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第9話

 「なにかあったんですか?」

 「お、おう。魔物に襲われてるってのは本当みてぇでよ」


 と言いながらヴィンダーさんは椅子に座って残り物を食べ始めた。もう冷えちゃってたから新しいのを注文しようとしたんだけど、すぐに地下都市に向かいたいからって断られちゃった。


 ルイスの魔法でアーちゃんを隠してもらってから、急かされるように地下都市に入っていく。手続きは全部終わっているみたいで、引き止められることもなく進める。外で待ってくれていたリズさんと合流して、ちょっと気まずい雰囲気。


 「嬢ちゃん」

 「は、はい」

 「悪ぃんだがよ。ちょっと頼みごとを聞いちゃくれねぇか」

 「もちろんですよ。遠慮しないでください」


 ずっとお世話になってるし、改まったりしなくても助けるに決まってる。ドワーフで溢れかえってる道を歩いていく。人間3人にガーダン。たとえ賢者だってことを知らなくても目立つみたいで、道行くドワーフがこっちを見てくる。


 みんな、リズさんが気になるみたい。綺麗な人だし、それにドレスを着て歩いている人なんていないから余計目立つ。


 「とりあえず宿に案内するぜ。そこで詳しく話す」


 地下都市といっても天井がとても高いし、しかもここに来るまでに見た明かりがたくさん光っていて真昼みたいに明るい。


 もっと武器屋とかがたくさん並んでいるのを想像してたんだけど、思っていたのとは違う。食堂みたいな場所が多くて、たまに道具屋があるんだけど鍛冶用のハンマーとかドワーフの仕事道具しか見えない。


 「なにキョロキョロしてるの?」

 「あっ、弓とか売ってないかなって、気になっちゃって」

 「あぁ、そういうこと。ここはドワーフの街なんだから、人間用の武器なんて売ってないわよ」

 「へ、へ〜」


 リズさんに話しかけられるなんて思わなかった。いつの間にか身構えちゃった自分がいる。このままじゃ仲良くなれないってわかってるんだけど、どうしても話しにくい。


 「着いたぜ」


 到着した宿に用意されていたのは2つの部屋。ルイスとティーブ、リズさんと私。ヴィンダーさんは自分の家に帰るから、部屋割りは男女別。ということは、リズさんと2人きりになるわけで、しばらく気まずい雰囲気が続きそう。


 「む〜」

 「アーちゃんはティーブと一緒?」

 「ん〜〜〜」


 とっても嫌そう。だけどこれはしょうがないし、どうするか選んでもらわないと。


 「ルイスと一緒の部屋にすればいいんじゃない?」

 「えっ?いや、そういうわけには」

 「そう?」

 「リズ。あんまり困らせるようなこと言うなって」


 リズさんって、どこまで本気で言ってるのかわからなくなるんだよね。いくらなんでもルイスと2人部屋はちょっと。ティーブとならまだ、いやそれもダメ。


 「荷物を置いたら来てくれや」


 結局、男女別に部屋に入ることになる。アーちゃんはまだ悩んでるけど、今は先にヴィンダーさんの頼みごとを聞かないと。宿には談話室もあって、みんなでテーブルを囲む。


 人間のお客さんって全然いないんだな。広い部屋なのに、私達しかいない。


 「早速なんだがよ。大会に出てくれねぇか?」

 「た、大会?なんのですか?」


 いきなりだったけど、よく話を聞くと要するに魔物を退治して欲しいっていう頼みごと。質問しながら頭の中を整理していく。


 まず驚いたというか心配になったのは、ヴィンダーさんの知り合いも魔物に襲われていたって話。大事にはならなかったらしいけど、それでも怪我して大変だったみたい。


 ドワーフの間でも壁の向こうでなにかがあったんじゃないかって話はあるみたいだけど、それでも決まりごとだから向こう側に行けない。そもそも、魔物と戦えるドワーフが少ない。


 ならどうしたらいいのか。地下都市では毎年、武闘大会が開かれていて、優勝すれば決まりごとを破れるようになる。犯罪は無理だけど、それ以外の決まりごとだったらなんでも破れるから、壁の向こうにも行けるようになれる。


 ヴィンダーさんの頼みごとは、その武闘大会に優勝して壁の向こう側を見てきて欲しいっていうもの。


 「情けないわね。自分で出ればいいじゃない」

 「俺だって参加するさ。でもよぉ、鍛冶師の俺が優勝できるようなもんじゃねぇんだよ」


 ドワーフにとって決まりごとを破れるっていう優勝賞品はとても魅力的。だから毎年腕自慢が集まっていて、ヴィンダーさんだと優勝どころか予選突破も難しいみたい。


 「嬢ちゃんたちなら優勝も狙えるはずだ。壁の向こうに行きたいなんて酔狂なこと言う奴は他にいねぇんだ。俺だって、自分が優勝できるならそんなこと言わねぇ」

 「う〜ん。話はわかったんですけど、人間の私が出ても大丈夫なんですか?それにルイスとリズさんは賢者ですよ?」

 「問題ねぇ。ドワーフ以外が出ちゃいけねぇなんて決まりはねぇ」


 優勝賞品がドワーフの決まりごとを破れるっていう他種族には全然魅力がないものだから、わざわざ参加する人はいなかったみたい。決まりごとを破れるのも、あくまで本人だけだから代理なんてことも難しい。


 「私は良いですよ。ティーブもお願いできる?」

 「はい。問題ありません」

 「あっそうだ。でもそれだと壁の向こうに行けるのって1人だけになるんですか?」

 「そこは、まぁ交渉の余地ありだな」


 代理を防ぐために色々あるけど、壁の向こうにみんなで行きたいっていうのはなんとかなるかもしれない。力試しで参加した人間が昔いて、その時は準優勝のドワーフに決まりごとを破らせる代わりに金銭が商品になったみたい。だから柔軟に対応してもらえる可能性はある。


 「ルイスと、リズさんはどうします?」

 「俺も良いよ」

 「ちょ、ちょっと待ちなさい。ルイスはダメよ」


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