6-1(この世界で最も天国に近いモール)
~view高坂連
あらいが帰ってくるのが見えた。
背中に生えたガラスの羽の数が減っていた。
これで…9枚。
「終わった…のか?」
「えぇ、そうよ」
「良かった」
俺たちは勝った。
ということだろう。
「ふぅ…」
あらいは座り込む。
「大丈夫か?」
俺は駆け寄りたいところだが、
みっともない話で申し訳ないけれど、
カートの中で膝を折って足を外に出してる状況だから。
その…ダサい。
「声をかけてくれるだけでも嬉しい」
「そうか」
「もう少しだけ…動くわ」
あらいは立ち上がる。
「無理しなくても」
「このまま廊下に居るのは良くないわ。
外に…出ないと」
「そうか…火災」
恐らく、9階か10階辺りが出火の原因だ。
いくら上の階が燃えてるからといって、
下の階が安全とは限らない。
燃え広がる可能性があるのだから。
「出ましょう…私がカートを押すから。
敵は居ないから…エレベーターでも平気だから出るのは楽だわ」
「居ない…のか?」
「私はそう思ってる。仮に居るのだとしたら協力して襲ってくるか、漁夫の利のように第三者的に襲ってくる可能性も考慮した。だけど、一向にそういう気配が無いから、敵が付近に居るとは思えない」
「なるほど」
「もしも襲ってきたら…」
「襲ってきたら?」
「貴方を盾にして逃げるわ」
「そうかい」
その言葉の説得力はとても無いと感じた。
俺たちはホテルから脱出する。
「ここともおさらばね」
あらいはホテルを見上げる。
「そうだな」
俺も見上げた。
ごごご…という地鳴りの音と共にホテルが崩れていく。
「離れましょう、こっちに倒れてきたらアウトよ」
「あ、あぁ…」
あらいは俺が乗ったカートを押して逃げる。
ちらと俺は後ろを見るとホテルの崩壊の様子が見えたのだった。とても豪華なものだったが、火災になったのだからどうしようもなかった。
「脱出できて良かったわ」
あらいは安堵してため息を吐く。
「そうだな」
俺も安心した。
「少し…疲れたわ…休みましょう」
俺たちは適当に近場の民家を拝借して寝泊まりした。
この世界は人が存在しない。
だから出来ることだ。
他の参加者もやってることなので、
特別俺たちがズルをしてるって訳じゃない。
そうして寝床を見つけて俺たちは寝るのだった。
翌朝の事だった。
「おっ」
俺は目を覚ますと、布団で寝かせられてたことに気づく。
きっと、あらいが寝かせてくれたのだ。
そのお陰かもしれないが、足の火傷が収まっており、
歩くことが出来そうだった。
「レン?」
「悪い、うるさかったか?」
「歩けるようになったのね」
「今まで迷惑かけた分、動けるぜ」
「良かった」
あらいは柔らかな表情をする。
白い綿毛のような笑みだった。
うーーーーーーっ。
突如としてサイレンが鳴り響く。
それは脳に不快感を覚えさせるものだった。
「なんだ…あれは」
「タイムリミットよ」
「タイム…リミット?」
「この世界は崩壊する、猶予は限られてる」
「どういうことだよ」
「…」
あらいはそれ以上、答えない。
「何を知ってる?」
「今は言えないの…聞かないで」
「あらい…」
俺はそれ以上、聞くことが出来なかった。
「中央に向かいましょう、出ないと崩壊に巻き込まれる」
「分かった、今すぐ外に出よう」
俺たちは民家を出る。
すると、気づいた。
外に出ると地面が、通常ではあり得ない。
言葉にすると一瞬、なんて言ってるか分からないと思うが事実をありのまま話す。
地面が…地面に向って落下してると。
「これは…一体」
「さっきも言ったでしょう。
これは崩落、巻き込まれるわ。
そうならないために中央に向かうの」
「どうして…崩壊なんてものが起きるんだ」
「これは措置よ」
「措置?」
走りながら俺たちは話する。
「バトルロイヤルから逃がさないための方法」
あらいはそう語る。
「どういうことだ?」
「崩落が起きることでフィールドが制限される。
そして、どんどん人は中央に集まる。
すでに戦闘を行ってる人は他人に危害を加えることに抵抗感何て無い。そんな精神状態を持った人同士が小さいエリアに収まったら、戦いが起きない何て言える?」
「それじゃ、この世界は誰かの箱庭だって言うのか?」
「そう…なるわね」
「畜生、なんでこんなことをさせるんだ!」
俺は苛立ちを感じる。
けれど、誰にぶつけていいか分からない。
空に向かって吠えるしかなかった。
「気持ちは分かるわ、でも今は前を向いて走って。でないと追いつかれる」
「なに?」
俺は後ろを見る。
すると、崩落が迫ってるのが分かった。
「急いで、私についてくれば崩落に巻き込まれない場所まで移動できる」
「うおおおおおおおおっ」
俺は懸命に走る。
「お願い…頑張って」
あらいは俺を先導するように走る。
本当だったら早く行きたいだろうに、
俺を心配するせいで思うように距離を稼げない。
「あぐっ」
地面が崩落し始めてるせいで、
地面に段差が生まれる。
俺はその段差に引っかかる。
「レン!」
あらいが手を伸ばす。
崩落は収まったが、俺の身体の半分以上は宙に浮いていた。
「あはは…しくじったぜ」
崩落した地面は淡い青色に染まっていた。
時折、白いフワフワしたものが漂っており、
雲のように見えた。
「諦め…ないで!」
「あああああああっ」
俺は叫んで力を入れる。
そして、なんとか身体を地面がある場所に持って行く。さながら栄養ドリンクのCMを思い出す。
「っつはあっ!」
あらいは俺を引っ張り上げる。
「はあっ…はぁっ…」
俺は何とか地上に戻ってこれた。
「生きてる?」
あらいが尋ねる。
「なんとか…な」
俺は仰向けになって空を見上げるのだった。




