表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説

朝起きたら、庭がネコのフンだらけになっていた

作者: 歌池 聡


※しいなここみ様主催『朝起きたら……企画』参加作品です。



 朝起きたら、庭がネコのフンだらけになっていた。

 えっ、何だこれは──!?

 俺は言葉を失ったまま、パジャマ姿の妻と困惑した顔を見合わせた。






 団地住まいから、念願の一戸建てに転居して3年。実際に住んでみると、憧れていた頃には気づかなかったマイナス面も色々見えてきた。

 まず、何と言っても虫が多い。庭の花を目当てにチョウやハチがやってくるし、それを狙ってクモがあちこちに巣を張る。

 そして、もうひとつが野良ネコによるフン害。数か月に一度くらいの頻度だが、ネコのフンが庭に残されているのだ。

 まあ、そんなに回数は多くないので、たまたま通りすがりにやられてしまったのだろうと、これまであまり対策は取ってこなかった。


 だが、今朝の光景はあまりにひどい。何十匹ものネコが集まったかのように、そこここにフンが残され、花壇の花もだいぶ踏み荒らされている。

 それこそご近所中の野良ネコが集まって、ウチの庭で月見の宴でも開いたんじゃないかという惨状だ。


 そういえば、このごろ近所で妙に野良ネコが増えたような気はしていた。

 これは、早急に対策を講じないとマズいかもしれない。






 朝食を食べてから、まずはフンの片付け。ウチの自治体では可燃ゴミで出せるので、二重にしたゴミ袋にまとめて、ゴミステーションまで持っていく。

 そして、近所のホームセンターが開く時間を待って、対策グッズを買いに妻と出かけた。


 ネコ除けには、大きく分けてふたつのやり方がある。ネコが嫌がる臭いを出す忌避剤を撒くか、超音波を発する装置を置くか、だ。

 いや、あれだけの被害だ。もう両方やった方がいいんじゃないだろうか。

 そんなことを話し合いながら、売り場の園芸コーナーに向かったんだけど──。


『……どういうこと?』


 なぜかネコ対策グッズは完全に品切れだった。ネズミやカラス用の対策グッズは普通に並んでいるのに。


 あと2軒ほど他のホームセンターにも行ってみたが、やはり売り切れだ。


「これはどういう現象なんだ?」

「うーん──あっ、あの店員さん、ご近所の奥さんだわ。何か知らないか聞いてみる!」






 妻が聞いてきたところによると──。

 どうやら、事態は俺たちが思っている以上に深刻だったらしい。


 ──隣の町内に『ネコばあさん』『ネコばばぁ』などと呼ばれる独居老人がいた。

 近所の野良ネコを集めて勝手に餌付けしたり、家にはネコが出入りするのも自由にしているなどでほぼ『ネコ屋敷』と化しており、ご近所さんにはとても迷惑がられていたそうだ。

 先日、そのばあさんがぽっくり逝ってしまった。するとその家を相続した親族は、殺虫剤などで家の中のネコたちを追っ払い、あっという間に家を壊して更地にしてしまったのだ。

 ボロ家を維持するより、その方が売るにも再利用するにもやりやすいからだろうけど。


 そして、行き場を失った大量の野良ネコたちは、新たな居場所を求めてご近所を徘徊しているんだとか。






 俺と妻は急いで車を走らせ、ネコ対策グッズを求めてより遠くのホームセンターを廻った。

 ──マズいマズいマズいっ!!

 これだけ売り切れが続くということは、もうご近所さんのほとんどがネコ対策を済ませているに違いない。


 ウチはご近所づきあいを面倒くさがって疎かにしていたので、情報が回ってこなかったのだろう。


 もし、このままウチだけが何の対策もしないうちに、野良ネコたちに自分たちの縄張りだと認識されてしまったら──!?






 夕方。隣の県まで足を延ばし、十数軒回ってようやく目的の品をゲットした俺たちは、疲労困憊で家に辿り着いた。

 だが、休んでいる暇などない。すぐにでも対策を講じなければ!

 俺は家の前の道路で車を一旦止め、バックでガレージに入れようとしたんだが──。


「うわ、ガレージにネコがあんなにたむろしてる!」

「見て! 庭にも屋根の上にも、ネコがあんなに!?」


 何十匹どころじゃない。ウチの敷地を埋め尽くすほどの大量のネコがひしめき合い、俺たちをじっと見ているのだ。近くにいるネコたちは毛を逆立て、威嚇の声をあげ始めている。


 ──これって、今から忌避剤を撒いても効果あるのか? いや、それ以前に、庭に近づくことすらできないんじゃないのか!?


 わ、我が家がネコに乗っ取られてしまった!!


 そうこうするうちに、一匹の大柄な三毛ネコがボンネットに乗り、フロントガラス越しに威嚇してきた。爪を立て、フロントガラスの俺の顔のあたりを何度もひっかいてくる。


 俺はとっさにワイパー・レバーを操作した。吹き出すウォッシャー液とワイパーの動きに驚いたのか、そのネコがボンネットの横にあわてて飛び降りる。

 今だっ!

 俺は車を急発進させた。手ごたえはないので、たぶん轢いてはいないはずだ。

 

 とにかく、ここから離れなきゃ危険だ。


 俺は、真っ青な顔でガタガタ震えてる妻の手を握りながら、片手で車を走らせた。


 ええと、とりあえずしばらくは、妻の実家に避難させてもらうとして──。

 でも、これって保健所とか警察に電話したところで、どうにかなるんだろうか……?






ちょっと企画の意図とはズレてるかも。

いやね、猫に恨みがあるとか猫嫌いというわけじゃないんですよ。ただ、ちょっとフンガイする出来事があったもので……(^^;


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最近、最愛のフェレットくんの糞害に悩まされておりますので、タイムリーでした
 これ、なんでみんな個人で対策をしてるの?  そこまで保健所や役職は後手に回ってるの?  もしかして動物保護団体が暗躍している?……ってのはないにしてもこれまではちょっと極端ですよね。正に悪夢。  変…
・・・。 バイクのシートに荷物を入れるボックス。 猫の糞とション便だらけにされました・・・。 知らずに猫の糞を掴んだ時の感触が地獄でした・・・。 「ねこ自慢」という番組を見るまでは暫く猫…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ