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4-1「殺気蒸気(さっきじょうき)」

俺は目覚める。

あらいに駆け寄って彼女の安否を確認する。

「…」

眠ってる。

でも、それは死んでるのとは違う。

ちゃんと息が聞こえる。

だが…。

「起きない」

このまま目覚めないのではないかと不安になる。

あらいが腹のダメージが残ってる所為だろう。弾丸でダメージを受けたが摘出後だから。

でも、きっと安静にしてれば平気の筈。

だけど、あらいの意識は無い

そのうち起きるかも?

起きたらきっと腹が減るだろう。

そう思って、冷蔵庫を覗く。

だけど、連日パーティーの影響かあまり無かった。

近くで補充しよう。

コンビニを探すことに決めた。

あらいは寝息を立ててる。

起こす訳にいかない。

離れるのは少し不安だ。

念のためにスマホでテレビ通話にしておく。

そうすれば異変があればすぐに駆け付けられる。

そして、申し訳ないと思うが、あらいのことを押し入れの中に押し込む。そうすれば見つかりにくいと思って。彼女を持ち上げると、砂糖菓子のように軽かった。

すぐ戻るからと思って、俺は銃を借りる。

俺はスナイパーライフルを手に入れる。

とうを倒したことで拳銃もある、それをあらいの傍に置いておこう。

そうすればいざって時に戦える。

弾は入ってるし問題ないだろう。

俺はそう思って急いでコンビニに向かった。



外では夏の暑さがギラギラと照りつける。

太陽に”休め”と言ってやりたい。

しかし彼は耳を貸す気などまるでないだろう。

汗をぬぐいながら、俺はコンビニへ向かう。

中は冷房がしっかり効いていて、ひんやりとしていた。

店員の姿はなく、無人のまま。

それは、これからもきっと変わらない。

滅びた世界の片隅で、それでもコンビニは律儀に活動している。

不思議なことだ。

あらいがいない。

それだけで、余計に寂しい思いが募る。

早く帰りたい。

というわけで、今日もコンビニの品を勝手に拝借する。

弁当は新品同様で、香り豊かだった。

ドリンクも補充されており、キンと冷えている。

まるで戦いを続けろと無言で告げられているかのようだ。

缶詰は無事そう。

お菓子も良い感じ。

カップ麺なんかも悪くない。

どれを持っていくか、少し迷う。

そのときだった。

コンビニの静寂をぶち破るように、トラックが爆走してきた。

そのまま突撃してくる。俺はとっさに命の危険を察知し、レジカウンターの裏へと滑り込んだ。

まさかと思った。

敵は容赦なくやってくる。

トラックはコンビニの壁を突き破り、そのまま中に侵入してきた。

明らかに、世界の構図から外れた異物だった。

「ふぃ〜、お邪魔しま〜す。

俺っち様の名前は〜〜…あさひぃ〜〜〜…かわ~~きょ〜〜〜じろ〜〜〜う♪(朝日川凶次郎)」

奴は歌いながら入ってきた。

身に着けているのは、2002年の文字になってるサングラス。

丁度0の部分に目が来る感じだ。

パーティー用の三角帽子。

そして背中には、ガラスの羽。

一目で分かった。

この男、バトルロイヤルの参加者だ。

にしても、格好が奇抜すぎる。

今は2025年のはずなのに、2002年風ってのはどうにも不釣り合いだ。

「…」

俺はライフルを向ける。

アイアンサイトだから近距離では見やすい。

撃てる…いけるか?

俺は足元に向って発砲する。

「あぁん?」

しかし凶次郎には命中しない。

「動くな、次は確実に撃つ」

俺は敵に武器を構える。

「ぷっ、あははははははは」

凶次郎は笑う。

「何が可笑しい」

「だって、可笑しいだろ…殺し合いの舞台で動くなって…こっちから撃てって言ってるようなもんじゃねぇかよ、なぁ?」

凶次郎は俺にライフルを向けられてようが関係なしにショットガンを発砲してくる。

「くそっ、あいつどうかしてる!」

どうしてビビらない?

普通の人は銃を向けられたら動きが止まる筈だ。

でも、彼にそれは当てはまらないらしい。

「i miss you~♪」

奴は歌ってる。

「殺しを楽しんでるのか?」

俺はそんな風に思った。

「何処にいるのかな、ハニー俺っち様と遊ぼうぜぇ…イエィ♪」

凶次郎はショットガンを持って暴れる。

普通ならば隠れて襲ってくるが彼は気にせず直進。

その異常性に俺は少し恐れおののく。

その所為で俺が隠れて戦う。

「くそっ」

俺はライフルで応戦する。

「当たらないねぇ」

運がいいのか、まっすぐ歩いて来る凶次郎に命中しない。

それどころか、凶次郎は棚に陳列してあるタマゴサンドを食べながら俺に接近してくる。

その歩き方はまるで友人に会いに行くようだった。

バトルロイヤルの世界で異常としか思えない。

「どうしてだ!」

俺は何度も発砲するが命中しない。

「ひゃははは、そりゃ当たる訳ないぜ」

「なに?」

「お前は俺っち様が怖いのさ、だから無意識のうちに弾を外す」

「そんなバカな」

「だが、事実、当たらない…だろ?」

「ぐっ」

俺は唇を噛んで苛立ちを我慢する。

弱さを突き付けられて悔しかったから。

「捕まえた…」

凶次郎に首を掴まれる。

「がっ」

俺は軽々しく持ち上げられた。

「殺してやるぜ…ばいび~」

凶次郎はナイフを取り出す。

「…」

ここまでか。

そう思った時だった。

スマホが地面に落ちる。

「なんだこれ」

凶次郎はそれを拾い上げる。

「止めろ、見るな!」

「へぇ…なんだ仲間が居るのか」

「返せ…この…」

だが俺の抵抗空しく何も出来ない。

「お前1人殺してもつまらないな、せっかくだ。

こいつも一緒に連れてこい…2人まとめて相手した方が面白そうだ」

凶次郎は俺を手放す。

「逃がすのか?」

俺はせき込みながら話す。

「いいや、逃げたら追いかけるだけさ。

俺っち様は工場で待ってる…ほら地図だ」

凶次郎は地図を寄越す。

ポケットに入ってる辺り、普段からこうして敵をおびき寄せて戦ってるのかもしれない。

「俺が逃げると思わないのか?」

「そんなつまらないことは言うな…早く向かって来い。

殺し合おうぜ…ガール?」

凶次郎はそう言って去っていった。

「…」

だが、あらいは連れていけない。

彼女はすでに傷だらけなんだ。

俺一人で行く。

今度は油断しない。

覚悟を決めろ。

迷うな、心の揺らぎを安定させろ。

そう思って工場へ向かうのだった。




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