5-9
~view高橋ゆい
自分は不幸な生い立ちだと思ってる。
悲劇のヒロインぶってるなんて、
人は言うかもしれない。
でも、実際に不幸なら悲劇ぶってるのではなくて事実なんじゃないだろうか?
演技なら罪かもしれないが、
演技でないのだから罰を与えられる人間じゃない。
自分は…幸せなるんだ。
父を殺した罪が消えると信じて。
「あれは」
人型の香水がするものを見つける。
しかし、攻撃していいのか迷う。
前に香水で痛い目にあった。
弾は無制限ではないため節約したい。
そこで食堂で奪ったアブサン(酒)に布をしみ込ませた即席の火炎瓶を投げ込む。
アブサンは緑色の妖精という別名を持った透き通った美しい緑色。
それにウェディングケーキなどに使う点火棒で火をつける。
点火棒の火が揺れる。
火の付きが悪いな…自分は不満を口にする。
そして防火扉に隠れつつ投擲。
「きゃあああああっ」
女の悲鳴が聞こえる。
間違えない、敵のものだ。
人型のものは倒れる。
やった、自分は勝ったんだ。
そう思って、確認しに行く。
1度蹴飛ばしてみた。
しかし…反応が無い。
触れても大丈夫かと自分は安心した。
焦げた何かに手を伸ばす。
銃の弾があるんじゃないかと期待して。
自分はそれに触れた。
一瞬、胸がざわついた。
肉の匂いではない。
プラスチックのような、焼けたおもちゃの匂い。
指先が触れた感触は硬く、冷たい。
違和感を感じつつも、自分は物を漁る。
すると、服の中から奇妙なものが見つかった。
それは壊れたスマホだった(通話画面にヒビが入ってる)
「何だ…何かが…可笑しい」
こんな時に脇に痛みが。
くそっ、親父に蹴られた古傷が痛む。
どうして今になって。
いつもなら痛まないのに。
「お前は…負けたんだ」
女の声が聞こえる。
「録音じゃない…通話だった!」
画面のヒビの向こうで、まだ通話マークが点滅していた。
「それを…教えてあげる」
「何を…」
すると、いきなり廊下の奥から激しい音が
思わず後ろを振り返る。
そこで気づいた。
清掃カートがやってくることに。
廊下の端から助走をつけて押し込んできた。
ボロボロのシャツに短パン。
くすんだベレー帽。
ブーツの泥汚れに、
ガラスの羽だけがやけに綺麗に輝いていた。
清掃カートなんてものを押してるからか、
鬼の演目が始まったのだと錯覚した。
「罠か!」
自分は怒鳴り声を上げてリボルバーの引き金を引く。
だが弾が届かない。
その理由は布の隙間から見えたのは銀色の重り。
ダンベルだ。
恐らく、3階のフィットネスジムから拝借したのだ。
弾が当たっても装甲が厚くて貫通しない。
敵はそのまま突撃してくる。
「終わりよ」
敵はそのままカートで突撃してきた。
その勢いに負けて自分は倒れてしまう。
「ああっ!」
敵が覆いかぶさってくる。
「…」
敵の顔は何処までも冷酷に見えた。
きっと過去には温かさもあっただろうに。
その面影は何処にもなかった。
そして、手に持ったダンベルで自分に向って振り上げる。
「やめて!」
自分は抵抗しようと思った。
でも、肩に傷があり力が出ない。
そのまま腕を降ろしてしまう
敵はダンベルで殴打。
鈍い金属の音が骨に響く。
「…」
無言、それが何よりも怖かった。
「助け…て…」
自分は助けてと訴えたつもりだった。
しかし敵は止まることは無かった。
何度も、何度も殴打する。
血が乾いても尚。
確実に殺すという意思を強く感じる。
自分に出来ることはこの時間が早く終われという事だけだった。
「終わった…わね」
そのまま、彼女はその場に座り込むのだった。




