3-5
案内された場所は公園から近かった。
でも、連れてきてもらわないと入ろうとは思えない場所だった。
何故ならば、それは豪邸だったから。
コートハウス型(O字型)
家の中央から木が植えてあるのが外観で分かる。
「これは…驚いたな」
「凄いでしょ、これを見つけた時にここだって思ったんですッ」
「君が買った家…?」
「違います」
「じゃあ、誰の家だ?」
「この家…元は誰かの別荘だったと思います。
でも…もう人はいませんし…周囲にも人は居なかった。
周辺の家にもピンポンをしたんです。
でも、誰も出てこなかった。
悪いとは思いつつも、庭に入って家を覗いたけど、
誰も居なかった。
この世界は人は消えたんです。
管理者ももういないし、電気も水道も自動供給型。
誰も使わないなら使えばいいかなって。
ほら、食料探すのも大変だし、安心して寝られる場所が必要でしょ?」
「なるほど」
彼女の言い分は理解できた。
俺も勝手に人の家を拝借した過去があるし何も言えない。
みやこが特別ズルいことをしてるわけではなく、
合理的な生存判断をしているだけなんだろう。
「だよな」
「それにしても立派な家ですッ」
「そうだな」
普通に生きてたら到底、住めそうにない家だった。
「耐火、耐震、耐疫は大丈夫って
張り紙してました。検査は通ってると思います」
「なら、いいのか?」
「ささっ、どうぞ」
「えっと、お邪魔します」
俺はみやこに案内されるまま家に入る。
我ながら警戒心が無さすぎだと思う。
でも、すでに入ってしまってるのでどうしようもないだろう。
「ふふふ…油断しましたね」
みやこが悪い笑みを浮かべる。
「みやこ…まさかお前」
俺を罠に仕掛けて殺す気…なのか?
「ここ、洋風な感じですけど外靴で入るのは駄目ですよ~」
「…」
がくっとした気分になる。
ダンボールを置いて外靴を脱いで中に入る。
みやこがそんなことをする人間じゃないか。
なんてことを思うのだった。
俺は甘い人間なのかもしれない。
「おかえり」
あろうことか先にあらいが家に居たのだった。
「わっ、来てたんですね」
みやこは驚いていた。
「誘ってくれたじゃない」
あらいはさも当然って感じで答える。
「でも、嫌がってたので驚きました」
みやこはそんなことを言う。
「そう?」
あらいは気にした様子は無かった。
「ちょっと2人きりにしてくれ」
俺はあらいをつれて2人きりにする。
少し離れてみやこが聞こえないだろう距離に移動する。
「キスでもする気?」
「冗談はやめてくれ、それよりもどうして来たんだよ」
「あら、誘ったくれたじゃない」
「そうだけど、警戒してたじゃないか」
「だからこそよ」
「どういうことだ?」
「私が先に侵入した時に、どんな反応するか気になってね」
「増々分からない」
「もしも仮に平和を訴えてる人間が監視カメラを使ってたらどうする?」
「それは怪しいかも?」
「でしょう、監視カメラを使うってことは信じてないってことだもの。このバトルロイヤルの世界で敵が来るかもしれないって警戒してる、つまりは心の何処かで戦う気があるってこと。みやこと会った時に驚きが少なかったら監視カメラで先に察知してたってことでしょ」
「みやこの警戒心を測るために接触した?」
「そういうこと」
「それで結果は?」
「そうね…こちらが来てたことに驚いてた。
監視カメラを設置していたとは思えない」
「やっぱり、みやこは敵じゃないんだよ」
「私も段々とそんな気がしてきたわ」
「それに、俺たちの話を盗み聞きしないように遠くで待ってるじゃないか」
俺がちらと後ろを見ると、みやこはダンボールを持ってにこっと微笑んでくる。こちらの話が終わるのを待ってるみたいだった。
あんな人が殺し合いを望んでるとは思えなかった。
「そうね…敵じゃないのかも」
あらいも折れ始めていた。
「BBQしましょー、中庭でやると楽しいですッ!」
みやこは微笑んでいた。
「警戒を解いて楽しもう、あらい」
「そう…ね」
あらいも信じることに決めたようだった。




