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第8話

 「ファニー、ごめんって。ついね」

 「もう、死ぬかと」


 やっと止まった。ちょっとくらい速度を落としてくれてもよかったのに、全然そんなことしてくれなかった。まだ頭がクラクラする。


 「ファニーちゃん、大丈夫ぅ?」

 「うん」

 「む〜。黒の賢者のせいだ」

 「いや、だからごめんって」


 アーちゃん、はしゃいでいたな。元気になってくれて嬉しいけど、それ以上に羨ましい。ルイスも楽しんでいたみたいだし、もう1回乗れば良さがわかるのかもしれない。ううん、やっぱり無理。


 「そんなに責めるなって。あんまり速度は落とせねぇんだ」

 「そうなんですか?」

 「螺旋状のレールに遠心力でへばりつく感じだな。それよか、あ〜、お熱いね」

 「え?」


 そういえば、まだルイスにしがみついたまま。トロッコの中で必死にしがみついて、ずっとそのまま。ヴィンだーさんの後ろでリズさんが腕組みしてこっちを見ている。


 「あっ、いやっ、これは。イテ」


 背中が。勢いよく離れすぎてトロッコにぶつかっちゃった。でもどうしよう。リズさん、怒ってるのかな。なんとなく睨まれていたような気もするし、アーちゃんは怖がってまた隠れちゃった。


 「ファニー、大丈夫か?」

 「う、うん。大丈夫」

 「ほら、遊んでないで早く行くわよ」

 「は、はい」


 ティーブが手を差し出してくれて、引っ張られながらトロッコを出る。ルイスが降りるとトロッコは魔法みたいに消えちゃった。落ち着いて周りを見渡すと、地下とは思えないくらい明るい。


 「こっちだ」


 ヴィンダーさんに案内される。岩に囲まれた、王城の廊下みたいな広さの道。天井にいくつも明かりがあって、そのおかげでとっても明るい。


 リズさんは1人でどんどん進んでいってしまう。どうしてもルイスとの関係が気になる。理由もなく抱きつくような人にはどうしても見えないし、それに手伝ってくれていることに変わりはないんだから仲良くしたい。


 「リズさん」


 ちょっとだけ振り返って、また先に行っちゃう。やっぱり怒っているのかも。だけど、ならなおさらちゃんとしゃべった方がいい。


 「ファニーちゃん」

 「あっ、ごめんね。ティーブと待ってて」

 「は~い」


 ちょっと寂しいな。だけど本当に怖がっちゃってるから、無理に連れて行きたくはない。全然止まってくれないリズさんを追いかけて、隣に並んで歩く。


 「なに?」

 「えっと、トロッコ怖くなかったんですか?」

 「別に。私は乗ってないから」

 「へ?」


 乗らなかったの?あの長いレールを走って来たのかな。魔法を使ったんだと思うけど、あんなほとんど落ちてるみたいなレールを進めるなんて、同じ賢者のルイスにも本当は同じことができるのかな。


 「用はそれだけ?」

 「あっ、いえ。おしゃべりしたいなって」

 「そっ。じゃぁ私からも聞いて良い?」

 「えっ?はい、もちろんです」


 道の終わりが見えてきた。また扉があって、一段と強い明かりがこぼれている。我慢できなくなったみたいで、小走りのヴィンダーさんが横を通り過ぎて扉の先に行っちゃう。


 「そろそろ着くわね。ねぇ、ルイスと一緒でツラくないの?」

 「ツラい?全然そんなことないですよ。えっと、どうしてですか?」

 「いいえ、なら良いわ。ほら、それより地下都市の入口よ」


 心配、してくれていたの?リズさんがそんなこと考えてくれていたなんて想像していなかった。なんだか心が踊り出しそう。軽くなった足で扉に近づくと、その先からはたくさんのドワーフ声が響いてくる。


 「おう嬢ちゃん、ようこそ。ここがドワーフの地下都市だ。で、早速で悪ぃんだがよ。ちっとばかし用事ができちまった。その辺で食べながら待っててくれや。じゃぁな」


 なにかあったのかな。返事も聞かないで走って行っちゃった。ここは休憩所みたいになっているみたいで、食事もできるみたい。ずっと岩山を登っていたから、ちゃんとした料理を食べられるのは久しぶり。


 「どうした?」

 「あっ、ルイス。ヴィンダーさんが食べながら待っててだって」

 「そうか?じゃぁお言葉に甘えちゃおうか」


 みんなお腹減ってるみたい。ヴィンダーさんはいつ戻ってくるのかも教えてくれなかったから、食べれるうちに食べたい。


 まだ正式に地下都市に入れるわけじゃないけど、この休憩所の中なら自由に過ごせるみたいで、見たことないドワーフの料理がテーブルに並ぶ。私の好きな肉料理でいっぱい。


 トロッコは怖かったけど、こんな美味しそうなものをたくさん食べれるなら、また来てもいいかも。アーちゃんにも取ってあげて、ルイスとティーブは勝手に食べてて、だけどリズさんは手を出す気配がない。


 「あの、食べないんですか?」

 「そうね」

 「ちょっとくらい食べた方が良いですよ。ほらこれ」


 食欲がないなら、スープの方が良いかなって差し出す。でもその器は、リズさんの平手で飛ばされて、中に入っていたスープを散らしながら床に落ちる。


 「やめてちょうだい!余計なことしないで」

 「ご、ごめんなさい」


 器を拾って、汚れちゃった床をおいてあった布巾で掃除する。すぐに終わりそうだけど、隣でルイスも手伝ってくれる。


 「おい、リズ」

 「はぁ。悪かったわよ。外で待ってるわ」


 床掃除はすぐに終わって、立ち上がるとリズさんはもう外に出ちゃってた。あんなに嫌がるなんて思わなかったし、お節介は良くなかったかも。


 「ファニーは気にすることないよ」

 「でも」

 「まぁリズにも事情があるんだけど、ちゃんと話せばいいのにな」


 もっと仲良くしたかったんだけど、これじゃ逆効果。事情がなんなのか知りたいけど、多分今のままじゃ教えてくれない。ルイスにこっそり教えてもらうのも違うし、仲良くなるまで時間がかかるかも。


 そして、ちょっと重苦しい空気の中で食事する。ヴィンダーさんが戻れば空気が変わるかもしれないって期待していたけれど、戻ってきたときの顔は険しいものだった。


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