〜キール〜
今回はある任務に出かけるシーンでのタルトとキールさんの仲良くなっていくシーンを書きました。
「おっと…そーだそーだ!明後日から二つ隣の町に遠征だからな!準備しとけよ!」
ガイルさんは朝練からの帰りに、いきなり言い出した。
「二つ隣ってことはミシルア?それともアルケア?」
レインさんが方角を指差しながらガイルさんに聞く
「ミシルアの方だ!」
ガイルさんは、レインさんが先に指した方角を指差しながら言った
「ミシルアか、久しぶりだな…」
ガイルさんが言った言葉に、キールさんが反応した
「そういやテメェはミシルア出身だったな!まぁ何日かは滞在すっから親孝行しに行ってやれや!」
と笑い飛ばしているガイルさんは、急に僕に向き直りって言った
「もちろん、タルト坊も一緒だからな!まぁ遠征っても二、三仕事するだけだ!まぁこれからこういうことが多いから勉強にもなんだろ!」
「あっ、いえ…僕は他の町に行けるのはとても嬉しいんですけど…足手まといにならないかどうかが心配で…。」
タルトが心配そうに苦笑いしながら頭をかくが、珍しくキールさんが割って入った
「そんなことあるわきゃねぇだろ?」
ガイルさんは鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻した
「あったりめぇだ、お前は俺に一発えぐいのぶち込んで!俺が採用したやつだ!心配すんなや!!」
「あっ、はい…えとありがとうございます。」
「よっし明日は念入りにアップして早いめに休むとすっかな!」
ガイルさんはそう言い残しギルドを出ていった…
明くる日の朝
また、前と同じ場所に集まった!
四人で練習メニューをして、掛かり稽古をやって、模擬戦もちょっとだけやって…昼過ぎには解散した。
ガイルさんいわく「明日の準備とかあるだろうから…」とのことだ。
僕もあまり寄り道等もせず自分の身支度をしに戻った。
その日の夜、僕は楽しみ過ぎて余り寝られなかった……
朝、アースタット南門前広場に四人は集まった。
「おし、じゃあ出発すんぞ!」
「「「おーぅ!」」」
僕ら四人はアースタットから二つ隣の町、ミシルアを目指して歩きだした…
キールさんによると、ミシルアは農業が盛んでアルアの牛乳やチーズ等の大部分を扱っている町だ。
「ガイルさん、ミシルアまでどれくらいの距離あるんですか?」
「ん?あぁ〜3、40キロくらいあったんじゃねぇか?」
タルトはガイルさんの言った言葉に若干うなだれた。
「えっとね、アースタットからミシルアまでは36.573キロあるんだよ。まぁ二日か三日間歩けば着くよ!」
「二日か三日…ですか。」
うなだれていた僕にレインさんが留めをさす
だが、当の本人はニッコニコしていて言い返すなんてもってのほか……
ガイルさん達は笑ってるし……
歩き始めて約20分くらいして、道は腰くらいまで草木が茂る林道になってきた
林道は更に険しくなっていき、目の前が木で隠されて見にくくなるほどにまでだった。
でも前を行く三人に置いて行かれまいと必死についていくと。
林道を抜けるとそこからは山道で、タルトはさらにうなだれたが、そこに休憩所があったのでそこで少し休憩をとってもらった…
「もぅへばったのか?だらしねぇなぁ!まぁ最初はこんなもんか?」
ガイルさんはまだまだ行けるようで、呼吸は乱れてなかった
「まだまだ先は長いんだから頑張ってね!タルト君。」
レインさんが優しく笑いかけてくれる。
「まぁ、こう言ってるレインも初めはここに着くなり、へばって泣き出したの思い出すなぁ」
「ちょっ、それいつの話よ!!そんなもん思い出さなくていーからー!!!」
「ハッハッハ!いいじゃねぇかよぅ!そんくらい!かわいいもんじゃねぇか?」
そういいながらガイルさんはレインさんの頭をワシワシと撫ではじめた。
「ちょっ、辞め、辞めてよぉ。せっかくセットして来たのに〜!」
良いながら髪をセットし直すレインさん、それを笑いながら見てるガイルさん、この二人を見てるとこっちまで笑いたくなってくる。
「もぉ、災厄〜ベーッだ!」
そう言い残し先にレインさんは歩きだした。
「タルト坊行くぞ!」
「あっ、はい!!」
タルトは慌てて鞄に荷物を押し込み後を追って山道に入って行った。
先ほどから姿が見えないキールさんは今晩泊まる場所(野宿)を捜す為に先に山を登ってくれているらしい
山頂に着いた頃には既に日は落ち、ほとんど真っ暗だった。
「一応この辺で良いんじゃないのかと思ったんだが?どうだ?」
遥か昔に着いていたのか、空を眺めていたキールさんが僕たちの姿を見つけ声をかけてくる
「そうだな、よしタルト坊とキールはテント張ってくれ!レインは食事の用意を頼んだ!」
「了解した!」
「まかせといて!」
「はい!」
「じゃあスタートだ!!」
僕とキールさんは足場の良いところを見つけ、そこにテントを張ることにした。
「おーい、タルト君そっちの柱立ててくれるか?」
「はい!」
「おっし、作業終了だな!お疲れさん。」
キールさんはコップに冷たいお茶をいれて渡してくれた。
「あっ!ありがとうございます、いただきます。」
「こっから見る景色は最高なんだ。」
「え?」
キールさんが小声で言ったのであまり聞き取れなかった。
「悪い悪い。いやな、こっから眺める朝の景色は最高でよ!毎回ここに来る度に見てるんだ」
「そんなにきれいなんですか?」
「あぁ!太陽が上る時の光が差し込む時にさ!あっこの町と海がキラキラ光って見えるんだ!そんな景色が俺は1番好きだな!」
キールさんがすぐ目線の下にある町を指差してくれる
「なるほど、それは是非見てみたいですね。」
「あぁ朝ここから見れば見れるはずだ!」
「では明日見させてもらいますね!」
「おぅ」
「そういえばキールさんの出身はミシルアなんですよね?チーズとか有名みたいですけど、それ以外ってどんな名産の物とかあるんですか?」
「ん?あぁミシルアは時計の町とも呼ばれててよ!時計職人はあちらこちらに居てるな!まぁ食べ物ならミシルアチーズを使ったチーズケーキとかなんせ牛乳やチーズを使った料理は旨かったな!!向こう着いたらご馳走してやるよ!」
「ホントですか?うわぁ楽しみだなぁ〜チーズケーキ〜僕、実はチーズケーキ大好物なんですよ〜もぉ〜あの美味しさといったら。」
「おっ?チーズケーキをわかるやつがいるとは…よし向こう着いたら俺が案内しまくってやるぜ!」
「うわぁ!ありがとうございます!!」
そんなやり取りをしているとレインさんが手招きしているのが見えたので、そっちへ向かった。
「さぁ、お代わりもあるから一杯食べてね!」
レインさんが用意してくれた晩御飯はハンバーグとじゃがバターそれにほかほかのご飯でサラダもたっぷり皿に盛られていて美味しそうだった
「では、手を合わせて〜」
「「「いただきまーす!」」」
「すごくおいしい…これ全部レインさんが?」
「もっちろん!お料理は女の子の特権だもん!」
「確かに料理の腕前は一流だな!」
ハンバーグを頬張りながらガイルさんが言った
「店出したらいけるんじゃないか?」
キールさんが頷きながら言う。
「えー?ホント?じゃお店開いちゃおうかなぁ〜【グリル.レイン!】とか」
レインさんが顔に手を当てながら、店の名前を提案してみた
「前言撤回、やめておけ。二日で潰れる。」
僕もガイルさんも、キールさんの言葉の終了とほぼ同時に首を縦に振った。
「ちょっ!それ酷くない?てか何でタルト君まで!?」
僕は苦笑いでその場を乗り切ったが、心の中ではネーミングセンスのなさに笑っていた。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて就寝時間となった…
「じゃ明日もはえぇし寝るか、おやすみ!」
「おやすみぃ〜」
「おやすみ」
「おやすみなさい。」
そして四人は一つのテントの中で深い眠りに落ちて行った。……
朝、僕は目が醒めてテントから出ると、そこにはすでにキールさんがいた。
「おはようございます。キールさん!」
「お?おはよう。今からだぜ、タルト君!もうすぐだ!」
「今からですか?よかったぁ!もし見られなかったらどうしようって思ってて…」
「確かにな、ただでさえこの山は何かあるって噂だけで誰もこねぇし、来たって一泊してくやつもいねぇ、一泊したからってもレインやガイルみたいに寝てりゃ意味がねぇ!正直もったいないと思うな、間近にこんな良いもんがあんのに…」
「それは言えてますね…あ!見てください!太陽が!」
「あぁ、やっぱしこの景色はいつ見ても最高だな!」
遠くに見える水平線、その更に向こうから上る太陽の光を反射させる。
その光に海の波が赤く彩られる。
その更に手前には港町がある、その町の名前はアフィンと言うらしい。何でもガラス工芸がとても盛んでアフィンの人口の半分以上はガラス職人、アルアにあるガラスは機械加工品以外は全てこのアフィン産らしい。
そしてその町のあちらこちらに飾られているであろうガラス工芸品が太陽の光を鮮やかに反射させていて、その光がさらに太陽を際立たせている。
その景色をキールさんと僕が独占して見ていた。
僕がふと横を見ると、その景色を見るキールさんがすごくかっこよく見えた…
「ホントキレーですね、太陽の光が注して水平線とアフィンの町がキラキラ光って見えて…」
「だな!どうだ?見て良かったろ?」
「はい!初めてこんな景色見ましたよ!ありがとうございました!」
「んなたいしたことしてねぇよ!」
その後は二人で話したり、笑ったり…レインさんとガイルさんが起きてきて、「お前らキモいぞ!」とか言われたけどそれも笑って流せた。
今日の始まりで余り話したことがなかったキールさんと、今まで以上に仲良くなれた気がした。
第四章END
キールさんはほとんど喋らない無口な人ですが、自分に興味があること等には積極的に話すキャラっていう設定にしています。
またこれからのタルト達を書きあげていく上で仲良くなってなくてはならないキャラなので、この話を書きました。
また読んでいただけると嬉しいです。
感想などがいただけましたら、尚嬉しいです(>_<)