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第54話-黒い魔物-

 「アレは」

 「ファニー、ティーブ、聞いてくれ。これからどうなるとしても、この国で生きていくならゴブリンとの戦いは避けられない。倒せるときに倒した方がいい」

 「そ、そうね。ティーブはどう?」

 「異論はありません」


 鏡の盾と、剣と、弓矢を構えて迎え撃とうとした。


 「ちょっと待て〜」


 3体の黒いゴブリンは、王都にいるすべてのゴブリンを一気にまとめあげている。この後どうなるのかは想像できるし、話している場合じゃない。なのにア~ちゃんはどうしちゃったんだろう。


 「あのね。今は話している場合じゃ」

 「ファニーちゃんは黙ってて。黒の賢者、あんなのがいるのにおかしいじゃん。なんで教えてくれないの!?」


 詰め寄られているルイスは、黒いゴブリンの方が気になるみたいで視線が定まっていない。私も門で戦っていた人達とゴブリンの方が気がかり。だってどんな理由だったとしても、ツイグを助けるために戦ってくれている人達だから。


 「ん〜それは」

 「ちゃんと答えろ」

 「黒いゴブリンを探してここに来た。だけどまさか、3体もいるとは思わなかった。どこに隠れていたのかもわからない」


 戦いの音がさっきまでと変わっている。ゴブリンの罵声が歓声に、人間の歓声が悲鳴へと変化する。ア~ちゃんが言いたいことはわかるけど、ルイスが変なことをしているとも思えないし、それに時間が経つほどに状況が悪くなっちゃう。


 「ア~ちゃん、気付けなくてもしょうがないよ。それより早く行かないと」

 「ぶ〜」


 ツイグの王都は、門の先に大きな広場があって、市街地があって、そして王城がある。できれば大きな広場で戦いたい。だから戦うなら早くしたい。


 死ぬ覚悟もなくて、生きることも諦められていない私が、どうして戦うのかなんてわからなくなっちゃったけど。


 そんな、戦うための理想の場所も、戦うための心の準備も、黒いゴブリンに踏みにじられる。


 ダンッ。


 すぐそこに着地したのは黒いゴブリンの中の1体。人間の甲冑を改造したような鎧を装備していて、持っているのは棍棒。他の2体が門へと跳ぶのを、つい目で追ってしまう。


 「ファニー!」


 目の前にまで迫ってきた棍棒と、鏡の盾を構えて割って入るルイス。反射されるはずの棍棒は反射されず、鍔迫り合いの格好になっている。


 「集中するんだ」

 「う、うん」


 ティーブが黒いゴブリンに剣を振り下ろす。ルイスを突き飛ばすように黒いゴブリンは後ろに飛び退いて、2人の間を剣が切る。


 反動で飛んできたルイスの背中を横に避けながら、私は矢を構える。地面をえぐりながら後ろに跳び、まだ体制が戻りきっていない黒いゴブリンの眉間を狙って矢を放つ。狙い通りに空を裂いた矢は完全に眉間を捉えていた。


 「うそ」


 矢は棍棒に叩き落される。しかも、その場で横向きに宙返りするなんて人間離れした動きを見せつけられた。人間ではないけれど、それでもあんなに軽快なゴブリンは見たことがない。


 「ファニー!もっと下がって」


 突き飛ばされていたルイスが大声をあげながらまた前に出る。私は後ろに下がりながら近くの高台に登った。


 「ねぇねぇ、ドッカーンやる?」

 「ううん。まだ大丈夫」


 ア~ちゃんの魔法は強いんだけど、当たらないと意味がない。それに王都にはまだ大量のゴブリンがいるから、できればそっちに使いたい。


 高台で弓矢を構えて、目の前に集中する。ルイスは鏡の盾で攻撃を反射しようとしているけれど、跳び回っている黒いゴブリンに翻弄されてうまくいかないみたい。ティーブも剣を真っ直ぐに振るっているけれど、なかなか捉えられていない。


 いつでも矢を放てるように引き絞る。棍棒が回りルイスの顔面に叩きつけられる。鏡の盾が構えられ黒いゴブリンはその盾自体を掴んで空中を舞う。剣が振り上げられ棍棒とぶつかり合う。矢を着地点に向かって放つけど、着地直後にまた跳び上がって避けられる。


 棍棒だけが戦いを支配し、盾と剣と矢は虚しく宙を切る。黒いゴブリンが獲物を見るような目で私を見てきた。大きく跳び上がって、こっちに来る。2人が追いかけてくるけど間に合わない。


 「ファニー!逃げろ!!」


 叫ぶルイスと全力で走るティーブ。そして棍棒を大きく振りかぶりながら跳んでくる黒いゴブリン。息を整えながら矢を番えた。危ないのはちゃんとわかっている。だけどこれはチャンスでもあるから。


 黒いゴブリンの心臓を狙って矢を放った。棍棒に防がれる。それは予想通り。


 「ファニーちゃん!!」

 「大丈夫、大丈夫だから」


 黒いゴブリンは、棍棒を振り下ろした勢いで1回転しようとしている。狙い通りに背中が一瞬だけガラ空きになり、矢を速射。


 グガッ。


 ちゃんと確認する時間はないけれど当たったみたい。急いで高台を下りながら、ルイス達の方へ走った。ちゃんと狙えていないし、引き絞ってもいないから大した怪我はさせられていないと思うけど、逃げるには十分。


 「ファニー!伏せろ!!」


 頭から地面に倒れ込む。最後に見えたのは、ティーブが剣を投げるところ。


 空気を切り裂き飛ぶ剣の音。剣が肉を断ち切る音。黒いゴブリンの声はない。叫ぶ間もなく絶命し、死体が地面に倒れた。


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