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2-1「もしネットカフェで銃を持ってる人の前で珈琲を飲んだら」

個室で休んでる時だった。

「おはよう」

「おわっ」

いきなり女の子の顔が目の前にあったので驚く。

思わず飛び上がる。

「元気そうでなにより」

「顔を近づけないでくれ、キスしそうになる」

「次から気をつけるわ」

あらいは飄々としてる。

「もう一回やりそうだな」

彼女は俺の言葉を聞き入れる性格には思えなかった。

「何か持って行くものはある?」

「銃の弾を入れて欲しい。

仲間だって認めてくれたんだろ?」

「そうね、いいわ」

あらいは弾を渡してくる。

全部で12発だった。

「これが弾か」

「怖い?」

「暴力の象徴だからな、怖くないわけが無い」

「そう」

「しかし、なんだな」

俺は拳銃にスムーズに弾を入れる。

「慣れてるわね」

「あぁ…何だか以前にもやってた気がする」

「軍人だったのかも」

「そう…なのかな」

スライドを引いて、チェンバーに弾を装填する。

これで発射準備は出来たということだろう。

「頼もしいわね、裏切らないでね?」

「あぁ」

彼女の目的を知ったら裏切る可能性はあるがな。

でも、逆に共感してしまうかもしれないが。

「外に出ましょう」

「分かった」

空は明るく太陽が昇ってる。

かなり蒸し暑い。

「むしむしするわ」

「スウェットが皮膚と癒着しそうだ」

アスファルトが熱をためこみ、

地面から湯気のような空気が立ち上る。

蝉の声が、さらに暑さを煽るように鳴き響く。

「行きましょう」

「何処に行くつもりだ?」

「市街地よ」

「何のために?」

「こんなに暑いんですもの、喉が渇かない?」

「確かに」

「それに昨日から何も食べてないでしょ」

「そうだな」

「行かない理由はある?」

「無いな」

「それじゃ、行きましょう」

「だが、金は持ってないぞ」

「どうせ人が居ないんだもの、盗ってきましょう」

「それもそうか」

俺たち以外誰も居ない世界だからこその自由だろう。

人は罪を与える人が居なければ、

どんどん罪深くなる生き物なのかもしれない。

なんてことを考えていた。

俺たちは市街地に入る。

「あれは」

あらいは何かに気づく。

「どうした」

俺は何が起きたのか分かってなかった。

「ちょっと確認させて」

あらいが近づく。

するとそこには不気味な砂の山を見つける。

それは30cmほどの小さなものだ。

この町は砂漠に囲まれてる訳ではない。

公園でも無い。

公園ならば子供が砂場で山を作った。

という可愛らしいものかもしれない。

しかし、ここは都会のど真ん中。

にも関わらず砂の山が出来てる。

「これは一体…なんだ?」

そう、疑問に感じてる時だった。

あらいが答えを出す。

「死体よ」

「どういうことだ」

「この世界では負けた人間は灰となって消えるの」

「灰に…なる?」

「えぇ、そうよ」

「戦闘があったのか?」

「恐らく、そうだと思う。

だって、見て」

あらいに言われて彼女の背中を確認する。

するとガラスの羽が一枚減ってる。

これで14枚。

参加者が消えた…という事なんだろう。

「この市街地に敵がいる、そういう事なんだな」

俺はそんな結論に至った。

「えぇ」

あらいは頷く。

「どうするんだ、戦うのか?」

「敵はまだこちらを認識してない。

気づいてるなら、こちらが気づいてない今を狙った方が油断してるから撃ちやすい筈。

でも、そうしないってことは向こうも気づいてない」

「弾を節約しようとしてる可能性は?」

「それもありえなくはないけど…」

「けど?」

「すでに1人倒してるのに、弾を節約するとは思えない」

「近くに居て戦わないと見つかるかもって不安に駆られて襲ったとか」

「それなら余計に、私たちに気づいてる筈よ。

それなのに撃たない理由は?」

「無いかも」

敵がどんな武器を持ってるかは不明だが、

2人ぐらいならば頑張れば1人でも倒せそうだ。

ここで襲った方が後に有利になると思う。

気づいてないって考えるのが自然か。

「私たちがやることは決まってるわ」

「敵を探す?」

「ううん、腹を満たす事よ。

敵を倒した時に銃声が聞こえて

他の敵がやってきたら連戦になる可能性がある。

空腹のまま戦い続けられる自信がない」

「そうだな、分かった飯を探そう」

「ありがとう、同意してくれて」

「別に…同意しただけだろ」

「話し合いが出来ない相手とコンビを組むことだってあるもの、そう考えたら私の意見を優先してくれる気がしてやりやすいわ」

「たまたま同意見だっただけだよ。

俺だって自分の意思が無い訳じゃないから、

君の意見が可笑しいって思ったら反論するよ」

「そっか」

「さて、飯を探すか。

何処に行く?」

「コンビニでいいんじゃない?

スーパーよりも数が多いだろうし、行きやすいと思う」

「分かった」

俺たちはコンビニを探すのだった。

そんなに手間取ることなく見つけることが出来た。

緑と青がテーマカラーで、

数字が書かれた看板が目印のコンビニだった。

「ついたわ」

「入るか」

電気が通ってるようで、自動ドアだった。

ここも店員はおらず、誰も居ない。

客も居ない。

俺たちだけの貸し切り空間。

飲み物は冷えていて、夏の暑さに気持ち良い。

御菓子は荒らされることなく綺麗に陳列されてる。

雑誌も置いてて、グラビアからギャンブル系の雑誌まで幅広く置いてある。

弁当は腐敗しておらず、クリアな香りだった。

嫌な感じは全くなく、今すぐにでも食えそうな雰囲気。こういう滅びた世界観って腐ってる食べ物が多いイメージだったが、ここは違う。

そのことから推測するに、まるで誰かが用意したセットの中で戦ってる感が俺の中で強かった。

「あるかなぁ」

あらいは何か目当てなものがあるらしく、一直線にお菓子コーナーへ向かう。

「唐揚げ喰うか」

俺は弁当を選ぶ。

せっかく食べれそうなのだから食べてしまおう。

このまま腐っていくかもしれないし。

「唐揚げなんて身体に悪いわ」

「いいじゃないか別に、好きなんだから」

「ダメ」

あらいは俺から弁当を取り上げようとする。

「これは譲れない」

俺は弁当を取り返す。

「あっ」

「がつがつ…」

俺は唐揚げ弁当をコンビニの中でバクバク食べる。

普通だったら捕まるだろうが、誰も居ない店内ではやりたい放題だった。

「もう…」

あらいは呆れていた。

「美味いな」

かりっとした触感が揚げたてを感じさせて美味しかった。

さっぱりとした塩レモン味で夏にぴったりだと俺は感じた。

滅びた世界には不釣り合いな一品だった。

「ねぇ、レン?」

あらいはうずうずしてる。

なにかを見せたそうにしてる。

「どうしたんだ?」

俺はあらいの目を見る。

「じゃーん、これ見て」

あらいは嬉しそうに見せて来る。

それは大豆バーだった。

「なんだよそれ」

「大豆バーだよ、知らない?」

「知ってるけどさ」

「反応悪~い」

「あんまり好きじゃないんだよ」

「そうかな、結構おいしいよ?」

「なんか健康食って不味いんだよ。

身体にはいいかもしれないけどさ」

「ぱくっ♪」

あらいは大豆バーの袋を開けて、齧っていた。

「…」

「美味~い(*^^)v」

あらいは笑みを浮かべる。

それはとても幸せ層だった。

「うまい…か?」

「うん、最高」

「どうした」

あらいが急に止まったから不思議に思ったのだ。

「はい、あ~ん」

齧った後の大豆バーを渡してくる。

「要らないよ、俺には唐揚げあるし」

「間接キスは汚い?」

「そういう訳じゃない」

「食べてみてよ、美味しいよ」

「そこまで言うなら」

俺は仕方なくって感じで齧る。

「どう?」

「まずい」

やっぱり好きじゃなかった。

「えー、美味いのに」

「悪い、好みじゃないんだ」

「残念、いっぱい持って行こうって思ったのに」

「持って行く?」

「ほら、これ」

彼女はリュックサックを取り出す。

「積める気か?」

「そう、今のうちに集めても損はないでしょ?」

「まぁ」

「だからさ、出来る限り君の好みにあうものがいいかなって」

「別に俺に合わせなくても」

「やっぱり2人で好きなものがいいでしょ」

「そうかな」

「そうだよ、チョコバーに、クッキーでしょ、グミなんかもいいな」

「何だか甘い物ばっかりだな」

「持ち運べるものはお菓子系がいいじゃない。

弁当を持っていっても腐るでしょ?」

「言われてみればそうだな。

って思ったけどポテチとかあるだろ。

単に甘いものが好きなだけじゃないか?」

「バレた?」

「ったく」

俺は呆れる。

「大豆バーは欠かせないでしょ。

フルーツ系にナッツ系、チョコ系にハーブ系ってのもありだなぁ」

彼女は何だか楽しそうだった。

「俺も何か集めておくか」

俺もコンビニにあるリュックサックを奪う。

そして、物を色々と積めていく。

飲料水に、ハサミやヒモなんてのも役立つかも。

適当に思いついたものを入れていくのだった。








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