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最終話


真っ白な空間に戻ってくる。

食卓だけしかないこの世界へ。

上様と俺の2人きりの世界。

「どうだったかな」

上様は感想を求めて来る。

「復活を自分ではなくてあらいに出来ないのか?」

「NO、それは運命につばを吐く行為だ」

「運命に…つばを吐く?」

俺は上様に拒否された。

「バトルロイヤルを企画したのは言うなれば、ミスが始まりなのだよ」

「ミス?」

「せいなは死を操作できる超越した存在。

だが、あくまでも死を操作できるだけだ。

人間と同じように間違えもあるのさ。

本来ならば死ぬ予定では無かった君のような存在がね」

「俺…だと?」

「だから機会を与えることにしたのさ。

バトルロイヤルに勝利した人間に復活をね。

せいなは確かめたいんだ。

それは運命の死か、事故による死か。

生き返った人間は事故だと決めつけて復活。

それがバトルロイヤルを始めた理由さ」

「あらいが俺を庇ったのは偶然によるものだ。

だから…あらいを生き返らせてくれ…事故なら復活なんだろ?」

恋人だった彼女を生き返らせたい。

2人でBBQをしたり、空き家に泊まったりした。

そして…風呂にだって一緒に入ったんだ。

思い出が沢山ある。

何も特別なことじゃない、ただの時間。

でも二度と戻らない。

その現実を思い知らされるたびに、胸が軋む。息が詰まる。

それでも俺は願ってしまう。彼女だけは、戻ってきてほしいと。

「運命は君を選んだ。

彼女がどんな意思を持ち、どんな行動をしようとも、この場に立ってるのは君だ。

よって君を生き返らせる」

「選択肢は与えてくれないのか?

俺が生き返るか、彼女が生き返るかの問いは無いのか?」

「それを認めてしまうと故意になる。

それは偶然ではなく必然になり、せいなの求める事故でも無ければ運命でもない退屈なものになってしまうからね」

上様は俺を追い出そうとしてくる。

「待ってくれ…話はまだ終わってない」

俺は置いていかれる気がして焦りの気持ちが湧いて来る。

「せいなは忙しいんだ。

君は知らないのかい?

この世界では一日に何百万を超える命が、

瞼を閉じた瞬間に消えるんだよ。

だからね、君に構ってられない…さようならだ」

上様は強引に主人公を別の扉に突き飛ばす。

「上様ーーーーーーーっ!」

星空に囲まれた宇宙のような世界に、俺は押し込まれた。

無重力のように足元が定まらず、吐き気すら覚える。

それでも、気がつけばいつしか

現代風な街並みに辿り着いていた。

交差点の真ん中で人が往来してる中、

上下スウェット姿の俺が座り込んでしまう。

俺は、帰ってきてしまったんだ。

あいつを置いて……俺だけが。

胸が重い。

昼間の光が輝く世界なのに、

酷く苦いものが口の中一杯に広がっていく

あらいの香りが街に香ってる気がした。





それは、枯れ木に囲まれた古びた教会だった。

人は誰もおらず寂しいモノだった。

俺は静かにその裏手へ回る。

そこには広がる墓地があった。

俺はひとつの墓石の前に、

グラジオラスの花束をそっと添える。

(グラジオラス――花言葉は”勝利”)

灰色に染まった世界の中で、

花だけが鮮やかな色を放っていた。

ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。

彼女、あらいが使っていた香水と同じ香りだ。

その時、背後から足音が近づく。

「何をしてる?」

スーツを着た男が警戒した表情で俺に声をかけた。

「恩人へ墓参りをしてるのさ」

「なに?」

「ここに眠るのは、俺の命の恩人だ」

俺はゆっくりと振り返り、静かに答えた。

「何を言ってるんだ、お前は」

彼の眉が険しくなる。

声には戸惑いが滲んでいた。

「変か?」

俺は少しだけ笑った。

口元に出かけてた言葉を胸の中に戻す。

喉が一瞬だけ焼けるような痛みがあった。

「いや…君は誰かと勘違いしているんじゃないか?」

彼は探偵に尋ねるように俺に確認してくる。

「遠野あらい…そうだろ?」

俺は、ためらわずに名前を告げた。

「確かにそうだが…どうして名前を知っている」

彼は驚きの色を隠せなかった。

その所為でストーカーを見るような眼で俺を見つめる。

「だから言ったろ、命の恩人だと」

俺は目を伏せ、言葉を濁す。

「絶対に変だ。ここに眠るのは流産した子だ。命の恩人なんて、ありえない。もしかして…からかっているのか?動画でも撮ってるんじゃないのか?そうだ…絶対そうに決まってる。人の不幸を利用して再生数を稼ごうとしてるんだろう、そういう人間がこの世に居るのは知ってる。

君も、そういう類と同じなんだろう?」

苛立ちが彼の声に混じる。

俺も事情を知らなければ、

きっと同じように疑っただろう。

だが、俺は全てを知っている。

本来なら彼女は、俺の代わりに生き返るはずだった。

しかし、運命は残酷に変わり、俺だけが戻ってきたのだ。

「それでも…それでも、俺は助けられたんだ」

声が震え、感情が溢れ出す。

どこかに届いてほしいと願うように。

全てを話して、理解してもらいたい。

しかし、きっと理解はされないだろう。

そんな諦めの感情が、胸を締めつける。

「何を言っているんだ…いい加減にしないと警察を呼ぶぞ」

男は呆然としながらも、なお疑念を抱いていた。

「お前は知らなくていいことだ」

俺はその場を後にした。

「一体、あいつは何者なんだ…」

スーツの男は不満げに首を傾げていた。

俺は車が行きかう交差点を通り、

築40年は経っただろう、古びたアパートに向かう。

「ただいま」

誰も居ない部屋に俺は声を投げかける。

あの人はもう居ないけれど、

俺は生きてる、いや生き続けなければならない。

テーブルに座って冷めた歯ごたえのある唐揚げ弁当を食べるのだった。

家に電子レンジが無いから、そうしてる。

コンビニで利用できるが少し遠いから帰る途中で冷めると思ったのだ。

自分の好物で、身体に悪いと彼女に怒られたっけ。

きっと死んだら、もっと怒られるだろうな。

そんなことを考えながら食べ続けるのだった。




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