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第1話

 生まれ育ったトイグ王国を離れて、それどころか人間の国を離れて、北へ北へ。私がドワーフの国に行くことになるなんて、全然想像していなかった。


 険しい山道が続く。この先、なにが起きるんだろう。ここまで本当に色んなことがあったっけ。トイグ王国がゴブリンに襲われて、ティーブ以外みんな殺されちゃったけど、地下の扉でルイスと出会った。黒の賢者って言われている魔法を使えるルイスと出会った。


 それからゴブリンに襲われ続けているトイグ王国を助けてもらうために、隣国のリーフ王国に行く旅が始まった。ドラゴンのラウレリン様と、ドワーフのヴィンダーさんと、妖精のアーちゃんと、それにたくさんの人に巡り合いながら旅を続けて、やっと着いたリーフ王国。


 助けて欲しかったら結婚しろって遠回しに言われて、これで私の旅は終わりなんだって受け入れちゃってた。だけどルイスが世界の麓へ行く旅に連れ出してくれた。今はまだその準備で世界を周っているだけだけど、世界の麓を目指す一歩であることに代わりはないから。


 小さい頃から従者としてずっと守ってくれて来たガーダンのティーブと、あの日夢見た世界の麓へ連れ出してくれた黒の賢者のルイス、出会ってからずっと私の隣で笑ってくれる妖精のアーちゃんと、私の武器を作ってくれて今は道案内をしてくれているドワーフのヴィンダーさん。


 そんな5人の、ドワーフの国を目指す旅。


 この旅は、見えるもの全てが新鮮。こんなに岩ばかりの山なんてトイグ王国にはなかったし、見たことのない植物や動物たちがたくさんいる。野営のときに初めて見る動物を狩るたびに、心が浮足立っているのがわかる。


 「今日はまた、ずいぶんたくさん狩ってきたね」

 「多すぎたかな?」

 「いや、残ったら保存食にしよう」


 両手いっぱいに持ちきれないほど獲物を持っていて、一緒に手伝ってくれたティーブも同じ。急いで捌いて、今日の分の肉は料理して、あとはルイスが魔法で保存食にしてくれる。鏡の縦の魔法以外は戦闘で役に立たないってルイスはよく言っているけど、旅をするのにはとても便利で助かっている。


 「嬢ちゃんはいつも元気だな。普通の人間ならとっくにへばってるはずなんだがよ」

 「そ、そうですか?」

 「む〜。ドワーフのくせに、」

 「あっ、ちょっ、ちょっとゴメンね」


 鍋の前で料理をしながら話しかけてきたのは、道案内でドワーフのヴィンダーさん。人間の国で鍛冶屋をしていたけど、あるキッカケで生まれ故郷のドワーフの国に帰ることになって、そのついでに道案内もしてくれている。


 問題なのは、そのキッカケになったアーちゃん。悪いことをしそうな予感がして、私の手の中に入ってもらっている。いつも楽しそうな妖精なんだけど、ドワーフには態度が悪い。出会ったときにはもうこんな感じで、妖精とドワーフは仲が悪いからってことみたいだけど、なんとかならないのかな。


 「なぁ嬢ちゃん。悪いこと言わねぇから、その妖精をちゃんと隠しとく方法は考えといたほうがいいぜ?」

 「や、やっぱりそうなんですか?」

 「種族的に相性が悪いんだ。しかたねぇだろ。ガーダンに任せりゃいいんじゃねぇか?」


 ここまでの旅でもずっといがみ合っちゃってたし、仲良くできないかなって試してみたんだけど全部ダメ。ドワーフの国に行くならちゃんと隠したほうがいいっていうのはわかる。でもせっかくの旅なのに、外に出さないなんて可愛そう。


 「ティーブに任せると、どこかに閉じ込めることにならない?」

 「そりゃそうなるかもしれんがよ。でもできるよな?」

 「はい。可能ではあります」


 ガーダンのティーブがそう言うならできるんだろうな。従順な種族のティーブは嘘をつかない、というより嘘をつけないから。


 「ねぇルイス、なんとかならないかな」

 「ん〜。魔法で見た目だけ誤魔化すことはできるけど、イタズラを止めることはできないからね」

 「じゃぁ悪いことしなきゃ大丈夫なんだよね。アーちゃん、お願いできるかな?」

 「ぶ〜。ドワーフが悪いんだもん。悪い子じゃないもん」


 もう、いつもは良い子なのに。みんな仲良くして欲しいだけなのに。


 「けっ。だから妖精はダメなんだ。嬢ちゃんも苦労するな」

 「なによ。ドワーフのくせに」

 「うんうん。わかったから」


 どうしようかな。アーちゃんも妖精の魔法を使えるから、放っておくことはできないし、でも閉じ込めたくはない。ずっと捕まえておけばなんとかできるかな。


 「じゃぁこうしましょ。私がずっと持っているから、見た目だけ変えて?」

 「おいおい。本当にいいんか?」

 「だ、大丈夫ですよ。今だって大人しくしているじゃないですか」

 「そうだがよ。嬢ちゃんが大変なだけじゃねぇか?」


 そうかもしれないけど、でもアーちゃんには魔法で何度も助けられてるし、悪い子じゃないと思う。だから私にできることはちゃんとしたい。


 「別にいいんじゃない?なにかあったら、その時考えればいいから」

 「あのなぁ。賢者っつうのは呑気だな」


 あきれてるみたいなヴィンダーさんの声に続いて聞こえてきたのは、私の知らない女の人の声。


 「本当に呑気なものね」


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