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第5話-黒の賢者ルイス-

申し訳ありません。

挿絵は近々に更新します。

挿絵(By みてみん)


 「あ、ああー。こんなときに悪いんだけど、手当していいかな?」


 話しかけてきたのは、黒い髪の男の人。そういえばもう、戦いの音が全然聞こえない。あんなにいたゴブリンは、一体残らず死体になっている。


 「えっと」

 「う、うーん。お姉さんのことは、残念だったね。だけど、ここはちょっと空気が悪いし傷に触る」

 「あっ、はい」


 そうか。この人は私がどういう人か知らないから。いや、そうじゃなくて、心配してくれているんだ。痛み止めも切れてきちゃってるみたい。


 「ありがとうございます。ティーブ、お義姉ちゃんを運んでもらって良い?」

 「かしこまりました」


 お義姉ちゃんの遺体をティーブが持ち上げてくれる。疲れているのに悪いなって思うけど、でもどうしてもこんなところに置いてきぼりにはしたくない。


 「あの、えっと」

 「話は落ち着いてからにしよう。早く治療した方が良い。ツライでしょ?」

 「そう、ですね」


 地下からの階段へ向かう足が重い。怪我をして、消耗して、でもそれだけじゃない。全て終わってしまって、しかも誰1人助けられなかった。お義姉ちゃんを、あと一歩のところで助けられなかった。


 もう、限界。



 「あれ?」


 ここは、私の部屋?それに私のベッド。どうして?たしか、ゴブリンと戦うために飛び出して、城が燃えたから戻って、玉座の間でお父さんが殺されていて、お義姉ちゃんを助けるために地下に行って。


 「お義姉ちゃん!!」


 思わず飛び起きる。もしかして、ただの夢?横になっていたのは自分のベッド。だけど狩りに行くときの服のまま寝ている。本当に夢なら良かったのに、違う。だって、こんな格好で寝てるわけないから。


 「あれ?」


 なんでだろう、血がついてない。あんなに真っ赤になってたはずなのに、でも服は私のだよね。そういえば怪我してた右肩も、痛くない。


 「ああ、起きた?悪いね、勝手に治療させてもらったよ。それと、そこのガーダンも使わせてもらった」

 「えっ、あっ、その、義姉は?ゴブリンは?」

 「うーん。その話は後にしようか。それより着替えでもしながら気持ちを落ち着かせたら?綺麗にはしたけど、ボロボロだからね。外で待ってるよ」


 どういう意味だろう?治療って言ったよね。そういえば右肩は、治ってる。噓でしょ、あんな怪我すぐに治るわけないのに。


 「あっ、あの。怪我」

 「まぁ話せば長くなるから。もう危険はないから、いつもの格好で大丈夫だよ。着替え終わったら呼んでね」


 黒い髪の男の人は扉を閉めていく。ベッドに座ったままの私と、傷だらけになった鎧を着ているティーブが残る。着替えって言われても、これからどうなるんだろう。危険はないっていうのも、よくわかんない。


 「ねぇ、お義姉ちゃんは?それに、ゴブリンは?」

 「義姉上様のご遺体は別室にございます。地下のゴブリンについては全て追い払っております」


 やっぱり、夢じゃないんだ。お義姉ちゃんも、お父さんも、城のみんなも、全員死んでしまった。いつもの自分の部屋が、いつもと違って見える。もう扉を開けて遊びに来る人はいない。


 「追い払って、それでどうなったの?」

 「それにつきましてはあの方が調べてくださいました。私は内容を聞いておりません」


 調べたって、どこまで?危険はないって言われたけど、やっぱり狩り用の服にしよう。動きやすくて楽だし、城の中でどんな格好をしても文句を言ってくる人はもういない。


 服を選ぶ手が止まる。あんなにたくさんの人が死んでしまったというのに、私は生き残っている。生き延びても一番意味がない私だけが、こんなところでいつもどおり着替えている。


 「ティーブ。着替えるから、ちょっと待ってて」

 「かしこまりました」


 とても広い私の部屋。広すぎてさみしいなって思うことが多かったけれど、今日はそのさみしさが増している。いつも通り隣の衣装室で着替え始める。防具までは整えなくて大丈夫かな。


 「終わったよ。じゃぁ、あの人を呼ぼっか」

 「はい」


 扉を開けようとして、ドアノブを回せなくて立ち尽くしてしまう。扉の先がどうなっているのか知るのが怖い。なんとか部屋を出ると、そこには黒い髪の男の人が立っていた。よく見ると綺麗な青い目と整った顔立ちで、お義姉ちゃんだったら顔を赤らめていたんだろうなと思う。それに、地下で着てたのとは違う服。


 「あ、あの。終わりました」

 「そうか?どこから話そうか」

 「えっと、良ければ中で」

 「これはどうも」


 お客さん1人を入れても全然問題ないくらい広い部屋。来客用の椅子をティーブに出してもらって、みんなで座る。黒い髪の男の人は腰掛けると早速話し始めてくれた。


 「さて、そもそもまだ名乗ってなかったね。俺はルイスだ。今はどうか知らないけど、黒の賢者と呼ばれていた」

 「け、賢者!?あっ、失礼しました。私はファニー。ファニー・ソギジャス・ツイグです。ほら、挨拶して」

 「はい。ファニー様の従者のティーブです。よろしくお願いします」


 賢者って、あの賢者?小さい頃にお母さんに話してもらったおとぎ話に出てきた。世界樹の下に辿り着いたことがある8人の人達。ううん、きっと本物だ。


 だって右肩が治ってるのって、魔法を使ってもらったとかじゃないとありえないし、魔法が使える人間なんて賢者しかいない。それに扉の前で見た言い争いも、世界樹の下に行ったことのある8人の賢者の会話だったんだ。


 「おっ、どうやら通じたみたいだね。良かった良かった。長い間、閉じ込められていたみたいだからね」

 「あの、えっと」

 「ん?まぁ聞きにくいだろうから答えるけど、ちょっと喧嘩しちゃってね。閉じ込められていたんだ。出してくれて助かったよ」


 そんなに軽く言うことなのかな。だってあの扉って、何年閉じられていたんだろう。私が生まれる前の、ずっと前から閉じられていたはず。でも今は、それより先に聞かなきゃいけないことがある。


 「それで、ゴブリンはどうしたんですか?」

 「うーん、まぁ。気をしっかり持って欲しいんだけど、この街の人間を全員狩り尽くしてどこかへ行ったよ。残っているのはここにいる俺達だけだ」

 「え?」


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