3-11
俺は目を覚ます。
「…んっ」
腕を伸ばして、身体をほぐす。
「おはよう、レン」
「おはよう、あらい」
「頬に涎ついてる」
「え、うそ」
俺は腕で拭う。
「拭いてあげる」
「いいよ、恥ずかしい」
「そう?」
「そういうもんだよ」
俺は結局、自分で拭った。
「ふぅん」
なんだかあらいは勿体なさそうな顔をする。
「早く降りよう、きっとみやこたちが待ってる」
「そうね」
俺たちはリビングがある1階に降りる。
すると、そこには衝撃的なことが起きていた。
「…」
心臓に無数の穴が開いた女の子が居た。
「みや…こ…」
間違えない彼女だ。
バニーガールの恰好で死んでる。
「私は殺して無いわ」
あらいは否定する。
「分かってる、君と俺は一緒に居たんだからね」
「それじゃ、とう?」
「俺はそう思ってる」
「探しましょう」
辺りを探すと、
驚くべきことに彼の死体も存在していた。
彼は心臓にナイフが突き刺さっていた。
恐らく、キッチンから盗まれたものだ。
「どういうことだ?」
俺は戸惑う。
この家には4人しか居ない筈。
レン、あらい、みやこ、とう。
この4人だ。
そのうち2人は死んでる。
ガラスの羽は減って12枚。
人が死んでるのは間違え無さそうだ。
しかし俺は勿論やってないし、
ずっと一緒に居たあらいは犯人ではない筈だ。
「…」
あらいは何か考えてるようだった。
「第三者だ、きっとそうに違いない。
でなければ殺すなんて無理だ、何処だ、何処に居る!」
ここはバトルロイヤルの世界。
第三者が出ても可笑しくないんだ。
「落ち着いて、レン」
あらいは常に冷静だった。
「せっかく、仲間が増えたかもしれない。
そう思ってたんだ、でも、こんなのあんまりだ!」
「それは理解できるけど、落ち着いて」
「人が死んでるだぞ。
それでも落ち着けなんて言うのか!?
楽しかった日曜の夜が、何の前触れもなく月曜の朝に変わったときみたいな。頭ではわかってても、心が追いつかないなんだよ!」
俺は思わず走り出す。
「待って!」
あらいに止められる。
だけど俺は止まらなかった。
「何処だ、何処に居る!?」
やった奴を探さなければって気分になってる。
「冷静になって」
「そんなの無理に決まってるだろ」
「…」
俺は彼女に突然キスをされる。
唇はとても柔らかく、俺の心臓が一瞬静止した気がした。俺の中で酸素が失われるような気分だった。
しかし、不思議とその瞬間、冷静になれた気がした。時計の針が見えなかったが、次第に何時何分なのかが理解できるほどには落ち着けた気がする。
「落ち着いた?」
「あ…あぁ…」
俺は案外、単純な男なのだと思った。
「まずは状況確認、でしょ」
「そうだな」
「死体は本当に死体?」
「あらい、確認してくれるか?」
「えぇ」
みやこの死体を確認する。
耳を胸に押し付けて。
心臓に無数の穴が開いてるのだから、
今更だとは思うが、音を聞いてみる。
「生きてるか?」
「聞こえないわ、死んでると思う」
あらいは耳を離した。
「俺も確認してみる」
とうの腕の脈を測る。
手首付近に指を押し当てる。
「どう?」
あらいに聞かれる。
「ダメだ、死んでる」
音がまるで聞こえない。
「2人ともダメなのね」
あらいは悲しそうな顔をする。
「どうしてこんな」
俺はとても悲しい気分だった。
「悲しいのは分かるわ、でもね。
今は誰がやったのか突き止めましょう」
「あぁ」
俺は周辺を探る。
「何か違和感に気づいた?」
「これは」
俺はあることに気づく。
それはキッチンの包丁などの刃物類が一切無かったことだ。
「包丁が…無いわね」
「どうしてこんな、俺たちと戦うために?」
「私は違うと思う」
「どういうことだ?」
「武器を…奪ってる」
「なんだって?」
「敵にとって有利な状況にするために」
「ありえなくはないな」
戦うための武器を奪って、
向こうだけが圧倒的に有利にする。
武器が無い人と武器がある人では戦力に差が出て当然だ。
「でも、向こうは誤解してると思う」
「どうして?」
「こういう方法をとるってことは、
恐らく私たちが銃を持ってないって思ってる。とうに言われてアサルトライフルを破壊した時の瞬間を何処からか覗いてたんだと思う」
「そうだな、だから刃物を奪って有利に出来ると思った」
あらいは銃を破壊したし、
俺は拳銃を壊して無いが、
弾を全て排出した。
戦う術はない。
「でも、私にはこれがある」
あらいは銃を取り出す。
「そうか、それがあったか」
それは前の戦いで手に入れた武器。
スナイパーライフルだった。
「使いやすいようにスコープは外した。
アイアンサイトの方が接近戦では見やすいもの」
「でも、ボルトアクションだから1発ずつしか撃てないよ?」
相手が連続で攻撃してきたら不利だと思ったのだ。
「大丈夫、1発で十分。
確実に当てるわ」
「…あらい」
彼女の眼には自信が宿っていた。
「この情報差で敵の優位に立ちましょう。
敵は間違えなく油断してると思う。
その時がチャンスよ」
「分かった」
俺はやってやるって気分だった。
「この家に居ると思う」
「探そう」
中庭に入った時だった。
風もなく無音。
なんだか妙な雰囲気だ。
静寂が支配する。
時間帯は朝、快晴の光が中庭に入ってくる。
「なんだか嫌な予感する、注意して」
「あぁ」
俺は辺りを探索する。
すると、足音や不自然な気配に気づく。
「どうしたの?」
「いや…葉っぱが」
「おどかさないで」
「悪い」
俺は気のせいかと思って安堵した。
しかし、次の瞬間だった。
敵はウッドデッキの下から出て来る。
BBQの鉄串で襲ってくる。
中庭の木の傍で俺は驚いた。
「くたばれ!」
男の声が聞こえる。
俺は咄嗟の判断で、まな板で防ぐ。
キッチンで拝借したのだ。
金属のこすれる音が間近で聞こえる。
一瞬、火花が見えた気がした。
その瞬間、敵の顔が見えた。
「お前は…とう?」
「…」
とうはナイフを捨て去る。
そして、次に無表情のまま銃を構える
「何故だ」
俺は動揺した。
何故なら、あいつはあらいが銃を壊した筈。
いや、それよりもどうして生きてる?
「死ね!」
とうは拳銃の発砲。
”ぱん”
という乾いた破裂音。
火薬の焦げた臭いが鼻につんときた。
敵の持っているもの。
それは俺と同じタイプの武器だった。
そうか、弾を奪ったんだな。
サブマシンガンが囮で、
拳銃が本命って訳か。
あいつ…隠し持ってたんだ。
銃口が真っ白な光の大きな丸に見えた。
俺は…恐怖を感じた。
”死”
その言葉が身体全身に駆け巡る気がした。
だが、俺は死ぬことは無かった。
「…っ」
「あらい!」
彼女が俺を庇う。
スローに感じる景色。
ゆっくりとヒロインが倒れる。
地面に倒れて、鈍く嫌な音が響く。
腹部から出血するのが見えた。
「このっ…!」
あらいは敵を睨む
そして負けじと発砲。
ボルトアクションのかちゃかちゃした音が聞こえる。
「おっと」
とうは避ける。
命中しなかったようだ。
「くそっ…よけられた」
あらいは落ち込む。
「こいつは驚いた…お前…銃を隠し持ってたのか」
「貴方もね」
「互いに嘘つきって訳だ」
とうはにやっと邪悪な笑みを浮かべる。
「これでもくらえ!」
俺は消火器を噴射する。
中のガスが弾けてぷしゅっと聞こえる。
家には防災の観点から何処にでも置いてる筈だ。
そう思って持ち歩いて良かった。
中庭は天井が閉まってると煙が充満しやすい。だから視界を覆うには十分だった。
「小癪な!」
とうは暴れる。
「急いで戻らないと」
俺は怪我したあらいを抱えて移動する。
家の中にあるバーカウンターへ向かった。




