第44話-王都へ-
街から離れて、いよいよ隣国リーフ王国の王都へ。
見送りに来てくれたのはヴィンダーさんと代表さん、それにリーダーさん。気を利かせてくれたのかロバート様の姿はないし、結局あれ以来会っていない。
最後の挨拶をして、用意してくれた馬車に乗り込む。この街に来たときはルイスとティーブと3人だけだったけど、今はア~ちゃんも一緒。馬車に揺られて街道を行くだけの楽で静かな旅。
「ねぇねぇ。どこに行くの?」
「この国の王都よ」
「ふ~ん。なんで?」
「王様に、お願いしたいことがあるの」
いよいよだ。それがここまで来た目的。上手くいくのかなって少し不安になる。頭をよぎるのは代表さんが最後に言っていた国王の様子。なにを考えているのか代表さんも掴めなかったみたいだけど、でもあの様子だと噂程度に悪いことを聞いているはず。
言わなかったってことは本当に確信がないんだろうし、変な思い込みをしないようにしてくれているんだろうけど、気になっちゃうことに変わりはない。
「ファニーちゃん?」
「あっ、うん。な~に?」
「ん~?」
ジッと見つめたまま目を離してくれない。もしかして心配してくれているのかな。なにがあるのかわからないのに、あんまり考えてもしょうがないか。
「大丈夫よ。きっと上手くいくから」
「ぶ~」
「えっ?なんで?」
むくれちゃった。怒らせるようなことしちゃったのかな。思い当たることはないんだけど、とりあえず頭を撫でておこう。
「どうしたの?」
「む~。そんな難しいことは黒の賢者がやればいいのに~」
ああ、そういうこと。突然名前を言われたルイスは、少しだけこっちの様子を見てから外の景色を眺めだしてる。その反応は、なに?そりゃ私がやるべきことだし、ルイスは手伝ってくれているだけっていうのはわかってるけど、なんだかモヤモヤする。
「ルイスはそういうの苦手だからね」
「ふ~ん。ダメダメなんだ~」
「いや待て」
あれ、意地の悪いことを言うつもりなんて無かったのに、なんでこんな言い方しちゃったんだろう。いつになくルイスの返事が早いし、そんなに嫌だったのかな。
「ダメダメ賢者~ダメダメ賢者~」
「あ、ちょっと。言い過ぎだって」
「え~」
「ははは。まぁ良いよ」
また外の景色を眺めだしちゃった。わかってくれていると思うんだけど、今のはア~ちゃんが勝手に言っただけ。ルイスに伝えたいのはそんなことじゃない。
「ア~ちゃん。ちょっと待ってて」
「ん~?」
「ルイスと難しい話をしてくるから。ティーブ、ちょっとお願い」
「む~」
ティーブに預かってもらって、ルイスの隣に座る。機嫌を損ねちゃったのかな。すぐ近くなのに窓の外から目を離そうとしない。なにを考えているかわからない横顔が、なんだか可愛い。
「ねぇ。すねちゃった?」
「いや、別にそういうわけじゃ」
「ふ~ん。ねぇルイス、ここまでありがとう」
やっとこっちを向いてくれた。そんなに目を丸くするようなこと言っていないと思うんだけど、ジッと見てたら目を逸らされちゃった。
「まぁ俺にとっても必要なことだから」
「でも、別に私の手伝いをしなくたっていいんでしょ?」
「そりゃそうかもしれないけど」
ルイスがやりたいことは、世界樹の下に行くこと。でもそれは過酷な旅になるから、今は力を蓄えている。ゴブリンに苦しむ人達を助けたいって、私と同じことを考えてくれているけれど、私と違ってルイスは1人でもそれができる。だって鏡の魔法を使える黒の賢者だから。
「じゃぁ、お礼しなきゃ」
「んー。ファニーは、」
「な~に?」
なんだか瞬きが多いような。あとそんな途中で途切らないでよ。なんだかすごく気になるじゃん。
「ファニーは、本当に世界樹の下まで来るつもりなのか?」
「うん。そうだけど、ダメかな?」
どこまでついていけるのかわからない。今のルイスでも過酷ってことは、多分途中までしか行けないんだろうなって思ってる。それでも私は、行けるところまででいいからルイスと世界を旅したい。
まだ見つけられていないやりたいことを見つけるまでの、少しの間かもしれないけれど、それまでは魔物に苦しむ人達を助ける日々を送りたい。
「ダメっていうか、まぁどうしようかなって」
「う、うん」
心配してくれているんだろうな。だけどそんな風に言われると、なんだか胸にポッカリと穴が開いちゃった気分。
「うりぁぁぁぁぁ」
「イテ」
「えっ、ちょっ、ア~ちゃん!?」
ものすごい勢いで飛んできて、それでルイスの額に突撃してる。手を伸ばして捕まえるけど、すごい暴れちゃってて抑えるのが大変。
「ダメダメ賢者。アホジジイ。バ~カバ~カバ~カ。ファニーちゃんはね~」
「あぁぁぁぁ。もうそれはいいから。じゃぁルイス、旅の話は終わってからね」
「そ、そうだな」
もう、言わないって約束したのに。ギリギリでア~ちゃんの口を塞げたけど、本当にわかっているのかな。ポッカリと開いちゃった穴はそのままだけど、でも今やるべきことは変わらない。ゴブリンに滅ぼされちゃった私の国、ツイグ王国を助けてもらえるように、今が一番大事な時だから。
馬車は順調に街道を進んでいく。見えてきたのはリーフ王城。どことなくツイグ王城にも似ている気がして、なんだか懐かしい。これからやることはツイグ王国の未来を左右する。両肩がすごく重いけれど、でもしっかりと前を向いて王都に入った。




