第61話-旅立ち-
「無事に出られたみたいだな」
「そうだけど、手伝ってくれてもよかったじゃん」
「ははは、悪い悪い。なかなか話がまとまらなくてね」
ちょっと文句を言ってやったのに、ルイスは全然悪いと思ってないみたい。それがどうにも気に入らない。ルイスが悪いわけじゃないことくらいわかってるけど、なんだか懲らしめてみたくなっちゃう。
「どうかした?」
「別に。なんの話をしてたの?」
「ん、あぁ。その話は本人と一緒の方が良さそうだな」
それでルイスに案内されたのは、なんだか見知った道。私の弓とティーブの剣を作ってくれたヴィンダーさんの家がある方向へ歩く。
「ねぇ、この先って」
「そうそう。ドワーフの国に行こうと思っててね。ヴィンダーに道案内してもらうことになっているんだ」
「へ〜」
もうそこまで決まってたんだ。逃げるにしても行き先は決めないといけないから、その話を全部してくれてたんなら納得できることもある。それでも心につっかえることはあるけど。
「え〜〜〜。やだ〜〜」
私はなんとも思わないというか、むしろドワーフの国ってどんなところなんだろうって楽しみなんだけど、ア〜ちゃんは本当に嫌がってるみたい。妖精とドワーフは仲が悪いみたいだから、そのせいなのかな。ヴィンダーさんも同じような反応をするのが頭に浮かんじゃう。
「まぁまぁ、我慢してくれって」
「や〜〜。ファニーちゃん、黒の賢者にいじめられる〜」
「あぁ、うんうん」
嫌なのはよくわかったけど、ここで行先を変えるのは難しいし許してもらうしかないかな。ここは代表さんの街だから、機嫌を直してもらうのになにかないか後で聞いてみよっと。この間の宿でもいいからね。
「ア〜ちゃん。前に泊まったところ覚えてる?もう一回泊まれないか頼んでみる?」
「ほんと!?行きたい行きたい」
「ちょ、ちょっと暴れないでってば」
でもこれでなんとか許してもらえるかも。ドワーフの国にずっといるわけじゃないだろうし、ア〜ちゃんも悪い子じゃないから大丈夫なはず。と考えている間にヴィンダーさんの家に着いた。
「よう嬢ちゃん、久しぶりだな」
最後に会ってからそんなに時間は経っていないはずなんだけど、私も久しぶりって感覚になる。ヴィンダーさんの家の中は前に来た時よりもっと片付いている、というよりもぬけのからになってて完全に引越し直前みたい。
「話は聞いたぜ。嬢ちゃんも大変だったなぁ」
「あはは」
「べ〜〜っだ」
「ちょっとア〜ちゃん。あっ、すみません連れて来ちゃって」
なんでそんなにドワーフを嫌うんだろう。ヴィンダーさんも本当に嫌そうな顔をしてて、これなら待っててもらった方がよかったかな。
「いいっていいって。だが気ぃつけろや。これからドワーフだらけの場所に行くんだからよ」
「うげ〜〜〜」
「だからダメだって。た、多分大丈夫だと思います」
って言いながら、なんだか不安。ルイスと相談してどうするのかちゃんと考えた方が良さそうだな。
「なんだかなぁ。妖精を連れてくことになるたぁな」
「よ、よろしくお願いします」
「おう、任せろや。そんで、いつ出発するんだ?早ぇ方がいいんか?」
「えっと」
1日だけゆっくりできないかなってルイスに話してみて、1日くらいなら大丈夫ってことになって、明日の朝に出発することになった。それから代表さんのところに急いで戻って、この間の場所にまた泊まれないか聞いてみる。
代表さんは本当にご機嫌みたいで、なんにも要求しないで用意してくれた。不気味なくらい楽しそうにしてたけど、それだけ王族の人たちへの鬱憤がたまってたんだろうな。
「わ〜い。ファニーちゃん、こっちこっち」
ア〜ちゃんとまた花の庭園に入る。前に来た時とちょっとだけ咲いている花の種類が変わってて、一緒に間違い探ししながら遊んだ。
「あれ?」
夢中になってたら、いつの間にかルイスがいない。ティーブに聞いてみたら、さっき1人でどこかに行っちゃったみたい。せっかくだから一緒にいればいいのに。なんて思いながら、こっちはこっちでゆっくり満喫することにする。
あっという間に夜になって、疲れきったア〜ちゃんは静かな寝息をたてながら眠ってる。かわいい寝顔だなって思ってみてたら、ルイスが帰ってきた物音が聞こえた。
「ファニー、ちょっと良いか?」
「う、うん。いいけど」
こんな夜中にどうしたんだろうって思いながら起き上がって、部屋の外に向かう。
「あっ、そうだ。ラウレリンの鱗も持ってきてくれ」
鱗?持ってるけど、荷物の一番奥の方にしまっちゃってた。荷物をひっくり返して取り出した鱗は、まだ黄金色に輝いてる。多分、受け取った時となにも変わってない。
夜は暗いから、余計に輝いて見える。そんな鱗を手の中にしまいながら、ルイスの後ろをついていく。ルイスと2人きりになるのっていつぶりだろう。ア〜ちゃんは眠ってるし、危険はないからティーブも残ってくれている。
「ねぇ。どこに行くの?」
「屋上まで」
宿の屋上は開放されていて、出た瞬間に綺麗な夜空が広がってる。今日は満月。月明かりでルイスの顔がはっきり見える。
「え、えっと」
本当になんの話?と思ってたらルイスは微笑みながら一言。
「ファニー、誕生日おめでとう」
あぁそうか。完全に忘れてた。今日は私の、17歳の誕生日だったんだ。20歳までしか生きられないから、今日からあと3年しか生きられない。
「あ、ありがとう」
普通なら喜ぶことなんだろうけど、複雑な気分。私の誕生日は、18と19と20。あと3回しかないってことだから。
「嬉しくないの?」
「う、うん」
「心配するな。これから楽しいことがたくさんあるよ。長く生きれば良いってわけじゃないんだ」
そう、なのかな。そう、だといいな。そう、だって信じたい。
「これ、誕生日プレゼント」
ルイスに手渡されたのは、綺麗なブレスレット。いくつか宝石も散りばめられていて、多すぎないのがすごく好み。
「これ、どうしたの?」
「ん?昔のものなんだけどね。気に入った?」
地下の扉の先に一緒に入ってたものみたいで、ルイスと一緒に封印されてからずっとそのままだったらしい。ルイスが生きていた時代のものって思うと、とても大切なものな気がする。
「あと、これはプレゼントというより実用品だね。鱗を貸して」
黄金の鱗を手渡すと、ネックレスの先にはめ込まれる。実用品なんていうけど、それは一見するとアクセサリーにしか見えない。
「これは大事なものだからね。手放さない方が良いよ」
「わ、わかった」
ネックレスを首にかけるけど、ブレスレットと違って着け心地が悪い。ルイスが言うなら大丈夫なんだろうけど、あの時のことを思い出しちゃう。
「ちゃんと伝えた方が良いと思ってね。ファニー、これからよろしく。きっと大変な旅になると思うけど」
「そうだね。よろしく」
あと3年の命。だけどきっと、最高の3年になる。そんな気がする。ルイスと屋上でしばらく笑い合って、明日に備えてゆっくりと眠った。次の日の朝にはヴィンダーさんと一緒にドワーフの国へと出発する。
北へ北へ。高くそびえる山脈へと歩いていく。どんなところなんだろう。その先にはなにがあるんだろう。世界樹の下に辿り着けるのかな。たくさんの期待を胸に抱きながら歩く。
子供の頃にお母さんから聞いた場所。行ってみたいなって心のどこかで感じていた場所。一度は行くことを諦めてしまった場所。
同じ場所へ行きたがってるルイスと、呪いのせいかもしれないけど一緒にいてくれるティーブと、いつでも隣で楽しそうにしてくれるア〜ちゃんと。
残り3年の日々が、夢のような日々になることを信じて。
行こう。もう一度、
あの日夢見た世界樹の下へ。
【重要なお知らせ】
お読みいただきありがとうございます。
本作は、次回のエピローグで完結設定にさせていただきたいと思います。
打ち切りのような終わり方になってしまい申し訳ありません。
あとがきで詳しく説明させていただきますが、
全て終わらせるのではなく、
視点の変更(一人称→三人称)を含めた大幅な改稿をしたいと考えているためです。
PV数をふまえた結論となっておりまして、
物語の節目ということもあり、このようにさせていただきたいと思います。
続きが気になるという方には申し訳ありません。
お詫びになるかわわかりませんが、推敲前の物語も投稿も予定しております。
今後ともよろしくお願いします。




