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第20話

 ア~ちゃんの声が洞窟に響く。石像の目が光る。


 「ファニー様!下がって!!」


 跳んで下がっても、間に合わない。ティーブの声が一瞬だけ聞こえる。


 「ちょっ、いやっ」


 すごい力。引き剥がせない。さっきまで石像だったのに、これが壁の向こうの魔物ガーゴイル。かぎ爪で掴まれて大きな翼で飛んでいて、信じられない速さで運ばれていく。


 「いい加減に、して」


 細剣を使うのは久しぶり。この距離なら外すはずないけど、どこを狙えばいいの。体のほとんどが石みたいで、軽く叩いても細剣の通る気がしない。


 「ファニーちゃん、アゴ下」


 そう言われても。ここからじゃ狙いにくい。落っことしそうで怖いけど、細剣を逆手に持ち変えるしかない。


 「これで!」


 ガーゴイルのアゴ下に細剣を突き立てる。石じゃなくて、肉を斬る感触。すごい血しぶきで、もがき苦しんでいるけど、まだかぎ爪は外れない。上下に大きく揺れていて、今にも地面に叩きつけられそう。


 「だから、いい加減に」


 それでもちょっとは緩くなってる。だから体勢を変えてから、ガーゴイルの体を思い切り蹴る。


 「ファニーちゃん!?」

 「大丈夫」


 ちゃんと大丈夫なようにしてる。暴れるから難しかったけど、飛んでいた方向に、なにもないってわかってる方向に逃げれた。あとは着地のときに受け身を取れるかどうか。


 「掴まって!」

 「ア〜ちゃん!?」


 いつの間にか離れていて、上を飛んでる。こんなに小さな体に掴まって大丈夫なのかって、思った瞬間に体が一瞬軽くなる。ほんの少しだけど、ア〜ちゃんが浮かしてくれたみたい。


 「よっと。ありがとう、助かったよ」

 「へへ〜ん。まっかせてよ」


 おかげで簡単に着地できちゃった。浮かしてくれたっていうのもあるけど、飛んでいた速さをほとんど無かったことにしてくれたから。そしてまた手の中に入ってくるア〜ちゃんのほっぺたを、嬉しくなって突っついちゃう。


 「ふぇぇ〜」


 なんだか嬉しそう。それにしても、すごい距離を運ばれちゃったみたいだけど、ここはどこだろう。ルイスの明かりも見えなくなっちゃってて、何も見えない。頼れるのは聞こえてくる音だけ。


 「ファニーちゃん?戻れる?」

 「う〜ん」


 ガーゴイルがあんな速さで飛んでいたわけだから、それなりに広い道が続いているはずだよね。それに、ほとんど真っ直ぐに飛んでいたはずだから、道を間違えることはあんまり考えられない。


 だけど、飛んでいた道をそのまま戻るのは不安。


 「ねぇねぇ」

 「あっ、うん。えっと、どうしようかなって」

 「戻るんじゃないの?」

 「そうしたいんだけど」


 もしここが森の中だとしたら、来た道を戻れば大丈夫なんてことないんだよね。獣道なんてわかりにくいから、知らない間に全然違う方向に行っちゃう。


 洞窟の中も同じこと。ううん。初めてくるところで、真っ暗でなにも見えなくて、そんな状態で結構な距離を運ばれちゃってる。方向は合ってたとしても、戻れるとは限らない。


 「出口を探そ」

 「ん〜?あっちじゃないの?」

 「うん。道がわからないから、戻るより出口を探した方が良いと思う」

 「ふ〜ん」


 って言っても出口がどっちかなんて知らないんだけどね。だけど集中して音を聞き分ければ、きっとわかることがあるはずだから。


 なにも見えなかったとしても、なにもわからないわけじゃない。深く息を整えれば、だんだん周りがわかってくる。ここはまだドワーフの遺跡の中のはず。建物の中みたいな音の響きからわかる。遺跡だとしたら、過去に使われていた出入り口がどこかにあるはず。


 「こっち」

 「わかるの?」

 「風の音が聞こえる」

 「へ〜」


 それは良いんだけど、本当に真っ暗でなにも見えない。ちょっとずつしか進めなくて、立ち止まりながら方向を確かめるんだけど、そのたびに聞こえる風の音はほとんど変わらない。


 「ふっっふふんっふふ〜〜ん」

 「ア〜ちゃん?」


 元気な鼻歌だな。じゃなくて、音だけが頼りなのに、これじゃ先に進めない。


 「ん〜〜?」

 「た、楽しい?」

 「うん。だってファニーちゃんと2人きりなんて久しぶりなんだもん」

 「そ、そうだったね」


 ドワーフの地下都市に着いてから、ア〜ちゃんと話す時間が無くなっちゃってたな。武闘大会で優勝しなきゃいけなかったからだけど、だとしても寂しかったのかな。


 というより、そんなこと言ったら、私だって寂しかったのに。


 「じゃぁ一緒に歌いながら行こう」

 「ほんと?やった〜」

 「あっ、でも迷わないように静かにするときは静かにしてね」

 「は〜い」


 ガーゴイルは怖いけど、こういう時はリラックスしないと。じゃないといつもだったら絶対しないようなミスをしたりする。


 時々立ち止まって風の音を確認して、歩いている間は一緒に歌って、出口に向かって進んでいく。


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