37:余談のようなエピローグ
僕らが獣都から帰還して2週間。
過酷な修行が終わり、腹筋が軽く割れ少しマッチョチョな感じになったリエルが王都に戻ってきた。
再開の抱擁をしあってから姫さんを紹介し、今は僕の部屋で3人。
リエルがいない間にあったことを長々と話し、彼女はそれを笑顔で聞いている……姫さんの膝上に座り、胸の感触を楽しみながら。
くっ……僕もまだ揉んだことがないのに同姓だからといってけしからん。
姫さんと僕の仲はそれなりに進展し、『姫様→姫さん』『勇者さん→お兄さん』というような感じに進歩した。言葉で表すなら、友達以上恋人未満兄妹程度という所だろうか。お互い積極性に欠けるので、しばらくはこのままの関係が続きそうだ。あと、聖女様の妨害も。
あの人から言わせれば、「お姫様を奪うところまでやって豚姉陵辱計画の完成です」ということで無駄に拘っているんだよ。僕の前で「お姫様とスライム、どちらが大切なんですか?」と答えにくい質問をしてきて、1分悩んだ結果「スライム」と答えたら姫さんに1日口を聞いてもらえなくて、すっごく凹んだからね。
「それで、聖女様が奪われた”大切なもの”って何だったんですか?」
「おう……それを聞きますか」
「だって、気になりますもん」
「僕は沈黙するね」
「えー。姫姉さん、ご主人様がケチです、教えて下さいー」
もみもみ。リエルは姫さんの胸を揉みながら我が儘を言う。
「ちょっ……やっ。リエルちゃん、やめて……もう、言うから、言うから……あ」
いいぞ、もっとやれ。姫さんが助けを求める視線を送ってくるが僕は華麗にスルー。彼女は昔から妹が欲しかったそうで、妹ポジションのリエルにめっぽう弱いので抵抗できないのだ。
会ってまだ1日も経ってないのに、2人が打ち解けすぎて少し嫉妬。
しかし……ここらが我慢の限界なんだけど、性的な意味で。
僕はリエルが揉んでいる巨峰をガン見し、無意識に手をわなわなとさせてしまう。
「ご主人様はこっちで我慢です。姫姉さんへの初めての胸部タッチは、ちゃんと2人きりでやらないと駄目ですよ」
リエルは僕の手を取り、自分の胸元へと優しく導く……と見せかけて腹筋をサワサワさせる。
彼女は、修行の成果を自慢したくて仕方が無いようだ。僕としては、少女特有の適度な柔らかみを堪能したいので、行為に対するツッコミをスルーして左手をシャツの隙間に侵入させ、直に膨らんだ蕾を揉みにいく。
……ん?
何か違うなぁ、そう思って手を止めると、リエルの身体が強張った。
なるほど、聞いたことがある。ダイエットをする女性の脂肪は胸から減っていくと。つまり鍛えまくったリエルにも同様の――――
「ひっ」
不用意なことを考えていたら、リエルに急所を握られていた。
それ以上は止めて下さい、容赦はしませんよ? と、目で語っている。
「ご主人様、なんとか1週間で食事療法をして元に戻すので……今、気付いたことは忘れて下さい」
「はい」
「兄さん、私もいるんだから淫らな行為は控えてね」
「それは無理」
「無理ですね」
「……なんで?」
「「愛こそが正義」」
「はいはい。獣都にいた頃からお姉様とイチャコラしてたから今更だったよ」
「姫姉さんもこっちの世界にこれば良いんです、デュフフ」
姫さんが言った”お姉様”とは、アリーゼのことだ。
木剣による稽古で僕をボコしたり、不祥事に対応したり、説教したり……そんなことをしているアリーゼのことを、いつの間にか姫さんはお姉様と呼ぶようになった。「兄さんよりお姉様のほうが私の好感度高い」と本人が語るため、アリーゼは次のステップへ進む前の最大の強敵として僕の前に立ちはだかっている。
この”お姉様”という名称は何故か城内のメイドや女騎士連中にも波及して、アリーゼの二つ名が『姫騎士』から『お姉様』になった。
初めてアリーゼと一緒に寝てシーツを汚した翌日には一騒動あり、中庭で昼寝をしているときに10人の先鋭に襲撃を仕掛けられた。言い分を聞いてみると、「みんなのお姉様を、よくも!」と理不尽な意見だったので、全員を触手で拘束した後に、アリーゼを連れてきて目の前で熱い抱擁と熱烈なキスを交わして独占欲を全開にして自己主張したのは言うまでもない。
「それで、聖女様が奪われたものはなんなんですか?」
「リエルちゃんは、なんでそんなに知りたいの?」
「嫌いな人の弱点は聞いておきたいじゃないですか」
「これこれ、迂闊なことを言うでは無い。どこに目と耳があるか」
「ご主人様の部屋ですからそんなものありません」
コンコン、ノックの音がするの。あぁ、このタイミングはアレですよ。「どうぞー」と言うと、メイド服をした聖女様が部屋に入ってくる。
「皆様、ご機嫌よう。リエル、おかえりなさい」
「……ご無沙汰していました」
不機嫌な顔になるリエルと、表情を消す姫さん。
アリーゼにも獣都の一件で嫌われたし、僕の身内からは非常に評価が低い聖女様である。
「これは、わたくし手作りのケーキです。リエルが帰ってきた記念なので、是非食べて下さいね。胸が大きくなる呪いがかけてありますから。あと、奪われた大切なものなんてありませんよ、あれは嘘ですから、ホホホホホ」
バタン。と。
言うことだけ言うと聖女様はケーキを置いて、扉を閉めて退室して行った。
「……でしょ? あの人、<隷属の魔眼>以外にも、千里眼とか空間転移とか怪しげなスキルを絶対保持してるから」
「ぐっ……打倒聖女様の道は険しいです」
ケーキは、「聖女様の作ったものなんて食べたくありません」とリエルが言ったので僕の胃袋に収まりました。
翌日、起きたら僕の胸がFカップまで成長するという変態イベントが発生し、散々な目にあったのは記憶から永遠に忘却したいです。
これで2章は完結、連載はもう少し続きます。