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3-12

肩に手を回して歩く。

あらいの体重が乗りかかって重かった。

でも、手放すわけにはいかない。

俺たちはbarへと向かう。

「迂闊だったわ、どうして”とう”が生きてる気づかなかったのかしら」

あらいは手で腹を抑えながら反省していた。

「ごめん、俺のミスだ。

脈の音が聞こえないからてっきり」

「ううん、私も傷かなかった。

みやこが死んだってことに気づいて冷静さを保ってたつもりだったけどそうじゃなかったみたい」

「みやこは死んでいたのか?

とうが生きてるんだ、彼女も生きてるんじゃ」

「いいえ、それはありえないわ」

「どうして」

「もっと早くに気づくべきだった。

私達にはあるでしょう?」

「ある…?」

「そう、考えてみて」

「…そうか…あれか」

俺は背中に触れようとする。

「そうよ、ガラスの羽よ。

あれは生存者の数を確かめるもの。

スナイパーの男の時は13枚、でも今は12枚になってる。

つまり…」

「死んだ人間が1人だけ、それは…みやこ」

あらいの言いたいことを理解した。

「傷だらけの人間を見て、つい死んだと判断した。

でも、それはミスだった。

人間時代だった時のことを思い出してそれが常識だと勘違いしていた。もう、人では無いのにね」

「羽を確認しておけば違和感に気づけたのか」

「今となっては…だけど」

「傷…平気か?」

「大丈夫…意識はある…この戦いの間だけは持たせてみせる」

「あらい…」

「そこに…隠れて」

「あ…あぁ…」

俺はバーカウンターに隠れる。

奥にある狭い隠れ場所。

狭い空間だった。

大人な男女(約170cm)が2人分。

息を潜めるには十分な狭さだった。

周囲にはグラスやボトルが並ぶ。

わずかな物音でも響きそうな緊張感が。

「この傷だし…遠くにはいけない…ここで決着をつけるわ」

「出来そうか?」

「やるしかないわ、でないと死ぬのは私達よ」

「分かった…やってやる!」

俺は闘志が湧いて来る。

あらいを死なせるわけにはいかない。

そのためにも勝つんだ。

その気持ちでいっぱいになる。

俺はシャンパンを手にする。

「隠れても無駄だ…あらい」

とうは近づいて来る。

彼の手には拳銃が握られていた。

彼が口にしたのは彼女の名前だけ。

俺の存在は無視されてる。

大したことが無いと思ってるのだろう。

武器を持ってないからなのか、

脅威はあらいだけだと決めつけてるように。

「どうして嘘をついたんだ」

俺は尋ねる。

「…」

しかし、とうは何も返事しない。

やっぱりだ、俺を…見てない。

「どうして嘘をついたの?」

代わりに、あらいは尋ねる。

「変な髪形をして不良に絡まれるのは自己責任。引きこもって家に居たから信頼されないのは自己責任。喧嘩して逮捕されたから就職できないのは自己責任。人に騙されるのは自己責任。なんでもかんでも自己責任だ、騙す側が100%の悪意を持っていたとしても騙された方がバカなのだと世間は言う。

誰かに助けてを求めても、自己責任だから助ける価値は無いと判断するんだ。それが世の中の正しいってされる意見だ。だったら僕は加害者側になってやるって決めたんだ、そうしたら損しないからな。だから、騙される方が、悪い、だって自己責任だから」

「それが…貴方の本当の本性ね」

あらいが答える。

「そうだ…平和こそ嘘の言葉じゃないか。

皆…平和を口にするくせに…結局は嘘をついて争いに発展させる…他の奴らがそうなんだ…なら僕だってそうするだけさ」

敵は彼女に集中している。

俺は武器を持っていない。

だから戦力外と見なしてるんだ。

故に無視されている。

その態度が傲慢だと教えてやろう。

奇策ではあるが、銃が使えないのだからやるしかない。

俺はスクリューキャップで限界までコルクを緩める、そしてシャンパンを上下に思いっきり振る。中で炭酸が弾けてる音が聞こえてきた。

準備は万端だ、俺は立ち上がる。

「先に死にたいようだな!」

とうは俺の方に拳銃を向ける。

「俺の方が早いぜ」

「なに?」

俺は敵に向けて発射する。

「乾杯!」

シャンパンのコルクで不意打ち。

相手の手の甲に命中させた。

「ぐっ」

敵は銃を落とす

俺は距離を詰めて銃を蹴飛ばす。

「この距離なら外さない」

あらいが即座に敵に銃を向ける。

「…くそ…シャンパンとはな…くだらない方法だが…僕は…それに負けた…一番くだらないのは…僕か」

とうは両手を挙げて降伏するのだった。

「どうして襲ったんだ」

俺は理由を尋ねた。

「いいぜ、負けた褒美に教えてやる。

レン…」

俺の名前を呼んだ。

認めてくれたということだろう。

「なんだ?」

俺は尋ねる。

「病気の娘が居るんだ」

とうは答える。

「それは、嘘じゃないんだよな?」

俺は聞き返す。

「これは嘘じゃない…信じてくれ」

「とう…」

「僕は…バトルロイヤルで勝って娘の元に帰りかたった。娘を救えるのは僕だけなんだ、まだ娘は9歳で…親が必要な年だ…可哀そうだと思わないか?」

「それは」

俺はその話を聞いて可哀そうに思ってしまう。

「代わりに…と言っては何だが…僕を助けてくれないか?」

「とうを?」

「そうだ、協力する。2人よりも3人方が効率がいいだろ?」

「…」

俺はどうしたらいいのだろうかと悩む。

「お願いだ、何でもするから」

とうは懇願する。

「…」

しかし…あらいはとうを撃つ。

乾いた音が傍で聞こえる。

「ごめんよ…パパは…帰れな…い」

とうはその場で倒れるのだった。

「どうして…どうした撃ったんだ!?」

俺はあらいに怒鳴る。

「裏切った過去のあるとうはまた裏切る可能性があるわ。だから悪い芽は早めに摘んでおきたかった」

「だからって…殺すことは無いだろう」

「負ける訳に行かないの」

あらいは強い目をしていた。

だからこそ、俺は不安を感じる。

あらいは勝たなければならない強い意志がある。でもそれは、最後まで一緒に戦ったら裏切る理由になるのでは?

「…」

とうは灰となって消えた。

ガラスの羽が一枚、パリンと割れる音が。

これで11枚。

確実に死んだと思う。

「これで…ようやく…」

あらいがダウン。

その場で倒れるんだった。

「あらい!」

腹部の傷を我慢していたが限界のようだ。

服には血が滲み、広がっていた。

俺は彼女を抱きかかえる。

身体がとても冷たく感じた。

生きてるとは言えないような…そんな冷たさ。

「道具を…持ってきて…」

腕に抱かれてる彼女はそんなことを言ってくる。

「分かった」

俺はピンセットを持ってくることにした。




















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