術であり、淫魔と対等に戦うためにオッサンが身につけた力らしい。

 皮膚同士が接触する際に、ある方向性を持たせた魔力を相手に送り込むことによって屈服させる魔性の技術だ、と力説してたからなぁ。


 ……スライムは心の汚れた魔力を吸い取ったのだ。



「少年、俺が普通の魔力を送り込んだらどうなる? 試して良いか?」

「送り込めれば……巨大化しますね。できないと思いますが、試してみて下さい」


 紫の鎧を着ている美丈夫が僕の返答に、首を縦に振って応じる。

 彼の身体から紫色の光が漏れ出し、それを右手に集約、スライムに触れ――――


「おぉ……すげぇぜ、コイツは」

「魔力を、弾いている、ですか……」


 感嘆の声。

 スライムは、ぷるぷると震え魔力を弾く。


「ダンナ、コレは何でコーティングされているんだ?」


 全員の視線が、スライムから僕に移動する。

 なんだか、オッサンたち以外からも視線を感じ、地味に目立っていのを自覚する。よくわかんなけど首筋がチクチクするし……きっと求められている。スライムという存在が。コイツは派手にいくしかないッ……


「フッ……スライム、ですよ」


 僕は堂々と宣言した。

 そして、スライムを創造する。派手に特別なヤツを。


「我は願う、金色より這い寄る粘液の混沌を。我は願う、人の希望を背負う黄金の意思を―――顕現せよ、粘菌王ッ!」


 そして、天使が舞い降りる。

 六対の翼を持つ黄金のおっぱいスライムが――――――



 フフフ、みんな驚いてる。驚いてるよ。スライムが注目浴びてる! 気持ち良いね!


 こうして僕は、ギルド内でスライムすげぇ! と布教することに成功した。黄金の魔力を見せたおかげで、勇者だということも認知してもらえたし一石二鳥だったと思う。



 この後、オッサンは巨乳が好きだということが判明し、巨大化したスライムはそのままで良いと言われたので放置。スライムに性魔術を使わないように注意したので、これ以上のトラブルが起きることはないだろう。

 あと、オッサンと一緒にいた男たちは、パーティを組んでいる仲間だそうで……僕も勧誘されたけど、それには丁寧にお断りをしておきました。

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