5-7
「レン!」
あらいは俺の傍に駆け寄る。
「あぁあああああ…」
俺は痛みで悶える。
爆風を浴びて皮膚が火傷している。
その所為だろう。
まるで、皮膚にやすりをかけられてるような気分だった。
とてもじゃないが立てない。
腕は大丈夫そうだが、
足のダメージが大きい。
これは立てないどころか歩くのも難しいかもしれない。
「しっかりして、お願い」
「あああっ…」
俺は痛みしか口にできない。
「お願い、返事して!レン!」
あらいは何度も俺に呼びかける。
「ああぁ…」
次第に痛みが落ち着いて来る。
けれど、それでも俺は動けそうにない。
「レン、お願い、答えて。大丈夫なの?」
「はぁ…はぁ…」
「レン!」
「だい…じょう…ぶだ…」
俺は何とか言葉にする。
喉が焼けてるような感じがして、チクチクする。
「レン、良かった…生きてるのね」
「生きてる…さ…でも…」
「どうしたの?」
「俺を…置いていけ」
「どうして…そんなこと言うの?」
「ここが分かれ道だ。
俺を置いていくか…先に行くかだ。
負けたくないんだろ…なら…俺を置いていくべきだ」
「…」
あらいは黙る。
「あらい…どうするか…選べ」
「…」
あらいは去っていく。
当然だ…怪我して動けない俺は邪魔だもんな。これで…彼女の生存率は上がる筈。
「生きろよ…あらい」
俺はそう呟いた。
「何をカッコつけてるの」
あらいが清掃カートを押して戻ってくる。
重くて頑丈な金属フレームで出来てた。
「どうして」
「貴方を盾にしようと思って」
「嘘なんだろ…?」
「いいえ、事実よ」
「…」
あらいは正直に言わない。
でも、俺を見捨てる気は無いらしい。
「これ…邪魔ね」
清掃カートにはリネンや清掃用具が詰まっていた。あらいが中身を放り出してスペースを作る。
「何しようとしてるんだ?」
俺は不思議に思う。
「乗せてあげる」
「え?」
あらいは俺をそこに乗せる気のようだ。
清掃カートを横にして俺をカゴの中に押し込む。
「ん…しょ」
「ちょっと痛いぜ」
「我慢して」
「優しくしてくれ」
「起き上がらせるわよ…せーのっ」
そして縦に直す。
そういう乗せ方だった。
苦労したが何とか持ち上がった。
「しかし…何だか俺はダサいな」
清掃カートに乗った俺はみっともなかった。カゴから足を出して腕はだらんと垂れ下がってるのだから。だが、仕方がない。身体が思うように動かないのだから。
「しょうがないでしょ、私がおぶっていく訳にはいかないんだし」
「まぁ」
「落ちないように気をつけてね」
「分かったよ」
俺は、全てを預けるつもりだった。
それは、あらいを信じる。
他人から見れば安っぽい言葉かもしれないが、俺にとっては静かな決意だった。
「階段で行くのは無理そう」
「けれど、ロープで階下に行くのもな」
「エレベーター…しかないかも」
「だが、いいのか。
エレベーターってのは言わば密室だ。
敵が待ち構えたら…逃げ場はないぞ」
「他に道は無いわ、もしも生存率を上げるならば方法は1つ。先手必勝、扉を開けた瞬間にどっちが先に銃を撃つかよ」
「それしかないか…」
「ごめんなさい、もっといい方法が浮かべば良かったのに」
「平気だ、まだ負けた訳じゃない」
「レン…」
「生きるための戦いだ、そうだろ?」
「えぇ…そうね」
「それじゃ行こう」
「分かったわ」
俺たちはエレベーターを使って5階へ向かうのだった。




