第21話
「出口ないね〜」
「う〜ん。ちゃんと近づいているんだけどなぁ」
風の音は強くなってきてるから、出口には近づいているはずなんだよね。あとちょっとのはずなんだけど、そのちょっとが遠い。
「あっ、待って」
「ん~?」
「誰かいる」
かすかに聞こえる足音は、近づいたり遠ざかったり。誰かが探しに来てくれたんだ。真っ暗で誰なのかまでは見えないけど、ここは本当なら誰も来れない壁の向こう側だから、知らない人のわけない。
「行こう。私たちに気付いていないかも」
「だれ~?」
「わっかんないけど。大丈夫じゃない?」
心配することはないと思うんだけどな。気になることといえば1人だけってこと。こういう時に一緒に行動しないなんて、きっとリズさんかカルミアさんかな。
「やな感じがする」
「えっ?もしかして魔物?」
「む~。そうじゃなくて。多分、賢者だよ」
ってことはリズさんなのかな。すごく嫌がってるみたいだけど、でも行かないわけにはいかないよね。
「あのね」
「わかってるもん。賢者と一緒の方が安全だもんね」
「そ、そうだね。よしよし」
「へへ~ん」
もうドワーフはいないわけだし、リズさんだって前みたいなことはしないはず。それに、あんまり想像できないけどリズさんが道に迷っちゃってるのかも。
「あの~。リズさんですよね。こっちです」
暗いドワーフの遺跡の中で、思ったより声が響く。そして私の声は、ちゃんと届いたみたいで明かりが灯る。
ルイスが使っていた魔法の明かりじゃなくて、炎の揺らめく明かり。だんだん近づいてくる。静かで落ち着く真っ赤な炎。
「やっほー。こんにちは♪」
「こ、こんにちは」
リズさん、じゃない。とてもよく似てるけど、雰囲気が全然違う。それに赤い炎のせいかもしれないけど、髪の色も青じゃなくて赤。
「あっ、はじめましてだったね。私はね、メグ。よろしくね♪」
「えっ、あっ、はい。ファニーです」
メグさんって言うんだ。でもちょっと待って。ここには私達しか入れないはずなのに、どうして?ア~ちゃんは賢者だって言ってたけど、だからって来れるわけじゃないはず。
「あの、メグさんって賢者なんですか?」
「ん~、メグって呼んで欲しいな。さん付けなんてよそよそしいじゃん」
「そ、そうですか?じゃぁ、メグって賢者なの?」
って確認はするけど、多分賢者なのは間違いないと思う。近くで見たら炎の明かりも、たいまつとかで点けてるんじゃなくて、宙に浮かんでいる入れ物の中にある。
「ふふ~ん。驚きなさい。私は赤の賢者メグ。その昔、世界樹の下で魔法の力を手に入れた8人の賢者の1人よ。どうどう?」
「えっ、えっと。やっぱりそうだったんだね」
「え~?反応薄くな~い?張り合いないなぁ」
「あはは」
だってもう2人の賢者と知り合いだから。こんなところで会うことになるなんて思わなかったから、そこは驚いたところだけど。
でもどうしよう。リズさんの話だと、味方なのはあと白の賢者だけ。赤の賢者ってことは、ルイスの敵で、世界樹の下に行くことに反対で、もしかしたら力づくで止められるかも。そんな悪い人には見えないんだけど、きっとそういう問題じゃない。
「ねぇ。今度は私の番よ?リズって、青の賢者のこと?」
「う、うん。まぁ」
「へっ?本当にお姉ちゃんのことだったの?」
「お、お姉ちゃん?」
「そうそう。私のお姉ちゃんって青の賢者なんだぁ」
リズさんの、妹?だからこんなに顔が似てたんだ。表情が全然違うからわかりにくいけど、よく見ればそっくり。
「もしかして、お姉ちゃんと一緒に旅してるの」
「あっ、うん」
「うわぁ。大変じゃなかった?というより、お姉ちゃんはどこ?ファニーのこと放ったらかしちゃって」
「私がドジっちゃったんだよね。ガーゴイルに捕まって、連れ去られちゃったから」
今思えば、あんなわかりやすい罠に引っかかっちゃうなんて。もっとガーゴイルのことを聞いていればこんなことにならなかったのにな。
「ガーゴイルに?お姉ちゃんがそんなミスするのかなぁ」
「他にも人がいたし」
「ん?」
ルイスも一緒だって言っていいのかな?リズさんの妹だって、嘘ついてるようには見えないし、でも白じゃなくて赤ってことは敵のはずで、だけど悪い人には見えなくて。
「ファニー?どうかした?」
「お、怒らないで欲しいんだけど」
「へっ?怒らないよ、なんで?」
「今は5人で旅してて、リズさんと、ガーダンのティーブと、白の賢者の四天王のカルミアさんと、ここにいるア~ちゃんと。あと、黒の賢者のルイス」
言っちゃった。良くなかったかな。昔だったら言わなかったと思う。だけどなぁ。ルイスが世界樹の下に行きたい理由が、魔物のことだけだったら良かったんだけど。死ぬことが理由なんて知っちゃったら素直に応援していいのかわからなくなっちゃうよ。
「ルイスがいるの!?お姉ちゃんと!?」




