第23話
「こ、こんなに広かったの?」
「昔はね。あっ、昔っていうのはアキシギル第五紀のことなんだけどね。ここでドワーフとガーゴイルの戦争があったんだ」
「第五紀?」
今はアキシギル第六紀だし、第五紀なんて考古学で習うようなものだから、本当に大昔の出来事。そんな昔から、みんな魔物と戦ってきたんだ。
「そうそう。でね、この遺跡がドワーフの首都だったんだ。どうしようも無くなっちゃって手放しちゃったんだけどね」
「へ〜」
「あっ、それで出口のことなんだけど。たくさんあるんだよねぇ」
言われてみれば、あちこちに出口みたいな穴が開いてる。たくさんあるけど、あれが全部そうなら、出口で合流するっていうのは難しいかも。
「お姉ちゃんがどこから出るかなんてわからないよね」
「そうだね。出口は1つだと思ってた」
「まったくも〜。ちゃんと教えてあげればいいのに」
来てすぐにガーゴイルに捕まっちゃったからなぁ。こんなことになるなんて思わなかったし、だけどこれからどうしよう。出口に行けばみんなに会えると思ったのに、これじゃ難しそう。
「あっ、しまった」
「へっ?」
「い、いやぁ。こんなことしたらお姉ちゃんが逃げちゃうかなって」
こんなに大きな炎の明かりを作れるのはメグだけかもしれないから、気付かれてもおかしくないけど。それでどうしてリズさんが逃げたりするんだろう。
「あのさ。メグとリズさんって仲悪いの?」
「ううん。そんなことないよ。とっても仲良し姉妹、ってわけでもないけど。まぁよくいる感じなんじゃないかな」
「じゃぁどうして?」
「ルイスのことになると揉めちゃうんだよね。ファニーってルイスが世界樹の下に行きたがってるのは知ってる?」
それは知ってた。最初に会ったときに教えてもらったことだったから。でもそれが増え続ける魔物をどうにかしたいからってだけじゃなくて、死にたいからっていうことを知ったのは最近だったけど。
「知ってる。それと、死にたいんだよね」
「あっ、そこまで知ってるんだ」
「うん。メグは、ルイスがどうして死にたがってるのかは知ってるの?ルイスもリズさんも教えてくれなくて」
「それがわからないんだよね。ほら、私達って長生きじゃん?だからルイスと距離が空いちゃってたときがあったんだけど、再会したら死にたがってた」
同じ賢者のメグも知らないんだ。でも青の賢者のリズさんは知ってる。一体なにがあったんだろう。
「第五紀の終わりに魔物が大量発生したことがあって、私もここで戦ってたんだ。それが終わったらルイスが封印されてて、もうわけわかんない」
炎の明かりが大きく揺れてる。今話すことじゃないかもしれないけど、ルイスのことになるとどうしても気になっちゃう。
「ちょっと話が逸れそうだけど、メグってルイスが死にたがってるのをどう思うの?」
「そんなの止めたいに決まってるじゃん。それでまたみんな仲良く暮らしたいよ。なのにお姉ちゃんは逆に応援してるんだよ?いくら嫌いだからって酷いじゃんね」
「じゃんね〜」
真剣な話が始まったなってところでア~ちゃんに割り込まれる。思わずまた吹き出しそうになっちゃって、今日は自分でも意味が分からないくらい笑いの壺が浅い気がする。
「お~妖精ちゃんはわかってるね~」
「妖精ちゃんじゃないもん。アスチルベって言うんだもん。ア~ちゃんって呼んでね」
「ア~ちゃんね。ア~ちゃんも死にたいなんて良くないと思うよね」
「黒の賢者なんてどうでもいいもん。でも死んじゃったらファニーちゃんが悲しむから助けてあげるの」
「ちょ、ちょっとア~ちゃん?」
また余計なことを言い出しそう。メグになら聞かれても良いっていうか、相談に乗ってくれそうな気もするけど、まだそこまで踏み出せない。
「へ~、じゃぁさじゃぁさ、一緒にルイスのこと問い詰めちゃおう」
「一緒に?」
「そうそう。理由を聞かないことには始まらないからね」
理由かぁ。知りたいけど知りたくないような。死にたいって考えちゃうような理由を聞いて、ちゃんと受け止めきれるかな。興味本位で聞いちゃいけないことな気がする。
世界樹の下に辿り着いて、魔法と永遠の命を手に入れている。だから欲しいものは全部手に入るだろうし、やりたいことをいくらでもできる。それを全部捨てて死にたいだなんて。
理由を知ったとして、私に理解できるのかな。もしかしたら、なにも理解できないでルイスとの距離がすごく大きくなっちゃうかもしれない。
でも気になる。ルイスと同じように魔法を使えて、永遠の命を持っているメグにとっては違ったりするのかな。




