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第16話

 そういえばティーブと2人きりになるのは久しぶりだな。ゆっくり話しながら歩く道が楽しい。ティーブには次の試合があるから、ちゃんと準備するように言ったら闘技場に戻っていった。それから宿に戻るまで昔のことを思い出しながら帰って部屋に入る。


 「ファニーちゃ~ん。おかえり~」

 「ただいま~。あれ?1人なの?」


 アーちゃんが側にいてくれる今も楽しい。でもこの旅は、楽しむだけじゃダメだから。ルイス達はいないかなって見渡すけど、まだ戻ってないみたい。ほったらかしにするなんて、まぁイタズラしないって信じてあげてるんだろうけど、それならそれで連れて行ってあげればいいのに。


 「ねぇねぇ。もうヤダ」

 「ん?」

 「賢者2人と一緒はイヤ」

 「あ~うん。これからは一緒だよ」


 もう負けちゃったから。アーちゃんをルイスに預ける必要はない。ティーブの試合は見に行きたいから、そのときにどうするかはあとで相談しないとな。


 「本当~!?」

 「うん、本当」

 「やった~。ん~?試合は終わったの?」リズさん

 「あぁ、そうだね。負けちゃった」


 負けたっていうか、戦えてすらいなかったっていうか。ちゃんと準備してたらもっと良い勝負になったのかな。


 「え~!?ひど~い。だれがファニーちゃんをイジメたの?」

 「それは、ティーブなんだけど。あとイジメじゃなくて試合ね」

 「ん~~?ファニーちゃんのガーダンのこと?」


 アーちゃんは試合のことをなにも知らないからな。今日の試合はティーブだったけど、その前にドワーフと戦っていたって言ったらどう思うんだろう。ずっと宿で留守番してもらっていたけど、私と一緒なら大丈夫だったりしないかな。


 「ねぇねぇ。ティーブってファニーちゃんのガーダンなんだよね?戦えたの?」

 「う~ん、どうだろう」


 なんとなくだけど、2試合目からのことを話したくなった。胸の奥につっかえているものを、誰かに聞いてもらいたいからだろうな。話していくとアーちゃんの頬っぺたがドンドン大きくなっちゃう。


 「青の賢者め。む~。ファニーちゃんをイジメるなんて」

 「でもリズさんにも事情があるみたいだから」


 ルイスのことを、世界樹の下へなんとしてでも連れて行きたい。その気持ちだけは伝わってきたし、どんな卑怯なことをするっていうのも私はしたくないけどリズさんを止めようとも思えなかった。


 「ちょっと変だよね」

 「そ、そう?」

 「だって、黒の賢者は魔物と戦うために世界樹の下へ行くんでしょ?青の賢者がそこまでして連れて行こうとするのはどうして?」

 「えっと、それは」


 どうなんだろう。アーちゃんの言いたいことって、ルイスは世界樹の下へ行きたいだけであって、行く必要があるわけじゃないってことだよね。でも魔物が増え続けたら世界が大変なことになっちゃうし、私と違って賢者の2人はずっと生き続けるわけだから、とても困ると思う。それにルイスじゃないと魔物を止められない理由があるのかも。


 「でも魔物と戦うのは必要なことでしょ?」

 「ぶ~。黒の賢者ってさ、青の賢者に騙されてるんじゃないの?」

 「アーちゃん。いくら嫌いだからってそういうのは良くないよ。まぁやり方はどうかと思うけどね」

 「む~。青の賢者のやつ、ファニーちゃんをイジメるだけじゃなくって、黒の賢者まで奪おうとするんだよ」


 う、奪うって。別に私とルイスはそんな関係じゃないっていうか。余計なことを言わないようにまたお願いしないといけないのかな。


 「あ、あのね」

 「だって、すぐ抱きつこうとするんだもん」

 「えっ?」


 言いそびれちゃった。じゃなくて、知らない間にそんなことしてたの?最初に再会したときは、気持ちを抑えられなかったとかあるかもしれないけど、ずっとだったんだ。


 「ルイスは、いつの間にか抱きついてくるようになったって言ってたけど」

 「なにそれ?ヘンタイじゃん」

 「ヘ、ヘンタイ!?で、でも理由があるみたいだよ。ルイスも知らないらしいけど」

 「だからなに?ヘンタイじゃん」


 そ、それは。まぁ理由なんて思いつかないけど、賢者ってすごく昔から生きているわけだから、なにかあるのかも。


 「取られる前にファニーちゃんも抱きついちゃえば?」

 「え、えぇ?それじゃ私もヘンタイになっちゃうじゃん」

 「ファニーちゃんはいいの。だって黒の賢者のことが好きなんでしょ?」


 だ、だとしても。トロッコの中でしがみついたりしたけど、あれは仕方がなかったっていうか。それに突然そんなことしたら、ルイスにどう思われるんだろう。

 「リズさんもルイスのこと好きなのかも」

 「絶対ない。青の賢者は黒の賢者に死んで欲しいんだよ」

 「死、え!?それ本当?」

 「聞いちゃったんだもん。青の賢者のやつ、黒の賢者に死になさいって言ってたんだもん。死んで欲しいくらい嫌いなのに抱きつくなんてヘンタイじゃん」


 そ、そんなこと言ってたの?2人の関係がますますわからなくなっちゃう。気安く聞いていいことにも思えないし、どうしたらいいんだろう。


 宿に誰かが入ってくる音がした。ルイスとリズさんの話し声が聞こえてくる。アーちゃんはまだ怖がってるみたいで、すぐに私の手の中に隠れにくる。


 「あれ?ファニーも戻ってたんだ」

 「う、うん」

 「あぁ。まぁそんなに落ち込まなくてもいいんじゃないかな」


 そうじゃなくて、ティーブに負けたことも気にしているけど、それだけじゃなくて。もうわけがわからなくなってくる。こういうときは目の前のやらないといけないことをもう一度考えよう。


 ドワーフの国を襲っている魔物ガーゴイルのことを調べに壁の向こうに行く。それに集中しながら、少しずつ考えていこう。


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