オフィスビルの窓はとても大きい
ヌンチさんは、都心で存在感を放つ高層ビルのようです。
常にテキパキと判断し(選択を間違えたところを見たことがありません)、そのプロセスを口頭で素早く端的にまとめあげ(発光しているように見えます)、伝わっていることを相手に再確認しながら(伝わらなさの責任を両者に押し付けず、常に公平な態度です)、その再確認の過程でより一層具体的な言葉を盛り込み、こちらへ振り向き(振り向く前からこちらと目が合っているような、正確無比な視線です)、デスクに着席したかと思えば、迷うことなく適切な書類をファイルから引き抜き、ミスなく書き込み(筆記音は、私の肘のかゆみやお腹の鳴る音、関節の軋みなどの生理現象と何故だかリンクします)、相手の名前を呼んだと思えば既に次の話に移っており、プリンターに手をかざして用紙が出てくるのを待つ(指先の艶やかなネイルが窓外の景色を凝縮し集めています)。
そんな事務員のヌンチさんの上着を預かった時、ポケットの中からプラスチックのゴミが落ちました。よく見ると衣服の繊維も絡まっています。
私はそのゴミを元のポケットへ戻し、上着を丁寧に畳みました。
ヌンチさんは畳まれた上着を喜んで受け取っていました(濡れた出っ歯が窓外の景色を凝縮し集めています)。
ヌンチさーん