第13話
数日後の本選当日。1位通過した私とティーブはシード権を持っているから、トーナメント初戦を一緒にゆっくり観戦できる。戦うところを見られるっていうのは不利なことだけど、それも含めて1位の人には有利ということ。
ドワーフ同士の4連戦で会場は大盛り上がり。無骨なハンマーで殴り合っていて、見てるこっちが痛くなるくらい激しい殴り合い。
遠い人間の国でこういう殺し合いが人気だって聞いたことがあるけど、私はちょっと好きじゃないかも。見てられないってわけじゃないんだけど、なんだか物足りない。私自身がずっと戦ってきたからだろうな。
「ねぇティーブ。明日勝てそう?」
「そうですね。この闘技場の広さは戦いやすいです。同じような武器を使ってくるのであれば問題ありません」
10m四方の狭い闘技場。ハンマーがぶつかり合う激しい音が響いていて、近接戦なら十分な広さ。でも弓を使いたい私にとっては狭すぎる。
「あっ、決着?」
「はい。ファニー様の次の対戦相手が決まりました」
一際大きな歓声と、高々とハンマーを掲げて咆哮している勝者のドワーフ。敗者のドワーフは血だらけで倒れている。大丈夫だって聞いているけど、それでも心配。
勝者は満足したみたいで、ハンマーを担いで出ていく。その後に闘技場が淡く光る。敗者のドワーフが静かに起き上がり、また歓声が上がる。負けちゃってガッカリしているけれど、弱々しく手を振りながら出ていった。
「終わったね」
「はい」
ティーブの相手が決まるのは最後の試合。それまで変わり映えのしないハンマーの殴り合いが続いて、最後までそんな感じ。ヴィンダーさんは戦い方に特徴があるみたいなことを言っていたけれど、ハンマー使いにはわかるかもしれないけど私達には違いがよくわからなかった。
「わ〜い。おかえり〜」
宿ではルイスがゆっくりしていて、アーちゃんが手の中に飛び込んでくる。ずっと待ってもらってて、暇にさせちゃってるな。そういえばリズさんはどこかに行っているみたいだけど、アーちゃんのことで気を遣ってくれたのかな。でもそれより、大事なのは明日のこと。
試合中もずっと考えていたことだけど、あのハンマーを1回でも当てられたら危ない。ちゃんと戦い方を考えておかないと。
◇
翌日の私の試合。昨日より大きく聞こえる歓声の中で闘技場に立つ。10m四方の場所に立ってみると、思ったよりもっと狭い。2、3歩踏み込むだけで攻撃が届きそう。
対戦相手は昨日見たドワーフ。ハンマーを担いで入ってくると、闘技場がもっと小さくなったみたい。
向かい合って、お互いに武器を構える。私の弓を見て、相手のドワーフは構えを変える。開始直後に飛び出してきそうな突撃体制。
でも、それでいい。
弓を見た相手が、飛び込んでくるのは予想できる。こんな狭いところじゃ距離をとろうにも限界がある。だから一気に接近して終わらせる。そう考えるのが普通。
それを逆手に取る。
構えたまま開始の合図を待つ。一瞬で決着するはず。だって私は突撃してくるのに合わせて前に出るつもりだから。
ただ意表をつくだけじゃない。そのまま回り込めば、一射する余裕くらいはできるはず。それでどこを狙うのか。頭を狙って一撃で終わらせてもいいし、胴体を狙って確実にダメージを与えてもいいし、下半身を狙って動きを封じてもいい。
開始の合図。
ドワーフが動き出す前に、弓を思い切り投げてから逆に飛び出す。一本の矢を握りしめて、相手の目を突くように攻撃する。弓を目で追いかけていて少し上を向いていたドワーフは、そのまま反り返すように逃れようとする。
大きくのけぞるドワーフの上体。
前に飛び出すための構えで、後ろに仰け反るドワーフ。最初から前に飛び出すつもりで、そのまま前に出ている私。
前転しながら距離をとる。
着地点に弓が落ちてくるようにしている。練習通りに弓をつかみ、構えながらすぐに振り向く。まだ体勢を整えきれていないドワーフを狙う。
頭を狙うつもりだったけど、ギリギリで変える。
片足を射抜く。
立ち上がれないドワーフに狙いを定め続ける。自分の足をゆっくりと確かめていて、それが終わるとハンマーを置いて両手を上げた。
降参が認められて決着。会場は初め静まり返ってしまうけれど、すぐに歓声があがり大きくなっていく。一瞬の決着は狙い通りだったけど、最後の最後でためらっちゃった。
鳴り止まない歓声を後にして相手のドワーフの怪我が治るまでちゃんと見てから、みんなの所に向かった。




