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6-7

少し休んだら動けるようになった。

普通の人間なら無理かもしれない。

柔らかな花壇に落ちたとはいえ、

俺は何処か特別なのかもしれない。

高所から落下しても動けるのだから。

それでも痛いし、傷だらけなのは間違えない。

あらいの居る3階へ戻ろう。

そう思ってエレベーター移動した。

もう警戒する必要はない。

敵は居ないのだから。

怪我して動けないあらいの元へ。

「終わったのね」

あらいは微笑む。

「あぁ、そうだ」

「2人きりだね」

あらいは俺を見てる。

いや、正確に言うならば俺の背中に生えてるガラスの羽だろう。

それは鏡のようにあらいもきっと同じなのだと思った。

互いに残りの枚数は2枚。

バトルロイヤルの参加者はもう居ない。

俺たちを除いて。

「これから…どうする?」

敵は居ない筈、

でもゲームは終わらない。

なら、答えは決まってる。

あらいを…ヒロインを撃て。

そういうことだろう。

「レン…受け取って」

彼女はリボルバーを渡す。

「何故…俺に?」

「これで私を撃って」

「バカな、君は戦いに勝つためにここまで来たんだろ?」

「もう…終わったの」

「終わったって何がだよ、俺には分からない!」

「お願い…分かって」

「分からないよ、全部説明してくれ!」

「それは…出来ない」

「最後の最後でも君は何も喋らないのか!?」

「…」

あらいは黙る。

「どうしろって言うんだ…」

俺はその場で立ち尽くす。

「ねぇ…レン」

「なんだよ」

「貴方はきっと引け目を感じてる…そうでしょ」

「あぁ…そうだ…ここまで一緒に戦ってきたんだ。

俺だけ一方的に勝利するってのは気が引ける」

「ならこうしましょう…拳銃を貸して」

「分かったけど、これで何を…」

俺は拳銃を貸す。

何やら少しいじった後、あらいは動き出す。

「こうするの」

あらいと俺の銃が交差する。

リボルバーの銃口があらいの口元に。

拳銃の銃口が俺の口元に。

「互いに撃てば互いに気を使わなくていいと?」

「えぇ…そういうことよ」

「これなら公平…かもな」

「同時に撃ちましょう」

「分かった」

俺は受け入れる。

互いに銃を咥え合う。

「いひのこるのはふんにはかせよう(生き残るのは、運に任せよう)」

口に銃が入ってるのでちゃんとした言葉では無かった。

そして、2人同時に言葉を放った。

1発の銃声がモールに響くのだった。

俺は意識を失ってその場に倒れるのだった。

しばらくして俺は目を覚ます。

俺の傍には灰で出来た小さな砂山が。

彼女が灰になってしまった。

それは空から見れば些細なものだが、

街にある明かりの1つが消えたようだった。

その瞬間、あらいの銃は空砲なのだと理解するのだった。

「ちくしょう…公平じゃないじゃないか」

俺はその場で項垂れる。

モールの鏡にガラスの羽が一枚だけ映っていた。






廃墟にぽつんと漂う俺に、

静寂を切り裂いて現れる。

「おめでとう」

ぱち…ぱちぱちぱち…。

モールの中で拍手が聞こえる。

「誰だ」

そう、叫ぶ。

生き残りは居ない筈では?

咄嗟に銃を構える。

それは少年だった。

傷や汚れが一切ない真っ白な服。

両手を袖に隠したまま、

腕には拘束具がつけられてる。

頭にはギザギザ模様の天使の輪っか。

それが彼の見た目だった。

この世の者とは思えない格好だ。

「せいなは…そうだな名前に意味は無い。

でも…話をする際に困るな…さて…どうしようか」

少年は考え込むしぐさをする。

「そういうのはいい、早く教えろ」

俺は銃を構える。

「せっかちだな、いいだろう。

名は無いが、そうだな…上様とだけ名乗っておこう」

「ふざけたことを」

俺は銃をちらつかせる。

「戦うために来たのではない」

その知性を感じさせる喋り方に俺は驚く。

少年ならば、叫んだり喚いてるのが普通だろう。

でも、彼は落ち着いて喋るものだから。

「お前…何を」

俺は戸惑う。

「少し、失礼するよ」

少年は俺の背中に触れる。

するとガラスの羽が変貌して1つのカギになる。

「カギ…だと?」

「君は選ばれたんだ」

「選ばれた?」

「さぁ、行こうか」

少年は何も無い空間にカギを差し込む。

そして、カギを捻る。

すると突如として空間に扉が出現。

「そこは…何なんだ?」

「勝者だけが入れる特別な場所…と言った所かな」

「なんだなんだ…そこは」

「気になるのならば入りたまえ。

せいなは拒絶することなく受け入れるのだから」

上様は入るように伝える。

「変な動きをしたら撃つ」

「好きにしたまえ」

上様に案内されるがまま、

俺は戸惑いながらも扉の奥へ。

そこは真っ白な空間だった。

その先には食卓だけがあった。

テーブルの上には皿とネームプレートが16個。

ガラスの羽を同じ数だった。

「ここは何だ?」

「自分の席に座りたまえ」

そう言われる。

「自分の…席?」

俺は不思議に思う。

「開けてみると良い」

「…」

俺は言われたとおりにネームプレートを開ける。

するとバトルロイヤルに参加した人の名前が。

浪井恭太、佐々木穂乃果、佐藤紘一、

舞元塔矢、阿部裕也、木川奏。

知らない名前が6人…俺が戦った奴じゃない気がする。

早川信二、鈴木陽太、霊堂みやこ、七ツ役塔。

朝日川凶次郎、高橋ゆい、光歌すみれ、基樹善治。

戦った覚えがある8人の名前だった。

そして、共に戦った最高の相棒。

遠野あらい。

彼女の名前もあった。

探して自分の席を見つける。

高坂連。

これで16人だ。

そして、席に座る。

皿にはクロッシュか被さってる。

真っ黒で中は見えない。

俺は蓋を開けてみる。

すると食べ物が。

ブドウ、ステーキ、ワインだった。

「勝った人間への褒美だ、遠慮せず食べると良い」

「何が目的だ!」

俺はテーブルを叩いて怒る。

「バトルロイヤルを開催した理由かい?」

「そうだ」

「何処から話したものか…そもそもだが君はこの戦いのルールは理解してるのかい?」

「当たり前だ、生き残りをかけた戦いだろ?」

「はぁ」

上様は呆れた声を出す。

「何が可笑しいんだ」

俺は分からない不安からか苛立つ。

「君は誤解してる、これは生き残りをかけた戦いではない。…生き返りをかけた戦いなのだ」

「生き返り…だと?」

殺し合いだと思っていたので驚く。

「君だけは知らされてなかったのさ」

「どうして俺にだけ教えないんだ」

「これを」

「手紙?」

「宛名を見ると良い」

「あらい…!?」

そこには共に戦ってきた相棒の名前が。

俺は急いで中身を確認する。

その中に俺への思いが書いてあった。


―――――――。

拝啓、高坂連様へ。

この手紙を読んでるということは、

私はすでにこの世に居ないでしょう。

それは私の望むところであり、

貴方が責任を感じる必要はありません。

本来、レンはバトルロイヤルに参加する必要は無かった。

言うなれば、

イレギュラーの存在なのだから。

私だけが参加する筈だった。

でも、貴方の参加も決まった。

それは何故か。

この世界は死んだ人間たちが生き返りをかけて戦う舞台だからです。

貴方は私が死にそうになった時に庇ってくれました。

テロリストに追われてる時、

海の砂浜で貴方は撃たれたのです。

私は庇ってもらったことよりも、

恋人だった貴方が死んだことがとても悲しかった。

だから後を追うようにこめかみに銃を突きつけました。

次の瞬間です。

私は別の世界に飛ばされていました。

そこでは”上様”を名乗る少年が居た。

彼は言いました、この戦いで勝てば生き返られると。

そして、レンが参加してることを。

私は決めたのです。

レンを生き返らせることを。

それが守ってくれた彼に出来る恩返しだと思って。

私はバトルロイヤルが始まったら真っ先に貴方を探しました。

すると、運よく見つけることが出来た。

再会を喜びました。

しかし、残酷な運命が私を幸せにしてくれませんでした。

それはレンの記憶喪失。

私の記憶は一切なかったのです。

ですが、好都合だと思いました。

貴方は私がピンチの時に守ろうという感情が湧いて行動する人です。

それはとても嬉しい気持ちと同時に、迷惑だと思う部分もあります。

何故なら、生き残った方は幸せになれないからです。

恋人を失って幸せだと言えるでしょうか?

いいえ、ありえないでしょう。

だから私は決めたのです。

偶然を装って貴方の相棒になることに。

レンに冷たく接すれば、

レンはきっと守ろうとは思わない。

そうすれば庇って死なずに済むと。

でも、私は恋人だと知りつつも冷たく接するのが難しいと思う。

私はそこまで器用じゃないから。

だから何処かで感じ取ってしまうかもしれない。それが何より怖かった。

でも、この手紙を受け取ったのならば私の計画は成功したということなんでしょう。

こんなことを書くのはとても恥ずかしいことです。でも、どうせ死んでしまったので大丈夫です。

私はテロリストの娘だった。

そして、そのテロリストを捕まえる仕事を警官であるレンが担ってた。

私は最初、貴方の事を敵だと思って接してました。でも、何度も戦ってるうちに、貴方は私にこう言いましたね。

君の正義は間違ってるって。

私が貴方を好きになったのはそこです。

親に教えられたことが正義だと信じていた私には衝撃的でした。

新しい正義を受け入れるには時間がかかりました。

何故ならそれはテロリストを裏切って貴方の元に行くということですから。

犯罪者であろうと家族は家族。

裏切りは最も恨まれる行為です。

それでも、私は貴方を信じて動きました。

その結果は幸せだと言い切れるものではありません。

でも、出会わなければ良かったとは思えませんでした。

何故なら、貴方と一緒に夜のベットで星を数えてる時は幸福だと思えたから。

だから、最後にこう伝えたかった。

大好き、レン。

お願い、また戦いに参加しようと思わないで。一人きりになるかもしれないけど、

生きる道を選んで欲しい。

恋人は出来れば作って欲しくないけど、

貴方の幸せを考えたら作るべきなんだろうなって思う、だから作ってもいいよって書いておく。でも、時々でいいから私を思い出して欲しい。

グラジオラスの香りを思い出して欲しい。

それが私の願いです。



世界で一番愛してる貴方の恋人の遠野あらいより。


ーーーーー。




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