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2-4

ビル内部は長い廊下だった。

窓が無く天井の灯りも薄暗い。

強いていえば、扉を開けた光が入ってくるぐらいだ。

奥に行くにつれて何も見えなくなってくる。

「変ね」

「何が違和感なんだ?」

「見て」

「ん?」

俺は言われて気づく。

それは地面に落ちた破片だった。

「上を見て」

「これは」

ビルの監視カメラが破壊されていた。

ここは敵の巣なのだと実感させられる。

「準備は出来てるって訳ね」

「にしても暗いな…」

俺はスマホで廊下を照らす。

「ダメ!」

「っと」

あらいにいきなり引っ張られる。

すると、目の前を弾丸が通り過ぎたように見えた。

「平気?」

「あ…あぁ…でも何で」

「部屋の内部を暗くしていたのはこちらが明かりを使うのを待ってたのよ」

「目印を向こうから出してくれるまで待ってたって訳か」

「そういうことよ。

銃を常に構えて、スコープに収まったならば撃つ。

敵はその瞬間を狙ってたのよ」

「俺だけだったら死んでたな、悪い迷惑をかけて」

「いいのよ、そのために一緒に戦ってるんだもの。

気にしないで」

「あらい…」

「それよりも応戦しましょう」

「分かった」

「身体は出さずに、銃だけ出して撃って。

敵に確実に当てることを考えるよりも、命大事によ」

「了解」

俺は拳銃で応戦。

2発撃ちこむ。

これで残り10発か。

「私も行く」

あらいは廊下の奥を目がけて、銃口を構える

引き金を引いて、弾の節約のために3秒間だけ。

薬莢が雨粒のように地面に降り注ぐ。

拳銃とはえらい違いの弾の消費量。

敵が扉の中へ入っていくのが見えた。

倒した実感はまるで無い。

「追跡しなくては」

俺は先ほど迷惑かけたこともあり頑張ろうと思う

「気張らなくてもいいのに」

あらいはそのことを察したのか微笑んでくる。

「俺が先に行く」

「ダメ」

「何故だ」

「貴方は記憶がないんでしょう?」

「まぁ、そうだけど」

「それって経験が無いのと同じでしょ」

「それは」

否定できなかった。

「私の方が記憶がある訳だから経験が上だわ」

「でも、危険だろう?」

「逆に私が先に行った方が安全なの、それとも記憶が戻った?」

「いや…」

記憶は残念ながら戻ってない。

しかし、あらいが先に入るのは危険に思えた。

敵がもしも扉を開けてすぐに撃ってきたら、当たるのはあらいなのだから。

「もしも私が死んだら敵の位置を把握して、

必ずやり返して、いいわね?」

「待て、あらい!」

あらいは扉に急接近して、

敵が入ったと思われる同じ場所に入る。

「くそっ」

俺は遅れて突入する。

扉を開けてすぐに横に回転しながら銃を構える。

無駄な動きかもしれないが、

そのまま立ち尽くしてるよりも狙われないと思った。

景色が目に入ってくる。

そこは部屋の中は狭い室内だった。

使い古された雑誌ラック。

低く鳴る換気音、かすかにインスタント食品の匂い。

そして、地面に散らばった漫画

そこはネットカフェだった。

「なるほど、ここに籠城した理由が分かったわ」

あらいは何かに気づいたようだった。

「なんだそれは」

「敵がここに籠城できる理由。

それは食べ物が豊富、立地が高層階、外部が見渡せる。

窓はダンボールで遮光と射線対策をしてる。

恐らく、狙撃警戒してるだわ」

「随分と作りこんでるんだな」

「それに見て」

「なんだあれ」

漫画本が積まれてバリケード化していた。

バリケードはドリンク、キッチンなどに集中。

使用済みの寝袋があり、その周辺には歯ブラシとコップが。

「ここでずっと生活をしつつ、敵が来るのをじっと待ってたのよ」

「なんだって、そんな引きこもり生活を」

「勝つためよ、それ以外にないわ」

「…」

現代において引きこもりは怠惰の象徴だと思う。

しかし、戦闘に置いて引きこもりは立派な戦術の1つなのだ。

勝つために、じっと口を開けて待つ。

それは深海魚のように。

「そこだ…」

それは俺でも無い、あらいでも無い。

第三者の声だった。

漫画雑誌の山からキラリと何が光る。

俺は叫ぶ

「狙われてるぞ!」

「くっ」

あらいは身を低くして避ける。

「平気か?」

俺は慌てて駆け寄る。

「少しかすった程度よ、心配ないわ」

「そうか」

俺はホッとする。

敵の作ったバリケードを利用してこちらも隠れる。

「けど、漫画雑誌のバリケードが厄介ね」

「あぁ、思うように近づけない」

通常の方法では難しいかもしれない。

「私が思うに、敵の心理は遠くに居たい」

「スナイパーだから一定の距離はキープしたいんだろ?」

「えぇ、そうね。

だから接近すれば逃げると思う」

「だが、近づかなければこちらの攻撃は当たらないぞ?」

「分かってる、だから案を出すわ」

「案?」

「二手に分かれましょう」

あらいが提案してくる。

「それって囮役と接近役…ってことだよな?」

「そうね」

「…」

どっちをやる?

危険なのはどっち?

多分、囮役だ。

敵に目立つ必要があるから。

「私が囮役をやるわ」

「どうしてだ、逆じゃないのか?」

「私はレンを犠牲に出来ない」

「可笑しいだろ、俺とお前はただの共闘関係の間柄だろ?命をかけるなんて間違ってる」

「そうかしら、ひとめぼれだってあるわ」

「バカなことを言うな」

「それじゃ、どうするの?」

「俺が…やる」

彼女に囮役なんてさせる訳に行かない。

「だけど」

「俺は信じてる」

「え?」

「俺が撃たれるよりも早く君が敵を撃てると」

あらいの目を真っすぐ見つめる。

「任せて」

作戦は決まった。

後は実行するだけだった。










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