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第1話 寿司食いねェ!

86伝説エーペックス、アドバンテイルシリーズなどのクロスオーバー作品が開幕!

その瞬間だった。


山奥にひっそりと佇むはずの元気寿司は、すでに現実の地図から消えていた。

杉林の奥、霧に包まれた石段の先。

そこに「店」があったという記録だけが、古文書と噂話の中に残されている。


七賢人の試練。

技、心、礼、覚悟、空腹、笑い、そして――元気。


それらすべてを満たした者だけが、回転する皿の音を聞くことができた。


だが今、その店主はもう、そこにはいない。


イロハの胸の奥。

鼓動と感情の隙間。

そこに、元は沈んでいた。


世界から切り離されたような、白と黒の境界。

寿司下駄も、包丁も、カウンターもない。


あるのは、声だけ。


元「……時間がない」


イロハ「そんな……! 元さんがいなくなったら、元気寿司は……!」


元「店など、どうでもいいと言っただろう」


静かだが、強い声だった。

かつて七賢人すら黙らせた、あの声。


元「寿司は“場”じゃない。“想い”だ」

元「それを継げるのは……今はお前しかいない」


イロハは唇を噛みしめる。

まだ中学生。

部活と宿題と、少しの反抗期しか知らない少女。


イロハ「……無理だよ。私、ただの……」


元「違う」


その言葉が、雷のように落ちた。


元「お前はもう、ただの人間ではない」

元「私と融合した瞬間から――」


世界が、ひっくり返る。


ドン……ッ。


イロハの背後で、見えない何かが回転を始める。

皿が流れる音。

シャリを握る感触。

火照る手のひら。


その名を告げた瞬間、

イロハの視界が朱色に染まった。


元「怒るな。折れるな。止まるな」

元「元気を失った世界に……寿司を、回せ」


イロハ「……元さん」


拳を握る。

その小さな拳に、かつて七賢人が恐れた“元気”が宿る。


イロハ「わかった……!」


そして――


イロハ「私が、回す!!!」


回転寿司の神話は、ここで終わらない。

孤高の山奥から始まった伝説は、

今、少女の心臓とともに再び回り始めた。


イロハ「元さん……ッ!」


声が震えた。

足元の感覚が、少しずつ遠のいていく。


元「大丈夫だ……」


低く、確かな声。

それは励ましではなく、約束だった。


元「俺は4なねェ」

元「お前の体と……ひとつになるんだからな……」


イロハ「え……?」


その瞬間――


胸の奥が、熱くなった。


焼けるようでもあり、

包まれるようでもある、不思議な感覚。


心臓の鼓動に、もうひとつのリズムが重なる。


元「力を貸すだけじゃない」

元「考えも、勘も、覚悟も……全部だ」


イロハ「ま、待って……!」


遅かった。


――――――――――


ゴォォォ……ッ


音なき回転。

世界が、裏返る。


イロハ「きゃああああああ!!!!!」


叫びと同時に、視界が弾けた。


白。

黒。

朱。


シャリの温度。

刃の冷たさ。

湯気の匂い。


知らないはずの感覚が、

知っているものとして流れ込んでくる。


元「落ち着け、イロハ」

元「深呼吸だ。寿司を握るときと同じだ」


イロハ「す、寿司なんて……!」


元「いいから……感じろ」


次の瞬間、

イロハの足が、地面を踏みしめた。


倒れない。

揺れない。


背筋が、すっと伸びる。


イロハ「……あれ?」


視界が、やけに澄んでいた。

遠くの気配。

人の感情。

元気の“流れ”。


全部、見える。


元「な?」

元「守るって言っただろ」


イロハの胸の奥で、

元は静かに笑っていた。


元「お前はもう、一人じゃない」

元「すし元気マンKだ」


イロハは、ゆっくりと拳を握る。


少女の手。

だが、その奥には――

七賢人すら認めた、元気の神髄があった。


イロハ「……元さん」


小さく、しかしはっきりと。


イロハ「一緒に……回そう」


世界はまだ、元気を失っている。

だがその中心で、

回転は――確かに始まった。


しかし――

そこに、元の気配はなかった。


胸の奥にあったはずの声。

あの低くて、少し乱暴で、でも不思議と安心できる存在。


……いない。


静寂だけが、イロハの内側に広がっていく。


イロハ「元さん……」


呼びかけても、返事はない。

寿司下駄の音も、包丁の気配も、もう聞こえなかった。


代わりに残っていたのは――

力だった。


確かにある。

確かに宿っている。


けれど、それは“声”ではない。

導きでもない。


託されたものだ。


イロハは、ゆっくりと立ち上がる。

膝は震えていたが、足は止まらなかった。


イロハ「……そっか」


小さく、息を吐く。


イロハ「元さんは……もう、全部くれたんだ」


風が吹く。

山奥の霧が、わずかに晴れる。


イロハの視界に、回転する“流れ”が見えた。

人の元気。

星の鼓動。

銀河の呼吸。


それらが、止まりかけている。


イロハは拳を握りしめる。

今度は、迷いなく。


イロハ「……私が回すよ!」


声が、山に反響する。


イロハ「この世界……いや……」


一瞬、空を見上げて。


イロハ「銀河も!!」


その言葉と同時に、

イロハの背後で――見えない皿が、再び回り始めた。


元はいない。

だが、元気はある。


それは、誰かに守られる物語じゃない。

受け取って、走り出す物語だ。


すし元気マンKの伝説は、

ここから本当の意味で――

少女ひとりの意志によって、動き出した。


寿司元気マンK

寿司元気マンシリーズ10周年初代リメイク

製作者 SAI


あれから数ヶ月――。


山奥の出来事は、夢だったかのように遠ざかり、

季節は静かに巡っていた。


イロハは、中学生として学校に通っている。


何も知らない顔で。

何もなかったように。



---


朝8時。


薄いカーテン越しの光が、部屋の床に斜めに差し込んでいる。

目覚ましは、とっくに鳴り終わっていた。


イロハ「ふああ……」


大きく欠伸をひとつ。


イロハ「……おはよ……寝坊した……」


布団の中で、もぞりと身を起こしたその瞬間――


ワンちゃん「8時かよッ!!」


突然の大声。


ワンちゃん「寝坊しすぎだよ!!イロハッ!!」


イロハ「ひゃっ!?」


布団から跳ね起きる。


イロハ「あ、あ……やば……!」


時計を見る。

秒針が、やけに冷酷だ。


イロハ「あと15分で……遅刻!!!!」


制服をひっつかみ、

靴下を探し、

髪を適当にまとめる。


日常。

どこにでもある、慌ただしい朝。


けれど――


この家には、大人の気配がない。


キッチンは静か。

玄関も、誰もいない。


両親は、海外へ行ったきり。

もう何十年も、帰ってきていない。


連絡はある。

仕送りもある。


でも――

この家で、イロハを起こす声は、もう存在しない。


ワンちゃん「ほら!パン咥えて走るやつだろ!」

イロハ「そんな漫画みたいなこと……!」


言いながら、

トーストを口にくわえる。


イロハ「……やるしかないか」


玄関を飛び出す瞬間、

胸の奥が、ほんの一瞬だけ――熱を帯びた。


声はしない。

名前も呼ばれない。


けれど、確かにそこにある。


イロハは立ち止まらない。


イロハ「……大丈夫」


自分に言い聞かせるように。


イロハ「私、ちゃんと回してるよ」


少女は走り出す。

通学路。

普通の朝。


だがその背中には、

誰にも見えない“流れ”が、静かに渦を巻いていた。


世界は、まだ知らない。


この寝坊した中学生が――

銀河を回す存在だということを。


イロハ「小鈴……そろそろ行くから……」


玄関で靴を履きながら、振り返る。


イロハ「――って、着いてくんなぁぁあ!!!!」


ばたばたと足音。

白い毛並みが視界を横切る。


小鈴「行くに決まってるでしょ!!」


イロハ「決まってない!!」


イロハはドアを開け、外へ飛び出す。

その瞬間、足元をすり抜ける影。


小鈴「ほら!遅刻するよイロハ!」

イロハ「それを言うなら止まれぇぇ!!」


――この子は、小鈴。


ワンちゃん。

まだ1歳。


なのに――喋る。


しかも、やたらと元気で、やたらと口が悪い。


イロハは走りながら、ため息をついた。


イロハ「……なんで、犬が説教してくるんだよ……」


小鈴「犬じゃない!」

小鈴「相棒!」


イロハ「なお悪い!!」


数ヶ月前のこと。

元が消えた、その直後。


混乱の中で、最初に声をかけてきたのが――

この、小さなワンちゃんだった。


小鈴「ヒーローやりなよ」


あまりにも軽い口調で。


イロハ「……は?」


小鈴「元気余ってるでしょ、あんた」

小鈴「だったら使えばいいじゃん。世界のために」


まだ子犬のはずの存在が、

まるで全部わかっているような目で、そう言った。


イロハは、今でも覚えている。


あの時の背筋の寒さを。


イロハ「……あんた、何者なの?」


小鈴「小鈴だけど?」

小鈴「年齢?1歳!」


胸を張って言われた。


イロハ「年齢の問題じゃない……!」


それでも――

イロハは走るのをやめない。


学校へ。

日常へ。


ヒーローをやりながら、

普通の中学生として生きるために。


小鈴「ほらほら!信号変わる!」

イロハ「うわっ!」


交差点を駆け抜ける二つの影。


誰も気づかない。

この少女と子犬が――

世界の“回転”を支えているなんて。


イロハは歯を食いしばり、前を向く。


イロハ「……放課後は絶対話すからね、小鈴」

小鈴「いいよ!」

小鈴「今日も事件、起きそうだし!」


その言葉に、

胸の奥の“流れ”が、わずかにざわめいた。


元はいない。

でも――


回転は、止まっていない。


すし元気マンの物語は、

学校のチャイムとともに、

今日も静かに――加速していく。


小鈴「ボクは今日も付き添うんだよ!ヒーローに遅れは許されないんだぞッ!!」


イロハ「私は中学生!ヒーローじゃないッ!!ていうか、誰がヒーローやらせたのよッ!!」


小鈴「お前がこの前、寿司の魂と融合したからだろうがぁぁぁ!!」


イロハ「それ元さんの魂だし!!てか、あれ事故だし!!」


口げんかしている時間も惜しい――そう思った矢先、

町の方角から、耳を劈くような悲鳴が空気を裂いた。


民間人「きゃああああ!!!アクアデビルにシャドーデビルだァァァァ!!!!」


その瞬間、イロハと小鈴の背筋に電流が走る。


地鳴り。

揺れる建物。

街の方角から、黒い瘴気と青い水柱が天を突く。


イロハ「なっ……!まさか、あれは……!」


小鈴「間違いない……水属性のアクアデビルと、影の力を操るシャドーデビル……!まさか、同時に来るなんて!」


トイプードルの体に、不思議な青白い光が走る。

瞳が一瞬だけ、銀色に変わった。


小鈴「大変!!!今だよ!イロハ!!ぎゃああああああ!!」


イロハ「え……でも遅刻……」


小鈴「いいから早く……!学校より命が大事でしょォォォォ!!!!」


次の瞬間、小鈴のもふもふの尻尾が、イロハの制服の裾をバッと咥える。


イロハ「ちょ、ちょっと小鈴!?スカート引っ張んないでええええ!!!」


小鈴「変身するの!イロハ!はやく!!!」


イロハ「くううう……分かったよおおお!!!」


その場で、彼女は深呼吸を一つ。


イロハ「いっくよぉぉぉぉおおお!!!!元気ぃぃぃぃぃィィィ―――」


地面が震える。


空間が揺れる。


イロハ「――全開寿司ィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」


光が爆ぜた。


寿司魂との契約――それが、少女を変える。


次の瞬間、銀河の果てから取り寄せたようなスシマスクが宙に浮き、

イロハの制服が変化しはじめる――赤、黒、そして金色。

彼女の手には、マグロのように輝くブレード。

その名も――「トロ斬刀・極」


イロハ「すし元気マーーーンッ!!!K、出陣!!!!」


小鈴「なにそれきっしょ!!」


イロハが渾身のポーズを決めた瞬間、横から冷たい声が飛んだ。

その声の主は――もふもふの白いトイプードル、小鈴。

見た目はただの犬。だけど、口を開けば毒舌全開。


小鈴「だからさぁ、そういうネタに逃げるのやめよ?ほら……いつもの魔法少女ヒーローでいきなってば!!」


イロハ「い、いやでも、今日は気分がこっちだったっていうか……」


小鈴「だまらっしゃい!!!黄色い服ッ!!黄色ッ!!」


小鈴が咥えて放り投げたのは――ヒーロー服の変身アイテム、通称**“ライトブーストスーツ・Type.Y”**

レモン色の生地に黒のラインが走り、背中には小さな羽のような装飾が付いている。


イロハ「くぅぅ……やるしかないってことね!!」


手をぐっと胸に当てる。


イロハ「――光よ、私に力を!変身ッ!!」


眩しい光が走った。

制服の上から衣装が重なり、次々と魔法の回路が身体中に展開されていく。

リストバンドには時計型のチャージャーが光を宿し、髪の毛がふわりと跳ね上がる。


その姿はまさに――


イロハ「イロハマン!ここに見参ッ!!」


小鈴「よし、よし、その調子!!やればできるじゃん!!」


尻尾をぶんぶん振りながら、小鈴が宙に飛ぶ。

手足をジタバタしながらも、しっかりイロハの肩に着地。


小鈴「よし、じゃあいくよ!まずはシャドーデビルから潰すッ!!あいつは見えにくいけど、足音で位置を――」


イロハ「ちょっと待って!わたし今日……体育あるんだけど!!」


小鈴「そのまま出ていけば先生もビビって出席扱いになるって!!!」


イロハ「そんなバカなああああああああ!!!!」


そう叫びながらも――イロハの足は、街の方角へと向いていた。

空には不穏な雲が立ちこめ、濃い黒煙と冷たい風が町の中心から吹き始めていた。


小鈴「走れ!!黄色い光の魔法少女ヒーロー!!君の名は――イロハマンッ!!!」


イロハ「せめてもうちょっと名前かっこよくしてよおおおお!!!!」


イロハが街へと駆け出していったその時。

朝の澄んだ空気に混じって、ほんのりとした桜の香りが舞いはじめていた。


それは、町はずれの古い送電塔の上。

誰にも見つからない場所に、ひとりの少女が立っていた。

ピンク色の髪が風に揺れ、耳元には、ふわふわのうさぎ耳。

頭には、まるで“ドミノ”のような不思議な王冠。

もこもこのアウターに包まれた細い体は、イロハと同じくらいの年頃。

だけど、その表情はどこか静かで、どこか達観していた。


彼女の周りの空気だけが、やわらかく淡い。

その場にいるだけで、桜色の風が優しく吹き抜け、

まるで時間の流れがひとつ、ゆっくりになったようだった。


???「ここが……この時代の、"交差点"……」


誰に話しかけるでもなく、少女は目を細めた。

視線の先――光を纏って駆けていく黄色のヒーロー、イロハ。

その姿を、まるで懐かしむように見つめていた。


???「あの子の光は……うん。やっぱり、甘くて強い」


ふわり、と少女の耳がピクリと揺れる。

彼女の足元に、まるで見えない花びらが舞い落ちていた。

でも、その桜は本物じゃない。

ただ、彼女の存在がそこにあるだけで――この世界に"春"が吹き込まれる。


???「……でもまだ、足りないんだよ」


彼女の小さな手が、胸の前でそっと結ばれる。

その中で淡く光る、透きとおったピンク色の石。

それは、まるで心臓の鼓動に合わせて優しく脈打っていた。


???「待ってて……イロハちゃん」


「あなたが"あの扉"に近づいたとき、きっと――また、会えるから」


少女はくるりと踵を返すと、送電塔の上からふわりと舞い降りた。

その背後に、甘い風の流れと、桜の残り香だけを残して。


――誰もまだ知らない。

彼女が、この世界の「もうひとつの春」だということを。





SAIです。明けましておめでとうございます。

2015年に制作していたシリーズをリメイクすることになり86伝説のキャラも出すことになりました。

伊藤くんがファンタジーの世界に?をイメージしながら制作しています。

今年は花ちゃんのストーリーも本格的に初めていきますのでよろしくお願いいたします!!

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