第18話
「おいおい。ルール違反じゃねぇか」
「ルール違反?」
「おぅよ。武器は1つだけだ。魔法だかなんだか知らんがポンポン出しやがって。失格だ失格」
あんなに静まり返っていた闘技場が、今はブーイングの嵐。決まりごとを大切にするドワーフの前でルール違反をしたわけで、今にも飛び出して殴りかかりそうなくらいみんな怒っている。
「あ、あの。みんな大丈夫ですか?」
「んぁ?」
「えっと、怖いなって」
「あぁ。心配すんじゃねぇ。他人を傷つけちゃいけねぇって決まりだからな。俺らは決まりごとを破ったりしねぇよ。俺らはな」
本当なら表彰式の準備が始まるはずなのに、今は闘技場の中心にドワーフ達が集まってずっと話している。遠くでよく見えないけど、みんな分厚い本みたいなものを片手に頭を抱えているみたい。
「どうなるのかな?」
「まぁ、ガーダンの勝ちだろうな。仕切り直しにするか考えてんだろうよ」
ヴィンダーさんによると、同じルール違反でもワザとじゃなかったら試合がやり直しになることもあるみたい。だけど今回はこのまま優勝が決まるだろうって話。少しずつ小さくなっていくブーイングの中で、どんな結論になるのか待った。
「よ〜し、よしよし。そりゃそうだわな」
優勝はティーブで決まり。なんだかパッとしないことになっちゃったけど、これで壁の向こうに行けることに変わりはない。それは良いんだけど、あの白い甲冑の女の人は誰なんだろう。
「終わったわね。じゃぁ行くわよ」
「リズ。その前にアイツは何者なんだ?」
「本人に聞けば?」
リズさんはいつも以上に不機嫌そう。1人でどんどん先に行っちゃうから、置いてかれないようにしないと。
闘技場をどんどん進んで、その先にいたのは白い甲冑の女の人。今は兜を脱いでいて顔がよく見える。リズさんは美しいって感じだけど、そうじゃなくって優雅な雰囲気。
「一体どういうつもりなの?」
やっと追いつくとリズさんは腕組みしながら問い詰めている。知り合い、なんだと思う。横から見ているだけで鳥肌が立つほどの剣幕で近寄りづらい。
「運命の唄に呼ばれたのです」
「はぁ!?」
「そう、私は剣の花。はかなく散る命。耳をすまして下さい」
「質問に答えなさい」
「あぁ、ガーダンの棺の中で狂い咲かんとするタンポポ。根深く生えているはずなのに、綿毛となって旅立たんとする。そう、彼はタンポポ」
「ねぇ。誰か翻訳してちょうだい」
タ、タンポポ?ティーブのことなんだろうけど、難しいというか、そもそもわかるように話してくれてないというか。
「ティーブ。なにかあったの?」
「いえ。特に」
試合のときになにかあったのかなって
「君が唄ったんだね」
思ったんだけど〜、近い。近いって。まつ毛の数を数えられるくらい近い。後ずさって後ずさって、後ずさっても全然離れてくれない。壁に背中が当たっちゃって、顔を覗き込まれて、額がくっつきそうになって、アーちゃんが割って入ってくれる。
「わ~。よるな~」
「ほほう。なるほどなるほど」
「なにをしてるのよ。来なさい」
リズさんが引き剥がしてくれて、まだドキドキが収まらない。
「大丈夫か?ファニー」
「う、うん」
「君の唄がガーダンを綿毛に変えようとしているんだね。大丈夫。タンポポの根は深いけども、綿毛になれれば飛び立てるよ」
「え、えぇ?」




