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第55話-当てなきゃ-

 「怪我はないか?」

 「うん。大丈夫」

 「む~。黒の賢者がしっかりしないからこうなるんだ」


 駆け寄ったルイスが心配してくれるけど怪我はしていない。残りの矢の本数を数えながら、怒っちゃったア~ちゃんをなだめる。


 「悪い悪い。でも油断大敵だね。無理してファニーを追ってくれなかったら苦戦しただろうね」

 「うん」


 矢を防ぐためには棍棒を振り下ろさないといけない。その後どう動いたとしても、私を攻撃したいなら隙が出来るはず。そう考えていたんだけど、あそこまで追いかけてくれるとは思わなかった。でもその嬉しい誤算のおかげで早く倒すことができた。


 「あと2体か」


 残りの2体は門へと向かったはず。意識を門へ向けると、聞こえてくるのは悲鳴ばかり。


 「2人は大丈夫?」

 「問題ない」

 「同じく」


 特に怪我をしていないみたいだし、私も同じ。今までの戦いを考えれば、体力も有り余っているはず。


 「じゃぁ抜け道から戻る?」

 「いや」


 黒いゴブリンの所へと急ぐ。ティーブの背中につかまって、市街地の屋根の上を跳んでいく。ルイスは前を先に行っちゃっていて、私を担いでいる分遅くなっているからドンドン離されていく。


 門の前の大きな広場は血で真っ赤に染まっていた。一度突破したはずの門から追い出されそうになってしまっていて、ゴブリンは血の海の上で狂喜乱舞している。


 大きな被害を出してしまっていた。不幸中の幸いなのは、市街地で戦うことにならなかったこと。人のいない街なので被害が大きくなるとかではないけれど、入り組んだ場所で戦うのはなるべく避けたい。


 「ファニー様、門の外に出ます」

 「えっ?でも」

 「王都内は危険すぎます。ルイス様も門の前へ行くようですので、私たちは外からにすべきかと」


 門の前で繰り広げられる人間とゴブリンの戦い。本当に門の外に出ていいのかな。甲冑を着た兵士が盾を構えながら前に出て、ゴブリンの棍棒に耐えている。盾の後ろから民兵が剣や槍を突き出して倒しているけれど、ゴブリンは次から次に押し寄せてくる。


 ゴブリンが勝っている。


 そんなゴブリンの集団へ、鏡の盾を構えたルイスが真上から着弾。地面が丸く抉られ、衝撃が広がる。周囲を吹き飛ばし、盾を構える兵士の前に立っている。


 「ルイス!」

 「ファニーちゃん。黒の賢者なんて放っておこうよ。どうせ死ぬわけないんだから」

 「えっ、でも」

 「門の上に行きます」


 返事をする暇もなくティーブが屋根を跳んで行く。ゴブリンを正面から受け止めるルイスの真上を跳ぶ。


 「ア~ちゃん、魔法を用意して」

 「ん!わかった」


 私は、自分に出来ることをするだけ。こんな数はア~ちゃんの魔法を使わないとどうしようもできない。だけど1回しか発動できない魔法を使うなら、黒いゴブリンも巻き込まないと後が辛い。


 「いた」


 大きな広場と市街地の間に1体、司令官のように戦場を見渡している。そしてたくさんのゴブリンに紛れ込むように1体、暗殺者のように獲物を探している。


 門の上に着地し、背中から降りる。兵士と民兵の必死な声だけが耳に入る。


 「ティーブ、ちょっと相談。1体はあそこで動かない、もう1体はあちこち動いてる。動かない方をア~ちゃんの魔法で倒して、もう1体はなんとかする。どう?」

 「問題ないかと」

 「ア~ちゃん、魔法をお願い」


 司令官らしき方を見逃さないように集中しながら、弓を構えて集中する。暗殺者らしき方はもう見失っている。どうせ魔法の衝撃でどこにいるのかわからなくなるだろうから関係ない。


 「ファニーちゃん。いつでもいいよ」

 「ありがとう」


 戦闘で戦うルイスと、司令官らしき方の間には十分な距離がある。これなら魔法の矢を撃ち込んでも問題ない。指示を出すだけで動かない方に全ての意識を集中した。


 矢に魔法の光が灯る。


 「ファニー様!!」


 ぶつかり合う金属音。構えが解けかける。短剣と剣が散らす火花。矢の狙いがブレる。耳に侵入してくる怒号。構え直し、狙い直す。脇腹に当たる投石。痛みに耐えながら息を整える。頬に浴びる血しぶき。


 「行っけ~」


 ア~ちゃんの掛け声とともに矢を放った。


 「ファニーちゃん、気を、つけ」


 意識を失ったア~ちゃんを手で受け止めて周りを見る。


 「ティーブ!!」

 「申し訳ありません。不覚を取りました」


 ドーーン。


 魔法の矢は、気になるけど後回し。ティーブの肩に短剣が刺さっていて、すごい出血。


 「血を止めないと」

 「いえ、それよりここから離れて下さい。手負いですが危険です」

 「いいから。これを口に入れて、抜くよ」


 布を取り出して口に突っ込む。ティーブの言い分は無視して、短剣に手をかける。諦めたのか力を抜いてくれたのを見計らって一気に抜いた。


 「ぬぅぐっ」

 「大丈夫?血を止めるね。痛み止めは塗る?」

 「ふぅ。戦うのであれば、塗って下さい」


 そこまでして戦わせるわけにはいかないじゃん。魔法の矢がちゃんと当たっているかわからないし、1体は絶対に残っているから戦いは続くけどティーブにはリタイアしてもらわないと。


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