第49話-今は狩りを楽しもう-
追いかけた先にいたのは、一際大きな獣。トラみたいに見えるけど、それにしては大きすぎる。普通の3倍はありそう。
「ティーブ、あれって狩っても大丈夫なのかな?」
「はい。この国でも狩ってはいけない動物や場所は指定されていますが、それ以外は好きにして問題ありません」
「じゃぁアイツを倒して帰りましょ」
狩りだって勝手にしちゃいけないけど、ティーブはそういうことを全部覚えてくれているから大丈夫そう。手強そうだし、雨の中だとちょっと戦いにくいけど、どうせならあれくらいの方がいい。
「ねぇねぇ」
「どうしたの?」
「またドッカーンってやるの?」
あの魔法は、ちょっと強すぎるかな。それに狩っても問題ないとしても、森を焼き尽くしちゃったら怒られそう。
「あれは、今はいいかな」
「え~?なんで~?」
「ん~っと、あれはね、とっておきだから。ピンチの時に使いたいの」
「ぶ~」
気持ちは嬉しいんだけど、ア~ちゃんの魔法は強すぎるからなぁ。それにあれを使ったら狩りじゃなくて駆逐になっちゃう。
「ごめんね」
「いいもん。じゃましないんだもん」
「良い子良い子」
頭の上で大人しくしてくれている。今度、こういう時に入ってもらうポケットとか考えようかな。胸ポケットはあるんだけど、弓矢を使うときに邪魔になっちゃうから使えない。
「ティーブ、準備は出来てる?」
「いつでも問題ありません」
「じゃぁ、私が始めるね」
ルイスがいたら、きっと一番前で盾になってくれる。出会ってまだそんなに経っていないのに、当たり前になっちゃってた。いつか別れることになるかもって、少し考えればわかることだったのに、考えないようにしちゃってた。
「ファニーちゃん?」
「えっ?あっ、なんでもない」
今さらなにを考えているんだろう。振り切るためにあんな別れ方をしたのに、懐かしがったって意味ない。
久しぶりの弓矢。本当ならちゃんと練習とかしてから狩りを始めるべき。わかってるけど、そんな気分にはなれない。この弓にも慣れたし、それに雨の中で射るのも初めてってわけじゃない。
獲物にはまだ気付かれていない。外すわけがない。狙いを定めた矢は、雨粒の中でしぶきをあげながら吸い込まれるように獲物へと飛ぶ。
グォオオオオ。
一射で仕留められるとは思っていなかったけど、当たりどころが悪かったみたい。すごく俊敏な動きだし、それに私がどこにいるのかももう気付いているみたい。思ったより手強いかもしれない。
隠れても意味がないし、もっと近づかないと仕留められそうにない。ティーブもわかってくれているみたいで、剣を抜き払って前に出ていく。
その後ろを追いかけながら矢を番える。獲物も勢いよく駆けて来る。一度立ち止まり、先を行くティーブの先の獲物を狙い、また矢を射かける。狙いは間違っていないし、避けられるのはわかっていた。だから次の矢をすぐに番え、避けた先に向けて第二射。矢は命中し、獲物の動きが少しだけ遅くなる。
ティーブが突進しながら剣を突き出した。喉元を真っ直ぐに狙った剣は獲物の前足で弾かれる。逆にバランスを崩され地面に倒されたティーブにその牙が襲いかかる。
単調な動きは読みやすい。もう準備していた矢を、片目を狙って放つ。今にも噛みつこうとしていた獲物の片目をえぐり、もう一方の目が私を睨みつけてくる。
そんなことでたじろいだりしない。ティーブが倒れたままのはずがないから。
倒れていたティーブが獲物を蹴り上げる。上半身が宙に浮き、ティーブは後転しながら立ち上がり剣を構える。獲物は再びティーブに襲いかかろうと前足を振り上げたけど、手の平を矢でうちぬいてそれをさせない。
あとはティーブがトドメを刺すだけ。喉元へ突きつけられた剣は、今度こそ獲物を貫いて命を奪う。音を立てて倒れた獲物の死体と、剣を引き抜くティーブ。少しだけ雨が弱くなってきていた。
「大っきいね〜。さっきのもこっから出たのかな〜」
「う、うん、そうだね。そういうこと言わなくていいからね〜」
変なこと想像させないで欲しいな。でも本当に大きい獲物だな。そこそこ強かったし、これならみんなをビックリさせられそう。ゴブリンよりかは強いんだろうけど、やっぱり1体だけ相手にするのはすごくやりやすい。
「ティーブ、これ運べるかな?」
「このままでは難しいかと。雨ですが、ここで解体して運ぶのはどうでしょうか?」
「ん〜あんまりやりたくないけど、しょうがないかな」
せっかくだから食べてみたかったなぁ。ここで解体するなら、雨よけもできなさそうだしやめたほうがいい。毛皮ならあとで乾かせばいいから問題なくて、あとは牙とかも持って帰ろう。
「じゃぁやろう。手伝って」
「かしこまりました」




