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第10話

 リズさんは腕組みしながらルイスのことを睨みつけていて、空気が一変する。アーちゃんは怖がって隠れちゃうし、ヴィンダーさんもあたふたしてる。


 「別に問題ないだろ。壁の向こうに行きたいって話してたわけだし」

 「目立つのはダメだって言ってるじゃない」

 「大丈夫だって」


 返事を聞いたリズさんは目を見開いて、そして手の平から水の魔法が浮かぶ。ルイスに向けられた水の魔法は、鞭のようにしなっている。


 「絶対ダメよ。ルイスが全盛期の力を取り戻しているなら、なにも言わないわ。でも今はダメ」

 「他の賢者を気にしているんだろ。どうせすぐバレる」

 「言うことを聞かないなら、引きずってでも世界の麓に連れて行くから」


 冗談で言っているわけじゃないってことは、リズさんの目を見ればわかる。ルイスのことだけをずっと見つめる真剣な目は、全然ブレない。


 「いくらリズでも無理だよ」

 「そうね。でもこんなところでバレるよりマシよ」

 「少し心配し過ぎなんだよ」

 「いいえ。ルイスに白の賢者が味方だって言ったのは失敗だったかしら。楽観視しないで頂戴」


 水の鞭が波打っている。リズさんが本気を出したら、この場の誰も逆らえない。見守ることしかできない私は、ここで世界の麓へ行く旅が終わってしまわないように祈るだけ。


 「白の賢者のことは、言わないんじゃなかったのか?」

 「ルイスが無茶しようとするのがいけないんでしょ」

 「俺は別に」

 「この際、目立つというのがどれだけ危険なのか、わかってもらいましょ。よく聞いて。私たちの味方は、あと白の賢者だけ。他の5人の賢者はみんな敵だし、世界の麓に行くことを血眼になって止めてくるわよ」


 ルイスは苦い顔をしている。初めてリズさんに会ったとき、ルイスと2人だけでなにかを話していたけれど、このことだったのかな。


 心のどこかで考えないようにしちゃってたことだけど、賢者の魔法は想像以上に強そう。ずっと封印されていたルイスが本調子じゃないのは知っていたけれど、アーちゃんによると比べられないくらい差があるみたい。


 敵っていう5人の賢者が全員、リズさんと同じくらい強いんだとしたら。ルイスは力を取り戻せていないから2対5ってことになっちゃう。たとえ力を取り戻せたとしても3対5。


 「ねぇ、ルイス」

 「悪かったって。ファニーに心配かけたくなかったんだ。せっかくの旅なんだから」


 責めてるんじゃなくて、気を遣い過ぎないで欲しいだけ。世界の麓へ行くっていうのは大事なことなんだから、こういうことはちゃんとしないと。


 「私は別に、世界の麓に行けなくても大丈夫だけど。ルイスはちゃんと着かないといけないんでしょ?」

 「まぁ、な」

 「じゃぁ武闘大会には私だけ出るね。負けちゃったら、他の方法を考えよ」


 自分の生き方を探すために世界の麓へ行く私と、増え続ける魔物を止めるために世界の麓に行くルイス。目的地は一緒だけど、理由が全然違う。それに、私は辿り着けなくてもいいけど、ルイスはそういうわけにはいかない。


 「そうね。ファニーの言う通りにしましょ」

 「わかったよ」

 「なんか悪ぃな」


 揉めごとみたいになってたから、ずっと黙っていたヴィンダーさんが口を開く。別に謝る必要はないというか、世界の麓に行くことに反対している賢者が悪いだけ。どっちにしても魔物を放っておく気はなかったし、壁の向こうに行く方法を教えてくれてありがとうって言いたいくらい。


 「気にしないでください。でも、勝てるかはわかりませんよ?」

 「んなこたねぇ。ガーダンの弓を使えるってことは、ガーダン並みに強ぇってこった。嬢ちゃんはもっと自信を持った方がいいぞ」

 「そ、そうですかね」

 「あのなぁ。前にも似たようなこと言ったけどよ。賢者だのガーダンだのと張り合うってのがそもそも間違ぇなんだよ」


 そうやって励まされながら、武闘大会についてもっと詳しく教えてもらう。


 参加は誰でも出来るみたいで、ヴィンダーさんが代わりにやってくれることになった。毎年けっこうな人数が参加するから、予選が開かれてる。毎年内容は決まっているけれど、地力が試される単純な課題だから対策とかは必要ない。


 1回しか開かれない予選でほとんどの人がふるい落とされて本選が始まる。本選は1対1で直接戦うトーナメント。


 「え?それって弓で戦ってもいいんですか?」

 「見たことねぇが、問題もねぇ。エルフが作った闘技場で、あんまし広くねぇんだ。その代わり怪我はしねぇから、心配すんな」


 エルフに作ってもらった闘技場の中だと、魔法の力でどんなに怪我しても大丈夫なようになっているみたい。だけど1年に1回しか使えないし、それに狭い。弓みたいな距離をとって戦う武器は不利ってことだけど、下手に細剣で戦うより弓の方がいいはず。


 「んじゃ。エントリーは任せてくれ。今日はちゃんと休んどけよ」


 気づけば地下都市が暗くなっていく。外と同じように昼と夜を再現してるみたいで、天井の明かりが少しずつ消えていく。予選まであんまり時間がないみたいで、弓矢の準備とかを整えないといけない。


 そしていよいよ、予選が始まる。


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