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第5話

 「まぁ、最初はこうなるわよね。というよりルイスは教えるのが遅いのよ」

 「悪かったな。リズみたいに詰め込めば良いってもんじゃないだろ?」


 なんのことを言っているんだろう。ヴィンダーさんは腕組みしながら上を向いていて、なかなか喋りだしてくれない。


 「ねぇ、ルイスから説明してあげたら?みんな困っているわよ」

 「そうだな。ファニー、ガーダンが従順な種族であるように、ドワーフにも特徴があるんだ。規律を破らないっていうね」


 ルイスの話を聞いて、ヴィンダーさんは苦虫を噛み潰したみたいな顔をしている。


 「間違っちゃいねぇけどよ。ガーダンと並べるのはやめてくれねぇか?俺等は他人の言うことに服従するわけじゃねぇ。決まりごとは絶対に守るってだけだ」

 「すまないね。ドワーフは人間に近い生活をしているからね。こういう言い方しないとファニーに伝わらないと思ったんだ」


 言いたいことはなんとなくわかる。ティーブの種族のガーダンが絶対服従って聞いたときはちゃんと理解できていなかった。ドワーフの規律を破らないっていうのも、ガーダンと同じで自分の身が危険になったとしてもっていうことなんだと思う。


 だから、例えどんな被害があったとしても、壁の向こうにはいけない。ドワーフが規律を守る種族である以上、覆ることはない。それで良いのかなって思うけれど、ティーブと一緒で変えられないこと。ドワーフの呪いっていうものなのかもしれない。


 「つまり、ガーゴイルの被害があったとしても壁の向こうには行けないってことよね?」

 「まっ、そういう決まりだからな」

 「壁を直しに行ったりもしないの?」

 「しねぇ。必要がねぇ。壁のこっち側と違って、向こう側は絶対に壊れない素材で出来てる。修繕っつっても、壁が傾いて倒れないようにしているだけだ」


 絶対に壊れない?すごいけど、そんなこと言われたら逆に気になって見に行きたくなっちゃうかも。だけどドワーフにとってはありえないことなんだろうな。


 「ん〜う。ファニーちゃん」

 「アーちゃん?どうしたの?」

 「ん〜う。ん〜う」


 ずっと胸の中にいたアーちゃんが必死に目で訴えてくる。その先にいるのはリズさん。


 「あの、リズさん。アーちゃんが言いたいことあるみたいで、悪い子じゃないんで」

 「はぁ。私のことをなんだと思ってるの?」

 「リズ。あんなことしたら当然だろ?」

 「まぁいいわ。イタズラしないなら、なにを言っても怒らないわよ」


 私だってまだ話しかけにくい。だから睨まれていたアーちゃんがもっと怖がっちゃうのは、当たり前だと思う。


 「アーちゃん。大丈夫だって」

 「ん〜。ドワーフのそういうところがムカつくの。もっと好きにすれば良いのに」

 「ンだと?いゃ悪い。どうも調子狂うな。俺等も妖精のそういうところが気に食わねぇんだよ。嬢ちゃん、相性が悪いってのはこういうことだ」


 まだいつもの元気はないアーちゃんの様子を見て、ヴィンダーさんも気遣ってくれたみたい。リズさんが気になるみたいで、手の中に隠れながらチラチラ様子を見ている。


 「まぁその話は置いておくとして、これは結構厄介かもね」

 「あら、ルイス。なんでそう思うの?」

 「俺もファニーと同じ考えなんじゃないかな。原因はガーゴイルの側にあると思っている。だとしたら調べに行けないのは面倒だね」


 また口喧嘩になりそうな予感がする。この2人って、お互いをどう思っているんだろう。仲が悪いわけじゃないよね。それなら最初にあんな風に抱きついたりしないと思うし、それにあんなに長い時間抱きついてルイスも抵抗しないってことは仲が良いってことで、ってなんで私こんなこと気にしているんだろう。


 「勝手に行けば良いんじゃない?」

 「いや、それは。手順はちゃんと踏んだほうがいいよ」

 「ドワーフの決まりごとなんて知らないわよ」

 「待ってくれ。勝手に行くってなにする気だ?無茶はやめてくれよ」


 本当になにをする気なんだろう。リズさんにはなにをするのかよくわからない強さがある。


 「まぁいいわ。まだ行く必要があるのかもわからないのに、話しても無駄ね。でも話すべきことは話したんじゃない?行くなら早く行きましょ。今から出発する?」

 「頼むぜ。って今からぁ?まだ夜じゃねぇか」

 「リズ。流石に今日はもう休んだほうが良い」

 「わかったわよ」


 リズさんって、どこまで本気で言っているのかわからない。だけどアーちゃんはルイスと比べ物にならないくらい魔力を持っているって言っていたから、もしかして賢者にとっては普通なことなのかもしれない。


 だとしたらずっと封印されていたルイスが本当の力を取り戻したら、どれくらい強くなるのかな。


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