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第4話

 必要だからやった。そんな青の賢者のリズさんの言いたいことを頭ではわかる。妖精と仲が悪いドワーフの国で、なにかが起こってからじゃ遅いっていうことを頭では理解できる。ルイスも納得はしていたみたいだから、面と向かってなにかを言うつもりはないけれど、だけどこんなに震えるまでしなくてもいいのに。


 「なんて言ったら良いんだろな。さっきの水は賢者の魔法か?てっきり同じように鏡の盾を使うもんかと思ってたぜ」

 「あら、そうなの?私達って、忘れられた存在なのかしら。ルイスはどう思う?」

 「俺に聞くなよ。賢者の魔法は8人それぞれ違うものだよ。俺は鏡、リズは水の魔法を使う。他はまぁ、いろいろだな」


 みんなで焚き火を囲っていて、みんな無言だった。私はしゃべる気になれなかったけれど、ずっと居心地悪そうにしていたヴィンダーさんが口を開いた。いつもだったらもっと詳しく聞きたいって思いそうな話題なんだけど、今はしゃべるよりアーちゃんのことを慰めていたい。


 「それより、ドワーフさんにとっては魔物の方が気になるんじゃないの?」

 「ん?あぁそうだな。なんで魔物が問題になるんだ?壁はどうなった?」

 「別に話しても良いんだけど、壁のことをちゃんと教えないと、その子が置いてけぼりになっちゃうわよ?」


 その子っていうのは私のこと。ヴィンダーさんは私とリズさんを見比べていて、体を大きく揺らしながら眉間に皺を寄せている。


 「嬢ちゃん。込み入った話は明日にするか?」


 もしかして、心配してくれているのかな。自分の国だから聞きたくて仕方がないはずなのに、気を使わせちゃったみたい。


 「私は大丈夫です」

 「そ、そうか?」

 「話を聞いているくらいできるんで」


 ちょっと自信はないけれど、逆の立場だったら自分の国の話をなるべく早く聞きたいって思うだろうから。


 「いや、別に明日歩きながらでもいいんじゃないか?」

 「ルイスは口を挟まないで。本人が大丈夫って言うんだからいいじゃない。それに、こういう話は座って落ち着いてやるべきよ」

 「お、俺はどっちでもいいぜ?」

 「いいえ。続けましょう」


 ルイスが助けようとしてくれたけれど、またリズさんと口喧嘩になりそうになっている。この2人って、仲が良いのか悪いのか本当によくわからない。


 「本当に大丈夫なんで」

 「そ、そうか?じゃぁドワーフの国の話だな。後でも良いって思ってたんだがよ。まぁ今からでも問題ねぇわな」


 ヴィンダーさんが話してくれたのは、ドワーフの国の基本的なこと。


 たくさんある人間の国と違って、ドワーフの国は1つしかない。北の山脈の地下に巨大な都市があって、ほとんどのドワーフは地下都市で暮らしている。地上にも住んでいないわけじゃないらしいけど、岩塩とかを採掘するための街が点在するだけ。


 手先が器用で鍛冶が得意なことは有名な話。北の山脈ではなかなか手に入らない作物とか特産品を求めて、人間とかエルフの国に出稼ぎに出るドワーフがいて、ヴィンダーさんはその1人。


 でも織物が得意なトイグ王国と、鍛冶が得意なリーフ王国はドワーフから見ると魅力が少ない国だったみたい。着飾る風習がないことと、そもそも鍛冶は自分たちでできるからっていう理由。それでもなにもないわけじゃないし、少ないドワーフを逆に重宝してくれるから、ヴィンダーさんはリーフ王国で仕事をしていた。アーちゃんのイタズラで苦労したみたいだけど。


 そんなドワーフの地下都市には、見上げるほど大きな壁が1つ。


 大昔の話。人間はゴブリンを追い出しきれなくて、ゴブリンは各地に点在してしまっていた。だけどドワーフは違った。ガーゴイルを北の山脈の更に北の地域に、完全に追い出すことに成功していた。


 大きな壁は、ドワーフとガーゴイルを隔てるもの。ドワーフの地下都市への侵入を、完全に防ぐためのもの。だから本来、ドワーフの地下都市で魔物のガーゴイルが問題になるわけがないし、ガーゴイルの姿さえ見られるはずがないということ。


 静かに話を聞いていると、いつの間にか手の中のアーちゃんの奮えが止まっていた。


 「それって、壁が壊れちゃったってことですか?」

 「どうかしら?」

 「嬢ちゃん。それはありえねぇ。壁の管理は最優先事項だ。俺なんかよりずっと腕の立つ職人が修繕をし続けているんだ。壊れるわけねぇ」

 「そ、そうなんですね」


 じゃぁどうして?壁になにもなかったとしても、ガーゴイルの方が強くなったのかもしれない。あの黒いゴブリンみたいに、たくさんのガーゴイルを率いているのがいるのかもしれない。でもそれは、壁の向こう側がどうなっているのか見てみないとわからないこと。


 「じゃぁ壁の向こうに行って、ガーゴイルの様子も確認した方が良さそうですね」

 「んぁ?あ、あぁ。そうなるのか?」

 「え、えっと」


 変なこと言ったのかな。それくらいのことならすぐに思い付くだろうし、もうやってるってことなのかも。壁を修繕するために向こう側に行かないといけないから。


 「ファニー。壁の向こうには出れないんだ」

 「え?」

 「あんちゃんの言う通りだ。壁の向こうには行けねぇ。そういう決まりだからな」


 どういう意味?ドワーフのことを、私はまだなにも知らないのかもしれない。


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