第47話-これが私の、旅の終わり-
連日となり申し訳ありません。
挿絵の準備が間に合いませんでした。
マシントラブルの影響でして、しばらく停止します。
準備出来次第、更新させていただきます。
「なぁ、本当に良いのか?」
王城から出て、今は宿への道の途中。我慢できなくなったみたいでルイスが話しかけてくる。いつもならア~ちゃんが騒ぎ出すところなのに、頭の上に乗ったまま何も言わない。
「もういいの」
「でもなぁ」
そのまま速足で歩いていく。ルイスはもっと言いたいことがあるみたいだけど、どうしてもゆっくり話す気にはなれない。そして一言も話さないままに宿の前まで着いてしまって、後ろから話しかけられる。
「なぁって」
「だから、もういいの。どうせ世界樹の下までは一緒に行けないんだから」
「いや、あれはそういうつもりで言ったんじゃなくてだな」
じゃぁどういうつもりだったの?本当に世界樹の下まで来るつもりなのかって、そう言ってた。心配してくれているんだって思ったし、今でもそうだって思いたい。だけど私が世界樹の下に行くのが難しいことに変わりはない。
それに一度も、一緒に世界樹の下へ行こうって言ってくれたことない。
「ファニー、あの条件は理不尽だ。我慢する必要はない」
「我慢?違うって、そんなんじゃない。これが私の役目なの」
「じゃぁ聞くけど、これがファニーのやりたいことなの?」
そんなわけないじゃん。でもルイスは、私がどうしたいのか聞いてくるだけ。ルイスがどうしたのかわかんない。ここまで色々あったけれど、結局ルイスのやりたいことなんて世界樹の下に行きたいってことくらいしか知らない。
「他にどうしようもないじゃん」
「いや、国王も言っていたじゃないか。ツイグ王国の周りには他の国もある。この国の、理不尽な条件をのむ必要はない」
「そんなのわかってるよ。でもダメなの」
言われなくったってわかってるよ。でも頼れる国がここしかないってことをルイスは知らない。
「他の国はダメなの」
「なんで?」
「仲が悪いから。交流もあったけど、どっちかっていうと争ってた。だから迷わずここに来たんじゃん」
今さら関係ないかもしれない。敵はゴブリンだから、同じ人間ってことで助けてくれるかもしれない。それに争ってたって言っても最近は口喧嘩みたいなものだったから絶対にダメじゃないかもしれない。でも確証はないし、それに理由はそれだけじゃない。
「もし、仮に仲が良かったとしても、行こうとしたら時間がかかるでしょ?その間に何人がゴブリンに襲われると思う?それに助けてくれる保証もないし、もっと酷い条件を突きつけられるかもしれない。私が我慢すればいいだけなら、それでいい」
空が陰ってきた。周りが薄暗くなってきて、いつの間にか私はルイスと正面から向かい合っている。こんなはずじゃなかったのに、こんなこと言いたくないのに、でも言わなきゃいけない。
「やっぱり我慢してるんじゃないか」
「じゃぁどうしろっていうの?ツイグには、まだたくさんの人が残っている。その人達に我慢しろって?私だけワガママ言うわけにはいかないの」
私だって本当は、本当は。どうしたかったんだろうな。こんなことなら、もっとゆっくり旅をすれば良かったかな。ううん、そんなのダメだよね。
「ここまで連れて来てくれて、ありがとう」
「えっ、いや」
これ以上一緒にいても苦しいだけ。ルイスに嫌われちゃうかもしれないし、嫌われたくないけど、今すぐ別れないと気持ちを整理できない。
「世界樹の下に、行けるといいね」
「おいおい、ってちょっと」
ティーブに頼んでルイスが宿に入れないようにしてもらう。戸惑うのは当たり前だし、次に会うときは怒られそう。だけどきっと、次はない。
「さよなら」
返事は聞きたくなかった。よく聞こえる耳を塞いで、ルイスを外に締め出して宿に入る。
ちょうど降り始めた雨が、聞きたくない声を遮ることを手伝ってくれた。
◇
部屋に戻って、ベッドに飛び込んで、ルイスの荷物はティーブに持って行ってもらっている。大怪我しないようにっていう前にしたお願いをどうすればいいのかって聞かれたから、守らなくてもいいって言っちゃった。
こんなの、絶対嫌われた。
けどそれでいい。だってもう会うことはないから。いっそ嫌われちゃった方が諦められる。世界樹の下へ行くことも、ルイスと旅をすることも。
「ねぇねぇ。ファニーちゃん」
「んー」
「これからどうするの?」
どうしよう。ツイグのことはもう任せるしかないし、世界樹の下へは行けなくなっちゃった。結婚のことも後で話すからって放っておかれている。やりたいことは見つけられなかったし、やらなければならないことは無くなっちゃった。
「もう、なんにもないんだよねぇ」
「ふ~ん。じゃぁ遊びに行こ」
「う~ん。また明日ね」
外はまだ雨が降っているし、出かける気にもなれない。ティーブも戻ってきたけれど、ルイスの様子を聞く気にすらなれない。だって怒っているに決まっているから。
なんにもない。食欲もない。今日はこのままベッドの上で、また強くなった雨音を聞きながら、静かに目を閉じた。




