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3-6

みやこが近づいて来て、話しかけて来る。

「良かったら手伝ってくれませんか?」

「何をすればいい?」

俺は少し首をかしげて尋ねる。

「う~ん…BBQで焼くやつを用意して欲しいんです。

今まではしぃが1人で準備してたですッ。

でも、これからは皆で、ですッ!」

「分かった、何をすればいい?」

「そうですね、野菜や肉などを切って貰って鉄串に刺してくれると嬉しいですッ。あ…野菜はレン君で…肉はあらいちゃんがお願いですッ!」

「分かったわ」

あらいが同意する。

「俺も了解した」

肉と野菜を分けるのは恐らく、

細菌対策だろう。

肉を切った後のまな板で、洗ったとはいえ同じまな板を使用すると野菜に細菌が付着する可能性があるらしい。しっかり加熱すれば問題ないと思うが、念のためということだろう。

俺は野菜だけの串を作る。

ピーマン、玉ねぎ。ナスみたいな感じだ。

肉が嫌いな人でもこれなら食べれるだろう。

「刺し終わったら言ってください。

味付けはオリジナルスパイスですッ!」

みやこは胸を張って、得意げに笑みを浮かべた。

「へぇ、特別なんだ」

俺は少し目を見開いて感心した。

「はい、それはもう食べてからのお楽しみ。

ですッ!」

みやこは自信満々に語る。

「刺し終わったぜ」

俺は準備を終える。

「こっちもよ」

どうやら、あらいも終わったらしい。

「それではオリジナルスパイスを~かける~よ~。

ぱ~す、ぱす、すぱいす~」

みやこは変な歌を歌いながら、

肉や野菜にスパイスをかけていく。

「変なの」

俺は思わず笑う。

「中庭に運んでください」

みやこに指示される。

「OK」

俺はステンレス製のキッチンパットに、

串を慎重に乗せた。

キッチンと中庭は大きなガラス窓で仕切られていて、窓は既に開けてある。

その隙間からそっと中庭へ運び出す。

中庭はウッドデッキがあり、

小さな階段が続いている。

ゆっくり階段を下りながら周囲を見回す。

「ああ、これは…素敵ね」

後ろからあらいが声をかけてきた。

「あぁ、そうだな」

俺も同じ気持ちだった。

中庭には、石のタイルと花が出迎えてくれる。

クレマチスだった。

確か花言葉は”精神の美”だったかな。

みやこにぴったりだと思えた。

「さぁさぁ、パーティーの時間ですよぉ」

みやこはさっそくBBQの準備を始める。

バーベキューコンロに炭火で火をつける。

そして野菜や肉を乗せるのだった。

煙が立ち込める、スパイスの効いた香りがする。

とても腹に効く。

「うへへへへ」

みやこは笑みを浮かべる

「何だか楽しそうだな」

俺はそんなみやこを見る。

「だって、こうして人が一緒に食事するなんて幸せじゃないですか。敵対ではなくて席を共にするんですからね。ここには確かな平和がある、それはとても美しいことですッ!」

みやこはそんなことを言う。

「そうかもしれないな」

俺もそのことに関しては同意する。

争うよりも、こうして一緒に肉を食べてる方が気楽なのだから。

「焼けたわよ」

あらいが俺の皿に肉が刺さった串を乗せてくれる。

「ありがとう、じゃ代わりに」

俺は野菜の串をあらいの皿に乗せる。

「どうも、ありがとう」

あらいは礼を伝える。

「しぃにも下さいよぉ」

みやこが要求してくる。

「主催者だものね、はい」

あらいはみやこの皿に肉を乗せる。

「俺も乗せるよ」

俺はみやこの皿に野菜を乗せる。

「うへへ、嬉しいですッ」

みやこは嬉しそうだった。

「全員、行きわたったんじゃないか?」

俺は辺りを見渡す。

「そうね、そろそろ食べてもいいじゃない。

どうなの、主催者様?」

あらいがみやこの顔を見る。

「そうですね、食べちゃいましょう。

それではせ~の、いただきます!」

みやこは掛け声を出す。

「いただきます」

俺は皿を一旦置いて、手を合わせる。

「いただくわ」

あらいも手を合わせていた。

「…ぱくっ」

俺は肉を口に入れる。

「どうですッ?」

みやこが俺の方を見る。

「ぐっ…これは…」

俺は胸を抑える。

それは普通ではないものを感じる。

そして、箸を落としそうになる。

「レン…?」

あらいは俺の方を見て不安そうな目を向ける。

「美味い!」

ぴりっとしたスパイスが胃に言葉を与え、肉をもっとよこせと叫んでいる気がした。

「もう…」

あらいは呆れてるようだった。

「悪い、美味くてよ」

俺の動きは毒が盛られたかと錯覚させてしまったかもしれない。その申し訳なさがあったのだ。

「口、ついてる」

あらいが指摘してくる。

「え?」

俺は何のことだか分からず戸惑う。

「ちょっと待って」

あらいは自分の服の裾で俺の口元を拭う。

「恥ずかしいな、もう」

俺は顔を赤くする。

「うふふ、お母さんみたい、ですッ」

みやこに笑われてしまう。

「とれたと思う」

当人であるあらいは気にした様子は無かった。

「ありがとう」

俺は恥ずかしい思いでいっぱいだった。

「こっちの野菜はどうかしら」

あらいは野菜を口にする。

「どう…かな?」

みやこは何だか申し訳なさそうに見て来る。

「驚いたわ、鉄串に刺してBBQコンロで焼いたナスって甘いのね。角砂糖を齧ったかと勘違いするほどよ」

あらいは気に入ったようだった。

「ほっと…ですッ」

みやこは安心した顔をする。

「良かったな、みやこ」

俺はそう告げる。

BBQは成功したと言ってもいいだろう。

「でも…」

しかし、みやこの顔は憂いがあった。

「どうした?」

俺は尋ねる。

「本当だったら、他にも来たかもしれない。

ですッ…」

みやこは寂しそうな顔をする。

「みやこ…」

このBBQの目的は敵味方問わず集まることだ。

しかし、来たのは俺たちだけ。

それは…成功したとは言い難いだろう。

「雨…」

みやこは空を見上げて言う。

天気が曇り、ぽつぽつと雨が降ってきたからだ。

「お開きじゃない?」

あらいがそんなことを言う。

「そう…ですッ…ね」

みやこはリモコンをポケットから取り出す。

ボタンを押すと、天井のガラス窓が閉まる。

「部屋に戻りましょう」

あらいがそう言う。

「あぁ」

俺たちは中庭から家に戻るのだった。





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