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第56話-共に戦いへ-

 「ティーブはここで待ってて」

 「ダ、ダメです。危険すぎます」

 「勝てなきゃ意味ないから」


 危険だっていうのはわかっている。でもこうなっちゃったら、もう逃げ場がない。残っているゴブリンが多すぎるから、黒いゴブリンを倒して統率を崩さないと逃げ切ることさえできない。


 「ですが」

 「ここから私を連れて逃げ切れる?」

 「そ、それは」


 ティーブが答えられないっていうことは、つまりそういうこと。早く魔法の矢でどこまで倒せたのかちゃんと確かめたい。


 「ではせめて、先にルイス様と合流して下さい」

 「うん、わかった。ごめんね」


 ティーブには無理なお願いばっかりしちゃっている。ワガママに付き合わせちゃって、怪我までさせちゃって、だからせめて勝って帰らないといけない。


 「ア~ちゃんのこと、お願い」

 「しょ、承知しました。襲ってきた1体は、片腕を切り落としています。ですが油断しないようにお願いします」

 「切り落とした?あっうん。わかった」


 眠りこけているア~ちゃんを預けようとして落としそうになってしまう。襲ってきたゴブリンのことを詳しく聞く時間はないと思っていたけれど、そこまでしているなんて。


 切り落とされた腕はゴブリンのものだったけど、その色は真っ黒。暗殺者らしき黒いゴブリンのものだってすぐにわかる。


 「1人でやったの?スゴいね」

 「いえ、そのようなことは」


 感心するけど感心している暇はない。大きな広場の様子を確認する。


 とりあえずルイスは無事だし、その後ろの兵士と民兵も問題なさそう。魔法の矢を撃ち込んだところからは黒い煙が上がっている。地面が抉れていて、市街地の建物のいくつかは全壊。でもここからじゃ司令官を倒せたのかを知ることはできない。


 門を駆け下りて、大きな広場に出る。ルイスのところへと駆け寄ろうとする私を、みんなが道を開けて案内してくれる。まだ先頭でゴブリンを弾き返しているルイスの背中が見えてきた。


 「ルイス!」

 「おう、って1人か?ティーブはどうした?」


 甲冑を装備した兵士の人達がルイスの代わりに先頭に出てくれる。そのおかげで少しは話す時間ができそう。


 「怪我しちゃって」

 「は?なにがあった?」


 門の上でのことをなるべく手短に話すとルイスの表情が曇る。話をするのにしまっていた鏡の盾を再び発動させている。


 「手負いか。倒せてはいなさそうだね」


 ゴブリンは少し混乱しているみたいだけれど、それでもまだ普通のゴブリンみたいにバラバラってわけじゃない。それにティーブも倒したとは言っていなかったから暗殺者の方はまだ生きている。


 「あと、もう1体を魔法の矢で狙ったんだけど、どうなったかな。ちゃんと見れなくて」

 「そうだったのか。直撃、かどうかはわからないな。行ってみるしかないし、行くなら今だな」


 まだ魔法の矢から立ち直れていないみたいだし、大量のゴブリンを突破していくならチャンスは今しかない。


 「じゃぁ、私も行く」

 「そうだな、じゃぁ頼んだ」

 「え?」


 てっきり反対されるかと思ったのに、何も言われないっていうのは予想外。鏡の盾を作り出して準備しているルイスを、ついボーっと見てしまう。


 「ど、どうかした?」

 「えっと。ダメって言わないんだなって」

 「あぁ、それは。ファニーはとても強い人だし、頼りになる。だからといって、必要もないのに危険にさらしたくなかっただけだ」


 そ、そうかな。いっつもルイスとティーブに守られてばかりだし、いまいちピンとこないな。


 「ファニーは盾とか剣で前に出る役割じゃないから。そこは気にしなくてもいいよ。今までずっと矢の攻撃に助けられてきたじゃないか。もちろん★★★の魔法の矢でなくてもね」


 だって私には弓矢しかなかったから。ずっと練習してきて、ずっと使ってきて、ずっと一緒に戦ってきた弓矢を握りなおす。


 「行こう。俺の盾だけじゃ突破しきれないから」

 「うん」

 「離れちゃダメだよ」


 人混みを書き分けて前に進む。これからゴブリンの集団に突撃して、そして黒いゴブリンがどうなったのか確かめて、そして無事に戻らないといけない。


 やらなきゃいけないことが多くて、怪我なく無事に戻れるかわからない。


 なのに私は、ルイスの背中を追いかけていたんじゃなくて、一緒に戦えていたことを知った私は、胸の高鳴りを抑えることができなかった。


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