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勇者様はスライムが好き  作者: 秋水舞依
第1章 少女と仕組まれた依頼
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06:新たなる称号を手に入れた!

 本日は、改めてギルドに依頼に行くように設定した日だ。

 僕が待ち合わせ場所に指定された城門に行くと、既に待ち人が居た。15分程余裕を持って到着したのに、相手のほうが早かったのでなんだか負けた気分になる。競争してたワケではないんだけど……ともかく、朝は挨拶からだ。


「おはようございます」

「おはよう、良い朝じゃな!」

「……」


 元気そうなエフィルさん、そして疲労困憊といった体裁のお弟子さん。疲れていても挨拶を返さないのはよろしくないなぁ、と。しゃがんで彼女の目線まで顔を近づけるが……反応がない。目の前で手を上下する。やはり反応がない。


 エフィルさんに「どうしたんですかこの状態?」という目線を送るも、笑顔でスルーされた。放置安定ということか? とりあえず、お弟子さんに関しては触れないことにしよう。


「エフィルさんはお見送りですか? 師匠と言うより保護者ですねー」

「いやいや、勇者殿を見送りにきたのじゃよ。わしの弟子はまだ幼子とはいえ、そこいらの大人より強いからの、保護される器ではないというヤツじゃ。しかしの、それでいてまだ子供らしさが抜けない泣き虫娘じゃからの、ちーっと心配なのも事実じゃ」


 ばっちり保護者をやっているじゃないですか、思わず顔がニヤけてしまった。


「じゃぁ、そろそろ行ってきます」

「頑張ってくるのじゃぞ」


 エフィルさんは僕にそう言って拳を握ると、お弟子さんの耳元で何かを呟く。すると、彼女の肩がビクンと揺れ、隙のない動作でこちらに歩いてきたと思ったら、しゃがみ込んで僕の足先に口付けをした。


「ひっ」


 あまりの恐怖感に声が漏れたよ、なにこの流れるような一連の動作。

 調教ってヤツじゃないですか、ばっちり保護者やってなかった。怪しげな洗脳教育してた!


「さぁ、勇者様。私たちの力を民草に見せてやりましょう」

「……はい」


 こうして、僕とお弟子さんはギルドに移動を開始した。





「勇者様、先程は申し訳ありませんでした」


 気まずい空間の中、正気を取り戻したのであろう、お弟子さんが話しかけてきた。そして、何故こんなことになっていたのかを語り出す。正直聞きたくないのだが……



 *


 先日、アリーゼ様より勇者様とギルドで依頼を受けてくるよう指令がありました。

 男の人と出かけるのは初めてで緊張しますけど、それが師匠の気にしている勇者様だと思えば楽しくなってきます。そしてチャンスだとも思ったのです。私が、普段師匠にイジられている私が! 普段と立場を逆転させる機会になり得るだろうと。

 そして、勇者様とお出かけだから少し甘えさせて貰おうかと、これは役得だから享受してやろうと黒い野望が沸いてくるワケです。


「師匠! 私、明日勇者様と一緒に町へ出かけることになったんですよ! えへへ、羨ましいでしょう。そうでしょう。師匠にはバッチリお土産を買ってきてあげますからね。勇者様と仲良く一緒に選んであげますから!」

「お出かけ、じゃと……」


 この事実を伝えると、珍しく師匠の驚いた顔が見れ、ニヘヘと、顔の筋肉が動作してしまいましたよ。

 しかし、しかしです。師匠を追い詰めるのはここから。ここから私の時代が始まるのです!


「勇者様、私のような若い子と出かけるの絶対楽しみにしてますよ! アリーゼさんのような可愛い守護騎士と四六時中一緒にいて何もないような人ですから、絶対そっちの人だと思いますよ。師匠はロリババァですけど、年増なのは事実ですから、ムフフ」


 そんな性癖はないと思いますが、勇者様にはロリコンの不名誉を頂戴していただくことにしました。スライムにしか欲情しない変態ですから、ちょっとやそっと駄目な要素が増えたところでなんとも思われませんよね。

 師匠との模擬戦を見て、勇者様の力に恐れをなした大臣が『メイド夜伽部隊』なんてものを結成して送り出したのに、それを悩むそぶりもなく「必要ないんで」という言葉で断ったというエピソードも有名ですから。


 覚悟を決めてきたのに一瞬で断られた女の子は、勇者様を見て泣きはらし、問い詰めたと聞いていますよ。「私はそんなに魅力が無いのですか」と。それに対して勇者様は即答で「スライム未満なのは間違いないなぁ」と。

 ありえませんよこの言動。どこの変態なんですか。スライムにしか欲情しないという噂は本当だったと私は確信しましたね。人として大切な心の何処かが壊れている、間違い有りません!


 師匠も何処か壊れてますから、そういった意味ではお似合いだと思っているのですが……相乗効果って恐いですよね。二人が一緒に居るときの私の被害率が異常ですもん。スライムまみれになって記憶が薄ぼんやりしていることが結構な頻度でありますからね!


 これだから勇者様は……と、何度思ったことか。最低ですね、勇者様!

 スライムに埋もれて一度窒息死を経験してみるのが良いんじゃないですかね。でも、たまに格好良いし、私にも甘い言葉をかけてきたりでタチが悪いですよね、本当に最低です。


 *



 今朝、意識が無かった反動だろうか。お弟子さん僕の心を巧妙に攻撃してきます。


「ねぇ、お弟子さんや。すげー僕の悪口聞かされてる気がするんですけど」

「なにがですか?」

「無自覚の悪意って恐ろしいよね」



 ……それで、お弟子さんの煽り言葉にカッとなってしまったエフィルさん。束縛魔法を抜ける訓練と称してお弟子さんの動きを完全に拘束。「師匠、トイレへ、トイレへ行かせて下さい、お慈悲を、お慈悲を下さい、あああああ」と泣かされたらしい。「出てしまったソレは実験用に置いてある勇者殿のスライムが奇麗にしてくれよう、クックックッ」そんなことを言っていたらしいエフィルさんはさすが魔王候補です。

 我慢できたので、スライムの出番はなかったということを聞いて一安心だけど。


 と言うか、この子はなんでこんな自分の恥ずかしい話をしているのか。師匠がドSだと弟子はドMになって環境に適応するのが自然の摂理というヤツで、もしかしたら世の中の心理なのかもしれない。


 そんなことを思っているとお弟子さんが突然泣き出してしまったので、頭をなでて抱きしめてあげた。ここ、往来だからね。僕が泣かせたみたいで非難の目線を周囲に向けられたからね。

 状況を打破しようと、できるだけ優しくしようと意識した行動をして。道中でソフトクリームを奢ってあげて、エフィルさんに対する愚痴を聞き、オシャレの話や、好きな食べ物の話をしていたらいつの間にか自然と手を繋いでいて、気付いたら心臓の鼓動が早くなってドキドキ状態だったからね。


「お弟子さんじゃ嫌です、リエルって呼んでください」


 と、言われた時なんて、勢いで「好きです」と言いそうになったし。どうやら、僕は完全に目覚めてしまったようです。そう、ロリコンの不名誉を頂戴することになる程度には。


 まだ少女といえどもやっぱり女の子で、リエルはやっぱり可愛いなぁと改めて思いました。

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