~不安~
ども亜差覇蚊です
なんとか10日くらいで更新出来ました
この調子で頑張ろうと思います
「アースタットから遠征に来た。ガイト・ナックルだ」
タルト達はあの戦闘後、特に目だった障害もなくアデンに着くことが出来た。
今はアデンのギルドで到着記録の申請中。
「ガイトさん。記録申請完了しました。御一行様に依頼内容の方をお伝えしますので、こちらに集まっていただいても構いませんか?」
「あぁ、少し待ってくれ。皆、来てくれ」
タルト達は、ガイルの元に集まる。
「集まられた様なので依頼内容についてお話させていただきます。最近、ここアデン近辺の山や湖にて旅行者や行商人が襲撃を受ける事件が多発しています。調査したところ、湖から一際大きな魔力反応が見られた為、それが一連の事件の元締かと……。ただ目撃情報がないもので、探し出せるかもわかりませんし。実際に元締かもわかりません。苦しい戦いになるかも知れません」
「どんな奴かもわからないってことか……。なかなか苦しいかもな」
「魔力反応が強いだけならいくらでもいやがるしな」
ガイルとキールが顔をしかめさせる。
目撃情報がないだけで対策の立てようが無いのが、魔獣討伐のネックになるところだ。
「はい。では作戦開始は明日、明朝に……。こちらが本日のホテルの地図と、パスになります。こちらでも目撃情報をもう一度探してみます」
タルト達はギルドから出ると一先ず宿に向かった。
一休みと今後の動きの確認だ。
「まずは現在地点は言わずもがなアデンだ」
ガイルは地図を取り出し、アデンの位置を指差す。
アデンはアースタットの西側に位置しており、アデンから繋がる流通都市の中心地。
「んで、さっきの話からすると湖から大きな魔力反応があったってことだからまずカゼラ湖で間違いねぇ」
ガイルは指をアデンからレルヴェを通り過ぎ北側のカゼラ湖を指差す。
カゼラ湖は世界に繋がるアクラエム湾に繋がる湖で流通都市であるナシカスとレルヴェの真ん中にある。
またケシラム山から下りてきた魔獣もカゼラ湖の水を飲んでいることもあり、一般人が単体で行動することが禁止されている場所でもある。
「とりあえず明日はレルヴェに向かう。そこで聞き込みしてから対策を立てる。今日はゆっくり休んでくれ。俺はまたギルドに行って情報探しを手伝ってくるからよ」
ガイルが手早く地図を片付け、部屋を出ようとする。
「なら俺も行こう。多い方がいいだろうしな」
キールも、ガイルを追って部屋をでていった。
「魔獣討伐か……。何が相手かわからないのが1番怖いね」
レインが神妙な顔をして呟く。
もともと詳しい情報が揃っていない場合は魔獣討伐の依頼は発生しないのだが今回ばかりは緊急要請としての依頼だった。
「でも仕方あらへんやろ……誰かがやらんとあかんねやし。動けるんなら動かんと」
ハヤテは椅子から立ち上がると、自分の荷物を肩にかけ部屋をでていった。
「ハヤテの言うとおりですけどね。やっぱりケシラム山でのこともありますし」
ケシラム山付近での闘いは、タルト達にとって苦しい闘いだった。
そんな状況で情報のない相手と闘って勝ち抜けるか。その不安ばかりが追い撃ちをかけていた。
「とりあえず。皆さん疲れているでしょうし……僕は部屋に戻りますね」
タルトは荷物を手に取り、部屋を後にした。
~タルト宿部屋~
「明日はレルヴェに行って聞き込み……」
タルトは自分がする仕事をメモしていた。
「湖の魔獣か……。魚型とか水龍型とかだとしんどいかな。でも水場だとそんくらいしか種類いないし……」
タルトは椅子に深く腰掛け、背もたれにもたれかかる。
「僕も調べてみようかな」
タルトは立ち上がると、ギルドメンバー証と財布をポケットに押し込み、部屋を出る。
町に出たタルトはアデンの市場に向かうことにした。
「ここがアデンの市場か。アースタットに負けないくらい賑やかだなぁ」
アデンの中央辺りで開かれている市場では引っ切り無しに大きな声が聞こえていた。
「ここならなにか情報があるかもしれないし……。少し寄ってみようかな」
タルトは市場に入って行く。
市場はレルヴェから入ってくる魚介類やケシラム山で採れる山菜、薬草に医療品含めだいたいの物品が揃いそうな程の物だった。
「すごいや……アースタットもそれなりに揃ってたけどここまではなかったような」
タルトは色んな店に目を向けていた。
そんな一画で人だかりが出来ていた。
「なんだろ……」
タルトは様子を見に近づいた。
その人だかりは1組の男女を中心に出来ていた。
男女はとても怯えた様子で皆のことを払おうとしていた。
「なんであんなに怯えてるんだろ……」
タルトの呟く声が聞こえたのか、隣で見ていたおじさんが声をかけてきた。
「湖で魔獣に襲われたそうだ」
「魔獣ですか……。」
「なんでもナシカスの兵団と一緒に来ていたらしいんだが、魔獣の群れに襲われたそうでな……。可哀相に」
おじさんは視線を男女に向ける。
タルトは意を決して前に踏み出た。
「大丈夫ですか?」
タルトは声をかけてみるが、差し出した手は冷たく弾かれた。
「僕はギルドに所属している。アグスタ=ルートポーンと言います。よければ話聞かせてもらえませんか?」
タルトは極力刺激しないようにゆったりした口調で宥めるように話し掛けてみた。
だが結果は同じで冷たくあしらわれた。
「うーん。ダメか……。」
タルトは途方にくれかけた。
「どうすれば話聞けるかな」
タルトは腕を組み、唸る。
それからタルトは2人にコーヒーを買ってきたり、世間話から入ってみたりと色んな手を尽くした。
時は過ぎ、すでに日が暮れはじめた。
周りに居た人達も帰ったのか、タルト以外には居なかった。
「うぅ……どうしたら話を聞かせてくれるんだろ……。」
タルトは遂に力尽き、2人の横に腰掛けた。
「あっ、綺麗な夕日だ」
タルトは目を細めながら空の彼方を見つめた。
東の彼方に見えるソラス山とクリネル山の間からさす夕日がとても映えて映った。
「あっ……」
ふと小さな声にタルトが振り向く。
隣で寄り添って俯いていた2人が同じように夕日を見つめていた。
「綺麗だね」
タルトはもう一度優しく話し掛けてみた。
2人は少し戸惑いながらも頷いてくれた。
タルトはまた夕日に顔を向ける。
「あの……」
今度は話し掛けられ、タルトが振り向く。
2人はタルトのことを見ていた。
「はい? もぅ落ち着いた?」
タルトの問い掛けに、2人は小さく首を縦に振った。
「アグスタさん……。話いいですか?」
男性は意を決した様に話し出してくれた。
時々思い出すのか、小さく唇が震えていたのが見て取れた。
「ありがとう……。いい情報が集まったよ」
タルトはひとしきり話を聞き、2人に礼を言う。
「いえ、お役に立てられるなら……。どうか、一緒だった兵団の方々の仇を討ってもらえますか?」
男性が一歩踏み出して来る。
タルトは真っ向から向かい合い、頷いた。
男性はホッとしたようでまたその場に座り込んだ。
タルトはたったまま夕日を見つめる。
そしてしばらくしてタルトは2人に別れを告げた。
渡しそびれたコーヒーも渡して。
~ガイル宿部屋~
「僕が聞いてきたのは」
タルトは宿に戻るなり皆を集めた。
集めた情報から敵の大きさの把握等を行うためだ。
「ナシカスの兵団が壊滅……か」
ガイルが腕を組ながら深く唸る。
ナシカスだけでないが、どこの兵団もそれなりに訓練を積んだ強豪だ。
その兵団が壊滅させられるレベルにあることは間違いなかった。
「でもケシラムからの援軍ってのもあるわけだし、ここで相手の戦力を確定しちゃうのはマズイ気がする」
レインも慎重に分析していく。
ガイルの見立てから元締め自体はそこまででかくはない。
理由としては男女の目撃証言からそのようなずば抜けて大きいものが確認されなかったから
もう一つは今までに見られなかったことから周りと大差ない大きさか、少し大きいくらい。
「やけど、いくら今きめるんがマズイいうても向こうがいくら積んでくるなんかわからへんし。ある程度は見といた方がいいやろ。すでにナシカスの兵団が潰されてるんならそれくらいの軍団は簡単に出てこれるってことやろ? なら出来るんならやが雑魚討伐組と元締討伐組で分けた方がいいんかもしらんしな」
皆の意見が交錯しあう。
だがどれもこれと思うものが今一つ出なかった。
「とりあえず……俺の方で作戦を考えてみる。それを明日伝えるから、皆の是非を聞かせてくれ。はやけりゃ明日にも行動開始だから今日は休んでくれ。」
ガイルは自分の机に資料を乗せると奥に入っていった。
タルト達もそれぞれの部屋に戻って行く。
「はやかったら明日……。」
タルトは言いようのない不安で一杯だった。
昨日よりも圧倒的に情報が増えたが、そこからはまだ対抗策らしいものは出ていない。
「だけど……」
タルトはギュッと拳をにぎりしめた。
「約束したんだ……。仇を討つって」
兵団と共に襲われた2人との約束
「よし……」
心に一喝し、頑張ろうと決心した。
いかがでしたか?
次話あたりに戦闘に入るかと思います
ただ自信ないや(ーー;)
頑張ってみます(ーー;)