3-3
時刻は夕方。
俺たちは寝床を探す。
公園の近くの民家を漁っていく。
やっぱり、というべきか人の気配がまるでない。
立派な一軒家は数あれど、
そこに住んでる人は一切いない。
やはり、この世界は不思議だ。
「どうしたの?」
あらいが見て来る。
「いや、なんでもない。
それよりも寝床を探すんだろ?」
「そうね」
「見つかるかな」
「道端で寝るのは嫌だからね」
「それもそうだな」
「それに、見張らないといけないし」
「見張る?」
「あの、みやこって女よ。
協力者が居るんじゃないかって思うの」
「協力者って…なんのだよ」
「それは勿論、バトルロイヤルで勝つためのよ」
「ありえるのかね」
「ありえるでしょう、現に私たちは協力してるんだし」
「確かにそうだけど、彼女は戦わない選択をしようとしてるんだ。勝つための協力者は想像できないよ」
みやこという女性が敵を殺そうとするとは思えなかった。
俺は割と甘い考えの持ち主かもしれない。
「本当にそうかしら」
「どういうことだ?」
「仮にだけど、みやこはそのつもりが無くても、
協力者が私たちを殺す気だったら?」
「それは」
「みやこは本気で武器を捨てて平和を手に入れるために手を取り合う気で居る、その本気にやられて武器をこちらが捨てるとするわ。けれど、悪意ある協力者がそのことを利用して武器の無い私たちを攻撃してきたらどう?」
「考えすぎでは?」
「用心に越したことは無いでしょう」
「まぁ、そうだけどさ」
「協力者は名前を伏せて、みやこに接近。
そしてみやこは素直に同意して協力関係を築く。
みやこが純粋に平和を訴えてる間に、その協力者は淡々とこちらの殺害の機会を狙ってる…一番恐れてるのはそれよ」
「だから、寝床を探す?」
「そう、見張るためにね」
「なるほど」
「私たちが帰ったと向こうは思ってる筈。
公園で誰かと落ち合う瞬間を見たら、それは裏切りって考えていいわよね?」
「単に俺たちと同じように煙に釣られた可能性があるだろう」
「庇う気?」
「そんなんじゃなくて、可能性の話をしてるんだ」
「分かった、この話は止めましょう。
平行線だわ」
「…」
本当はもっと言いたいことがあるけれど、
これ以上言ったら喧嘩になりそうな気がした。
だから黙るのが正しいだろう。
「廃屋を見つけましょう」
「あぁ」
俺たちは探すのだった。
近くにあったよさげな廃屋を見つける。
「ふむ」
あらいは廃屋の中を探索する。
「おわっ」
夕日の光が空から漏れる。
「天井に穴が開いてるわね」
「にしても暑いなここ…」
夏場だからだろうか、俺は汗をかく。
「雨が降ったら寝れないわ、却下ね」
「俺も同感だ」
さすがにここで寝たいとは思わない。
星が見えて綺麗だとかロマンチックなことは思わない。現実的に考えて天井が空いてるのは嫌だった。
「次に行きましょう」
「了解」
廃屋Aは諦めて次の場所に向かう。
「ここはどうかしら」
あらいはすぐに別の場所を見つける。
「天井も開いてないし、いいんじゃないのか?」
「でも、引っかかるわ」
「何を気にしてるんだ?」
「出口が玄関だけなのよ」
「玄関があれば十分じゃないか?」
出入りは出来る、問題は無さそうだが。
「玄関を封鎖されたらどうする気?」
「あっ」
俺は驚く。
「気づいたようね」
「むぅ」
玄関を封鎖されたら俺たちは負けだ。
それは確かに困る。
「これも却下ね」
「分かったよ」
「次に行きましょう」
「そろそろ決めないと夜になりそうだな」
俺は疲労を感じてきて、
そんなことを言う。
「ごめんなさい、急いで見つけるわ」
あらいは素直に謝ってくる。
「悪い、責めたかった訳じゃない」
俺は釈明する。
「そう」
あらいは気にした様子はなく淡泊に返す。
廃屋Bを諦めて次の場所に向かう。
「今度こそ決めたいな」
「いい場所ならいいんだけど」
俺たちは新たな廃屋に入る。
「天井も開いてないし、出口は玄関だけじゃなく奥の方にもある」
「逃げ道は確保できそうね」
「これなら問題なさそう…うわっ」
「レン!」
あらいが手を伸ばす。
「あはは…危ねぇ…」
地面が空いて俺は落下しそうになる。
下は真っ暗で何も見えない。
「平気?」
「あらいが握ってくれたからな」
「もぅ」
あらいに引っ張られて俺は何とか地上に戻る。
「寝てる間にこりゃお陀仏だ」
「これは却下ね」
「仕方ないな」
「次に行きましょう」
「了解」
廃屋Cを諦める。
「もう夜になってきたな」
夕日のグラデーションが真っ黒な墨で覆われる。
「次で最後にしたいけど」
「もう最後でいいじゃないのか?」
「だめ、妥協はしたくない」
「だけど、夜中を歩き回る方が危険だ」
「分かったわ、そろそろ貴方を休ませたいし」
「次はいいのが来ますように」
俺は祈りを捧げる。
「ここは…」
中々良さそうな廃屋だった。
「お邪魔しますっと」
俺は中へ入っていく。
雰囲気は良さそうだ。
静かでいい。
電気は通ってないが、我慢できるレベルだ。
「一応、敵が隠れてないか調査しましょう」
「了解」
各部屋の調査を行っていく。
人は居なそうだった。
「そっちはどう?」
「問題ない、この家には俺たちだけしか居ないよ」
「なら、問題なさそうね」
「歩いてみて分かったが、床が軋み音はする。
でも、歩いても壊れ無さそう」
これなら寝てる間にお陀仏は無さそうだ。
「少し湿度が高いわね、風の通りは悪そう、
でも我慢できない程じゃないわ」
「玄関と裏口が確認とれた、逃げ道は確保できそう」
「これなら良さそうね」
あらいの合格点が貰えた。
「じゃ、泊まれるんだな」
「よっしゃ!」
俺は嬉しさのあまり叫んでしまう。
「バカ、何してるのよ」
「むぐっ」
俺はあらいに口を手で押さえられる。
「もぅ」
あらいは呆れていた。
「悪い、悪い」
俺は苦笑する。
「罠を仕掛けておきましょう」
「罠?」
「爆弾でも仕掛けようかしら」
「…マジ?」
「冗談よ、廃屋なんだから私たちも潰れるわ」
「良かった」
爆弾と一緒に寝るのはさすがに怖い。
そうならずに済んでよかった。
「でも、罠は仕掛けるわ」
「何をする気なんだ?」
「シンプルなモノよ」
あらいは扉のドアノブにヒモをつける。
そして空き缶と繋げるのだった。
「これは何の罠なんだ?」
「ドアを開けようとしたら音がなるってものよ」
「あぁ、なるほど」
「これで違和感に気づきやすくする」
「敵が来たら…って訳か」
「そういうこと」
「ふぃ~、ようやく寝れそうだ」
俺は地面に座り込む。
「そうね、ようやく私も休めるわ」
あらいも地面に座るのだった。
宿泊決定だ。
廃屋Dと名付けよう。




